勝手に最遊記

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Making ―20―


「それでも、あたし達は生きている。もし、もしも・・あたしが死んで、あたしの愛した人が生き残ったら・・。」

―――――桃花は何を言いたいのだろう、と。八戒がやっと黒曜石の瞳を視線を合わせた。

「自分の分まで、生きていて欲しいって。幸せに・・・なって欲しいって思うよ。」「・・・・桃花。」
何故、貴女はそんな悲しい目をするのかと。微笑みながら―――――悲しい目をするのかと。思わず八戒が口にしかけた時、

「・・・なんっつってv」ニカッと破願した桃花に面食らった。

「友達だもん。友達には、幸せになって欲しいって思うよ?幸せな人生を・・・諦めないで欲しい。あたしの、我が侭だけど。」そう言って、
「・・八戒ちゃん・・手、キレイだねぇ。指も細くってさ!いかにも器用そうな・・。あたしなんか見て!この太短い指っ・・」

不器用な手――――・・最後まで、言えなかった。  突然、八戒に抱きしめられたから・・・・・。


勢い込んで、ベッドへと倒れ込む。 「・・・・はっ・・・。」息が、止まるような錯覚。
急激に頭へと血が逆流するのを覚えた―――――八戒ちゃんっ・・そう、呼ぼうとして、
「・・・か・・なん・・。」小さく、八戒が呟くのが聞こえた。

『・・そっ・・か。』桃花が軽く微笑んだ。『八戒ちゃんは・・・。』そっと八戒の背中へと腕を回す。

―――――――――花南さんを、抱きしめているんだね・・・・・・

翡翠の瞳が、見開いた。

自分の頭が、撫でられている。   「・・・桃花。スミマセンでした・・。」そっと立ち上がり、桃花を抱き起こす。


「・・いいよ、気にしてないから。」なんったって年上の女だし!そう、茶化しながらも顔は真っ赤で。
「僕は頭を冷やしてきます。桃花も戻って下さいね。」「ん。お休み~。」桃花が部屋へ戻るのを確認し、八戒が宿の裏庭に出た。


―――――――――涼しい夜風が吹き抜けていく。はあっと息を吐き、首を振った・・「らしく、ねーんじゃねぇの?」

聞き慣れた軽口が聞こえてきた。


「・・・悟浄。」

横を見ると、木の幹にもたれて煙草を吸っている悟浄が居た。

「よっ。」軽い口調で、片手を上げる。

悟浄と並んで、木の幹にもたれ、
「覗き見ですか?・・・いい趣味ですね。」

「あのなー。俺を何だと思ってるワケ?
お前の部屋、裏庭(ここ)から丸見えだぜ?
見られたくないんだったら、カーテンの一つでも締めておけっての。」

「あ・・。」
確かにこの裏庭から自分の泊まっている部屋がよく見えた。
明かりが付いているから、中が手に取るように判る。

そんなことまで気が回らなかったのかと、思わず自嘲の笑みが出た。

「すみません・・。」
「別にぃ?いーんだけどよ。」
面白くもないと言う顔で、煙草をふかす。

「・・・・・似てないんです。」
「はぁ?」
突然言い出した親友の顔を、悟浄はマジマジと見た。

「花喃は華奢で、折れそうで、優しくて、儚げで、おしとやかで、
突拍子も無い事を言ったり、やったり、心配をかけるような人じゃありませんでした。」

「・・・それで?」ポリポリと頭を掻く。

「なのに、同じ事を言うんです。」

『私、悟能の手 好きだな。』

『指も長くて すごくキレイ。』


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