勝手に最遊記

勝手に最遊記

Making ―18―



「あ~っ、昨夜は良く飲みましたねぇ。」
爽やかな八戒とは対照的に、
「・・・最悪。」
「・・・・・・・・・・。」
顔色のすぐれない悟浄と三蔵。

悟浄は女達を口説きまくったのだが、山猫族の女達は契りを同族の男達と出来ると
言う事で、悟浄を歯牙にもかけ無かった。
その結果、酒をドンドン飲む羽目になり――――・・・二日酔いである。

八戒と三蔵も悟浄に巻き込まれ・・・つき合わされた結果、
八戒のみが、爽やかな笑顔で朝を迎えた事になった。

「このクソ河童の所為で・・・。」
痛む頭を抑えつつ、三蔵が悟浄を睨む。
「だーって酒を飲むしか、ヤる事無かっただろ?
あんなに肉体労働したってのに、美味しいトコは桃花が独り占めだもんなぁ。」

「そーか~?桃花も大分、参ってたみたいだぞ?」
こちらも元気一杯の悟空。
昨日、今日と山猫族の女達が青くなるぐらい食べまくって幸せそのものである。

「そういえば桃花は未だ・・・。」八戒が見回すと、

「お~は~よ~・・・・。」
生気のない声が聞こえた。

「・・・大丈夫ですか?」
桃花は目の回りにクマを作っている。顔色も冴えない。

「はは・・。一晩中、眠れなくって・・・。」
フラフラと足下もおぼつかない。

夜中まで、山猫族の女の子達にまとわり付かれ、やっと眠れるかと思ったら
鈴麗の部屋に引っ張り込まれ、妙な危機感を抱きながら・・・眠れなかったのだ。

「で?昨夜みたいな格好はしてくれないワケ?」
ニヤニヤと悟浄が笑いながらからかう。

「あー・・・思い出させないでよぅ。」
もう2度と着るもんかと、首を振る。

「そうなのか?桃花、似合ってたぞ。」
アッサリと言う悟空に、苦笑いし
「そう?アリガト、悟空ちゃん。」頭を撫でてやる。

「でも、ああいう格好はしない方が良いと思いますよ?特に悟浄の前では。」
「・・・同感だな。」
「なっ?・・・ヒデー事、言うのね、お前ら。」
「あったり前じゃん!刺客以前の問題だって。」
「猿にだけは言われたくねぇっての!!」
「朝っぱらからケンかすんなーっ・・・疲れてるんだからぁ。」

「朝から賑やかね、アンタ達。」
鈴麗が他の山猫族の女達と住処から出てくる。

「・・・世話になったわ。」鈴麗が手を差し出し、
「お互い頑張ろうね。」桃花が手を握る。
「この男達に飽きたら・・・。」
「はい?」
「いつでも来て。アンタなら大歓迎よ。」
鈴麗がペロリと桃花の頬を舐めた。

「っ!!・・・・遠慮しときマスッ・・・。」
悟浄に冷やかされながら、三蔵達と出発した桃花を、山猫族が見送る。

『・・・・無事で・・・また逢いましょう・・・・。』

桃花らの行く手の困難を思うと、鈴麗は祈らずにいられなかった―――――・・・







「ねっ、眠れんっ・・・。」
桃花はゴソゴソとベッドから這い出した。

山猫族の住処から約2時間ほど山道を歩き、ジープに乗った途端、爆睡。
近くの町に着いても夕食まで眠り続け・・・寝過ぎて眠れないという有様である。

「今・・・12時過ぎか。」暗い部屋の中で、月明かりを頼りに時間を確認する。
コロンとベッドに仰向けになり、天井を見つめた。
眠れないのには他にも訳があって・・・。

「八戒ちゃん・・。」

心に引っ掛かって気になるのだ。

山猫族と別れを告げている時、あの“花喃に似ている”人を見付けた。

八戒を伺うと、その人を見つめていて・・・。
いつも穏やかな翡翠の瞳が、深く、哀しく、切ないぐらいに揺れていた。

桃花の視線に気付いた八戒は、どうかしましたか?と言いながら
笑顔を見せてくれたが、それは―――・・・・。

「・・止めた。」ガバッと起き上がった。
悩んでもしょうがない。八戒ちゃんの心は、八戒ちゃんにしか判らない。
あたしが踏み込んでいい領域ではないのだから――――。

飲みモンでも買ってこよ・・・そう思いながら、扉を開けると
「桃花。」
「・・・っ。はっ・・かいチャン。」

「起きたんですか?」
「へっ?いや、眠れなくて、飲み物でも買おうかと・・・。」
なんだか妙な汗を掻いてしまう。

「アレだけ眠れば仕方ないですね。良かったら僕の部屋に来ます?
美味しいお茶を煎れて上げますよ。」

クスクスと笑顔を見せる八戒はいつも通りだけれど。

「あー・・うん。いいの?こんな時間に。」
「構いませんよ。――どうぞ。」

今日の宿は、運良く全員が一人部屋に泊まれていた。
宿屋の一階の桃花の部屋は、左に八戒、右が三蔵である。
特に何も言われてはいないが、眠っていても妖怪の気配に敏感な二人が横の部屋に
寝ているのは自分の為であると、桃花も気付いていた。

「ジープは起こさないようにしなきゃね。」そっと八戒の部屋にお邪魔する。
ジープは造りつけの箪笥の上で体を丸めて眠っていた。
散らかりもせず、いつでも出発できるように
荷物が整理されているのは八戒らしい。

「大丈夫ですよ。ジープも殺気がない限り、滅多に起きません。
適当にくつろいで下さいね。」コポコポと湯気が部屋を舞う。

ベッドに腰掛けて、
「みんなは?未だ起きてるの??」

「ええ。悟空以外は起きてると思いますよ。僕らにしたら宵の口ですから。」
ハイどうぞ、と、八戒が桃花に湯飲みを渡しながら向かい合わせの椅子に座る。

「宵の口?・・・世間一般では真夜中なんですケド。
いかんな~不健康な生活でっ。」
「あはは。不健康な生活で、健全な肉体を支えてるんですよ。」
ズズ~ッとお茶を啜る。
お互いに軽口を叩いているのに、なぜか雰囲気が重い。
八戒は向かい合わせにも関わらず、桃花と眼を合わせようとしない。

「も・・遅いから。ゴメンね、お邪魔しちゃって。」
サイドボードに湯飲みを置いて、出て行こうと腰を浮かしたが、


「花喃に、似てたんです。」     唐突に、八戒が言った。


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