勝手に最遊記

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Making ―10―



「この子が大蛇の洞穴まで案内するわ。」
見た目には15,6歳の少女がチョコンと頭を下げた。

「じゃー頑張ってきてね♪」ヒラヒラと手を振る桃花。
「アレ?桃花は一緒に来ねぇの?」悟空が不思議そうな顔をする。
「うんっ!あたし人質やってるからっ。」ニコニコと言う桃花に、
「桃花チャ~ン♪・・・蛇が嫌いなわけ?」悟浄が突っ込む。
「う゛っ・・・。」
実のところ、桃花は蛇が大嫌いである。
虫も嫌いなのだが、あのニョロニョロと長くて、牙まであって、ヌルヌルしてそうな触感?
が大の苦手なのである。

「す、好きな女の子の方が、少ないんじゃないかな?
でも、苦手だから行かないんじゃないよ?ジープちゃんの為、みんなの為・・。」

「へェ~・・?」悟浄がニヤニヤしながら詰め寄る。と、
「さっさと済ませるぞ。来い、エロ河童。」

三蔵が後ろも振り向かず歩き出す。
慌てて案内役の少女が後を追う。
「んじゃ、行ってくる!」悟空が手を振り、
「続きは帰ってからなっ。」悟浄も後を追う。

「・・・続きってなんの・・?」
悟浄君だけは、あんまり無事で帰ってきて欲しくないな~・・と、思ってしまう
桃花なのであった。


「アンタ達って見てて飽きないわね。」
可笑しそうに鈴麗が言った。

「あはは・・。あの、鈴麗サン。八戒ちゃんはドコに居るの?」
「サン付けは止めてくれる?呼び捨ててで良いわよ。で、
八戒って春李と一緒に過ごした男ね。・・・この右の階段を上がった
所の部屋だけど――・・邪魔する気?」

「そんなつもりは・・無いけど。心配だから。」

鈴麗は軽く微笑んで、
「どうぞ自由にして?この屋敷の中ならどこ行ったってイイわよ。」
鈴麗の言葉に
「ありがとう、鈴麗!」
パアッと破顔して、階段を昇っていく桃花を見送って鈴麗は苦笑した。



桃花は八戒が泊まっている部屋の前に立っていた。

扉に手をかけては離し、手をかけては離し・・・その繰り返しである。

『開けて八戒ちゃんが女の人とナンカしてたら・・・?
てゆーか、裸で寝てたら??・・・でも気になるしっ!うわぁ~っ!!』

声をかけることも出来ず、頭を抱えて悶えてしまう。

「・・・・はーっ・・。」大きく息を付き、廊下に座り込んだ。

心配だけど、この部屋に立ち入ることは出来ない。
それは八戒ちゃんの心に土足で上がり込むのと同じ気がするから。
―――・・・だから、此処で待っていよう。

壁を背もたれにして、桃花は八戒が出てくるのを待つことに決めた。

―――――三蔵達は、大蛇が住処にしている洞穴へと案内されていた――――――


「アレが大蛇が住処にしている洞穴です・・。」
案内役の少女が怯えた声で、三蔵達に告げた。

山肌にポッカリと口を開けた洞穴・・・・。
その奥は朝だというのに薄暗く、中を見通すことは出来ない。

「じゃ、オジョーチャンは家へ帰ってな。危険だからさ♪」
悟浄が少女に帰るように促す。

「はい。・・気を付けて。」
そそくさと帰っていく少女を見送って、

「んで?どーすんのよ三蔵サマ。」
まずは一服と、悟浄がハイライトを取り出す。

「・・・さあな。」
三蔵もマルボロを懐から取り出した。

「なんも考えてないのかよ、三蔵!?」
呑気に煙草を吸い出した二人に、悟空が拍子抜けする。

「ま、中に入っていく訳にもいかないし?藪から追い出すか、三蔵。」
未だ長い煙草を投げ捨て、足で火をもみ消す。

「・・・そんなトコだろうな。」
三蔵も煙草を投げ捨て―――――――――――銃を洞穴に向けて――――――――


ガウンガウンガウンガウンガウンガウン――――・・・・・連射した。




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