勝手に最遊記

勝手に最遊記

Blind Date ―11―


すでに独角兕も剣を構えている。お互い、戦闘態勢だ。

慌てて桃花が間に立つ。
「ちょっ・・ダメだよっ!紅君と独角兕さんはいい人だよ!あたしを助けてくれたんだからっ。」

「“いい人”・・?」フンッと三蔵が鼻で笑い、「ソイツが俺らに雑魚妖怪を送り込んでくる張本人だ。
それでもか?」
「・・・紅君が・・・。」桃花が紅孩児を見つめる。

「そう言うことだ。・・・・今度逢うときは、“敵”だ。」苦々しげな顔をして、立ち去ろうとする
紅孩児の腕を桃花が掴んだ。

「あたし、敵だなんて思わないよ!!」「!?」紅孩児が唖然とした顔をする。

「何、言ってンだよ桃花!」悟空が憤る。
「はぁ~ウチのオネーサンは何を・・・。」頭痛い、と言う風に項垂れる悟浄。

「・・・・・桃花。」紅孩児が呟くように言った。
「あたしは、紅君を敵だなんて思わないよ。“友達”だって思ってるから、ね。」

自分の迷いを、躊躇いを断ち切ってくれた人間の女・・・。正体を知っても、それでも“友”と言う女・・・。

紅孩児はフゥッと息を吐き、
「・・・桃花から目を離すな。」三蔵達に向かって言った。

「ソレはどういう意味だ?」未だ銃口を紅孩児に向けたまま、三蔵が険しい目つきで言った。

その言葉には応えず、自分の腕を掴んでいる桃花の手を取り、「・・・お前に尊敬と感謝の意を込めて・・・。」

そっと、桃花の手の甲に口づけをした。「・・・ぅあっ!?」慣れない行為に、思わず変な声を出す桃花。

「あああぁぁ~!!」悟空が指を指し、「紅孩児ぃぃ~!」如意棒を振りかざしながら突っ込んでくる。

突如、紅い風が吹き荒れ、三蔵達の視界を奪う。紅い風は、桃花の体の周りをゆっくりと廻り、
消えていく・・・。

「・・・あっ!」
花火が咲く夜空に、飛龍に乗った紅孩児と独角兕の姿が浮かび上がっていた――――――


飛龍が、風を切って飛んでいく。

「・・紅!いいのか?あの桃花っていう女を拉致しなくて・・。ありゃどう見ても、三蔵一行の“娼婦”
とかじゃ無さそうだぜ?」隣を飛んでいる紅孩児に向かって、大声で独角兕が叫ぶ。

「・・・そんな事判ってる!!」
桃花の仲間への信頼感、桃花と自分が一緒に居たときの三蔵達の反応・・。
どれを取ってみても、三蔵達の大事な人間“人質に値する”人間であることは間違いないだろう。だが、

「あの女を巻き込みたくないんだっ・・!」  自分達との戦い。

巻き込まれていくのは・・・時間の問題だ。桃花の目的が、妖怪と人間の平和な共存である限り・・・・。

―――――判っていても。出来る限り・・・・・遅らせたい。

「わぁ~ってるよ!」独角兕がニッと破願する。「一応、君主の考えを確認してみただけだ。」
「・・独角・・。」ホッと笑顔を返す紅孩児。
「八百鼡には黙っててやるからさ♪」「なっ!?なぜ八百鼡の名前が出てくる?それに何を黙って・・。」
「まーな~。いいじゃねぇかよ。」「っっっ何がいいんだ、何がっ!?」

・・・・・・・・紅孩児と独角兕の不毛な言い争いは、吠登城に着くまで繰り返された。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: