勝手に最遊記

勝手に最遊記

Blind Date ―2―



「ハイハイ。一つだけですよ?」八戒が苦笑しつつ、悟空にイカ焼きを買ってやる。

露店では三仏神のゴールドカードが使えるはずもなく、かといって現金を三蔵にねだれる訳もなく、
手持ちの僅かな小銭を、町のそこかしこでカードゲームや麻雀で遊んでいる男達をカモにして
軍資金を手に入れたのは・・・もちろん八戒である。

「桃花も・・ハイ。好きなのを買って良いんですよ?」八戒がお札を数枚、桃花に握らせる。

なんだか年下にお小遣いをもらうのも気が引けるのだが、八戒の有無を言わせない笑顔に黙って受け取る。

「あはは・・。ありがと、八戒ちゃん。でも強いんだねー八戒ちゃん!負け知らずだよ?」
「そうですねぇ。昔から強いんですよ、お酒と博打は。」
「へぇ~。悟浄君も強いよねぇ・・・って、悟浄君?アレッ??」

キョロキョロと周りを見回すが、悟浄の姿が見えない。

「・・・あぁっ!さっきの女の子達だな!?」思い当たる。

射的の屋台で、悟浄が次々と景品をゲットしていると
いかにも悟浄の好きそうな、色っぽい浴衣姿のお姉さん達が嬌声を上げていた。

「・・・はああぁ。」思わずおでこを押さえる。きっと今夜は帰らないつもりだろう。
そうなれば、宿に帰ったとき“個人行動させやがって!”って怒鳴る三蔵が・・。

「またハリセンでどつかれるぅぅ~!!」ブルブル頭を振る桃花に、

「大丈夫ですよ。桃花の責任じゃないですから。ちゃーんと、本人に責任取ってもらいましょうね。」

八戒の爽やかな笑顔の裏に、ドス黒いオーラを感じた桃花は

                『悟浄君・・・自分の責任だよ。』

思わず頑張れよっと言いたくなってしまうのであった。


「お~。賑やかじゃねーか!」独角兕が感嘆の声を上げる。

二人とも妖力制御装置を付けて、普通の人間のように装っていた。

「あぁ・・そうだな。」
祭りで人の溢れた町を見て、正直、紅孩児も驚きを隠せない。
妖怪によって殺されていく人間が多い中、このような賑わいを目の当たりにすると
すこし安心する。

・・・・妖怪を凶暴化させている事に加担しているのだから。

「しっかし・・コレだけ人が多いと、三蔵達を探すのにも苦労しそうだぜ。
紅、俺から離れんなよ?迷子なんて・・。」

独角兕が沈黙した。      


               「・・・・・もう迷子かよっ。」




一方、楽しみながら露店巡りをしている悟空達。

「・・・!この匂いはっ・・・。」悟空が足を止める。
「どうしたの、悟空ちゃん?」
「ソース焼きそばの匂いだあああぁぁっっっ!!!」悟空が人混みの中、猛然と走り出す。

八戒が慌てて、「悟空!待ちなさい・・・桃花、はぐれないで下さいねっ。」
「う、うんっ。」


慌てて悟空の後を追いかける八戒と桃花。しかし、人混みの中を追いかけるのは容易ではない。
桃花の手を引こうと
八戒が後ろを振り返ったとき、ドンッ!・・・子供にぶつかってしまった。

「あぁ・・・ボク、大丈夫ですか?」
倒れた子供を気遣って、八戒がしゃがみ込んでいるのに気付かない桃花は八戒を追い越していく。


「えぇ・・・と、悟空ちゃん?八戒ちゃん・・・ドコ?」
とにかく人に揉まれながら走ってきたものの、悟空も八戒も見当たらない。


           「?・・??あたし・・・迷子だぁ・・・。」


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: