勝手に最遊記

Making　―16―

大蛇が大口を開いて、今にも少女を飲み込もうとした―――・・・その時、

「でやああぁぁっ！！」
桃花が細めの丸太を持って、大蛇と少女の間に飛び込み、
ガゴンッ・・大蛇の口が閉じないよう、つっかえ棒のように丸太を押し込んだ。

「早くっ！早く今のうちに逃げてっ！！」
恐怖で震えている少女を助け起こす。

怒り狂った大蛇が、丸太をかみ砕こうと暴れ出した。

「ほらっ！早く、住処に逃げ込んで！！」
少女を何とか押しやり、大蛇の方を向き直った瞬間、

バンッッ！！大蛇の振り回した尾に体を吹っ飛ばされた。

「うあっ・・・。」したたかに体を地面に叩きつけられ、
一瞬、意識が飛びそうになる。

バキイッバキッ・・大蛇が丸太をかみ砕き、鎌首を桃花の方へ向けた。

「くっ・・・！」脳震とうを起こしているのか、頭がグラグラする。

「キシャアアアッ！！」
大蛇が桃花に襲いかかる――直前、ザシュッッ・・・大蛇の動きが止まる。

「あっ・・。」
桃花の目の前に、鈴麗が立っていた。
鎌のように伸ばした爪には、血が付いている。

「キシイイッキシイイッッ！！」
大蛇がのたうち回っている。鈴麗の爪は、大蛇の右目を切り裂いたのだ。

「・・・アンタにばっか、イイ格好、させらんないわよ。」
ニヤッと笑いながら言った。

「それじゃ、一緒に頑張ろうかっ。」
桃花も笑いながら立ち上がる。

大蛇も体勢を立て直し、再び蜷局を巻き始めていた。

「鈴麗。あたしが囮になるから。・・・なんとか大蛇の腹を狙って。」
「腹？って・・。」
「鱗（ウロコ）が硬いのよ。だから体の内側・・・そこなら切り裂けると思う。」

そう言い捨てて、桃花は大蛇の斜め後ろに向けて走り出す。

大蛇が鎌首を桃花へ向けて、伸ばす。

『なるほど・・鱗の付いてない体の内側が・・・見えたっ！』

後を追うように、鈴麗も飛び出す。

桃花の体に、大蛇の牙が届こうとした瞬間、鈴麗が大蛇の腹に爪を突き立てる。

「キシイイッ！」
大蛇が体を持ち上げ、鈴麗に巻き付ける。

「あああっ！！」鈴麗の顔が苦痛に歪む。

「鈴麗っ！！」桃花が鈴麗に駆け寄ろうとした時、

ザシュッザシュッッ・・・！大蛇が血を流して倒れる。

「あなた達・・。」解放された鈴麗が、苦しげに息を吐きながら見る。

「姐御っ！」「姉御達だけを、危険な目に遭わせられません！！」
少女達が―――・・いや、他の山猫族の女達が立っていた。

「みんなぁ！コイツをやっつけちまうよ！！」
ワアアッと山猫族の女達が、大蛇に襲いかかった。
爪で切り裂く者、噛みつく者、年端のいかぬ者は石を投げている。

いかに大蛇といえども、多勢に無勢――・・・どんどん弱っていくのが
目に見えて判った。

大蛇に怯えて・・・息を殺して生活していた・・・。
仲間を殺されても、どうする事もできないと、自分達を卑下していた日々・・・。

「・・・ありがとう、桃花。」

「なーにっ？気色悪いわよ、そんなお礼。
それより、まだ大蛇は生きてるんだし。トドメを刺そう！！」

「アンタ、結構恐い性格してんのね？」
クスクス笑いながら鈴麗が言った。

「・・・生活環境が悪いのかも。まーいいじゃん！ホラ・・。」
鈴麗と桃花は大蛇に駆け寄っていった。

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