勝手に最遊記

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Blind Date ―7―


紅孩児から離れて、屋台で焼き饅頭を買っていた桃花の目に女の子に囲まれた紅孩児の姿が見えた。
離れて3分程しか経っていないのだが。

『~モテモテじゃ~ん♪』
スラッとした体格、端整な顔立ち、赤褐色の長い髪、浅黒い肌・・・。立ち居振る舞いに何処かしら
“育ちの良さ”を思わせる品がある。

『これじゃー女の子は放って置かないよねっ。』呑気に眺めていた桃花に、紅孩児が気付いた。

「・・・おいっ!行くぞ!!」その場から桃花の腕を取り、足早に歩き出す紅孩児。
後ろから女の子達のブーイングが聞こえる。

「・・・イイの?あの子達と・・。」「~~~~困ってたんだっ!何なんだアレは!!」
顔を紅潮させて、汗を掻いている紅孩児に桃花が吹き出した。

「あ、アレって・・・モテてただけでしょう?」その言葉にポカーンとする紅孩児。
「ヘッ?気付いてない訳?・・・・紅君って、カッコイイと思うよ?「・・・・・・・・っ。」ますます赤面。

「もったいな~い!ウチの連れなら、スグに女の子をホテルに・・」「そんな連れが居るのかっ!?
・・・何という男だ・・・。」
「あっはっはっはっはっ・・・大丈夫!割り切れる女の人にしか手を出さないから。意外と気を使う
優しい男(ヒト)なんだよ?」「そうなのか・・・?」イマイチ納得が出来ない。

「アレ・・・?何の騒ぎ??」桃花達の行く手に、人が大勢集まってきている。

「おーい!喧嘩だぞ~!」「喧嘩だ!喧嘩!!」「もっとやれ~!!」男達の無責任なヤジが飛んでいる。

「へーっ!喧嘩だって~。見て行こう・・ん?」前に進もうとした桃花の肩を、紅孩児が抱き留める。
「駄目だ。騒ぎに巻き込まれたら、どうするんだ?」
真剣な顔に素直に頷く。『・・・心配性なんだな~。』そう思いながら。

踵を返す紅孩児と桃花。喧嘩の真っ只中に、八戒と悟浄が居るのも知らず・・・。


「紅君ってさ、心配性だって言われない?」
「・・・妹に良く言われる・・・。」
「妹が居るんだっ?・・・いいなぁ~。」
「お前、兄弟は?」
「姉が居たんだけどね、このご時世だから・・・。」

察しが付く。妖怪が脅威を振るうこの桃源郷で、平穏無事に暮らしていけるような人間は居ないだろう。

「・・・・すまない。」「えっ?いいよー!珍しい話じゃないし・・・。」

そうじゃない・・・俺が謝罪したいのはそんな事じゃ・・・・。

パッと桃花が紅孩児の顔を見上げた。

「ホラッ!!み・け・んっ!男前が台無しだよ?」
「!・・・あぁ。」
「今だけは、難しいこと考えずに楽しもう!」桃花は紅孩児の手を引っ張りながら言った。

『・・・・今だけは・・・か。』桃花に促され、紅孩児もゆっくりと歩き出す。少しだけでも
楽しみたいと思いつつ・・・・・。


『紅のヤツ・・・いい表情(かお)してんじゃねぇか。』紅孩児と桃花の後をつけていたのは、独角兕だった。

『城に居るときは、辛気くせぇ面してたもんなぁ・・・。』

最愛の母“羅刹女”を盾に、牛魔王の妾・玉面公主に(女狸)にイイように使われ・・・。
誇り高い紅孩児にとっては屈辱の日々だろう。

紅孩児をとっくに見付けていたのだが、いつのまにか人間の女と居て、しかも屋台を廻りながら楽しそうなので、
あえて後を尾けているのである。

『他人(ヒト)のデートを覗き見すんのは趣味じゃねぇが、一応俺はアイツの守り役だしな。』
そう思いながらも、久々に見る紅孩児の笑顔に独角兕も喜びを隠せない。
『三蔵一行に同行している女も探さなきゃならんが・・・。少しぐらい、楽しんだって罰は当たらないってな。紅。』

独角兕は温かく微笑んだ。

「!・・・キレ~イ・・。」桃花は露店に足を止めた。

並べられているのはアクセサリーの数々。
「どう?お姉さん。ウチのは純銀だよっ!しかも安いし。」店の男が気軽に話し掛けてくる。
「うー・・ん・・・あっ。」桃花の目に、一つのバングルが目に止まった。座り込んで手に取ってみる。
「いいなぁ・・。」造りはいたってシンプルなのだが、いくつかターコイズをはめ込んである。

「お目が高いね~!そいつはなかなかの一品だよっ。安くしておくからさ!」
・・・困った。確かに値段は安いのだが、八戒にもらったお金はもう僅か。

「おにーさん、ゴメン・・・・「もらおう。」
紅孩児が座り込みながら言った。・・・背後を三蔵と悟空が通ったのも知らず。

「へっ?」マヌケ面な桃花。
万札を出し、「・・・釣りはいらん。」そう言いながらバングルを手にする。
「!!・・・こりゃ、どうもっ!!」

歩き出す紅孩児を桃花が追いかける・・・・どんどん三蔵達との距離が開くのもし知らず。


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