勝手に最遊記

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Making ―21―



花喃と、桃花が。


「まー・・・。アイツも判ってると思うし?
だから頭突きも噛みつきもしなかったんだろ。」

「・・・悟浄。そんな仕打ちを受けてるんですか?」

「・・・色々とな。」肩を竦めてみせる。

「ソレは自業自得というモノだと思いますよ。」

「へーへー。」ワザとふてくされる悟浄に笑い、

「僕はもう、寝ます。お休みなさい。」
裏口へ向かう八戒の背中に、悟浄が声をかけた。

「なー。お前にとって、桃花ってどんな存在なワケ?」
最初から聞きたかった事を、やっと聞いてくる悟浄に苦笑しつつ、

「悟浄にとってはどんな存在です?」聞き返した。

「・・あん?そりゃ・・からかいがいのある、友達(ダチ)ってトコかな。」
八戒が笑って頷き、
「―――僕にとっては、“やんちゃな妹”みたいなものです。」
そう言って、部屋へと戻って行った。


「・・・妹ねぇ。」
悟浄は新しい煙草を取り出した。

実際は桃花の方が、俺らより年上なんだけど・・・そうは見えないし。
かと思うと、大人びた・・・いや、別人に見える時がある。
まぁ、妹って事は、恋愛対象にならないワケで・・・ん?

ポロリと煙草を落とす。
アイツの恋人って、姉だったよな。と言うことは、妹も恋愛対象になるって事か?
ああ?どうなんだ?・・・・判んねーよっ!?

悟浄が一人で、裏庭で悶えているのをそっと窓から覗き、

「・・・悟浄には一晩中、悩んでもらいましょう♪」
確信犯の笑みで、八戒が呟いた。







―――爽やかな朝が訪れた

「あっれ~?悟浄君、どうしたの??」
すっかり出発の準備が出来た桃花は、やっと顔を見せた悟浄を見て驚く。

「は・・はは。ちーっと眠れなくってよ。朝飯も食えなかった。」
ゲンナリした顔で、悟浄はフラフラと歩く。

「大丈夫だ、悟浄!お前の分の朝飯、俺が食っといてやったから!」
ガッツポーズをしながら悟空が報告する。

「あぁ?なんでテメーに俺の朝飯が食われなきゃならねーんだよっ!」
「お前が起きないから悪いんだろっ?勿体ないじゃねーかっ。」
「猿に食われる方が勿体ねーよっ!」
「んだと?朝飯だってゴキブリ河童に食われたくねぇよ!!」
「言ったなコラ!泣かすゾ、ああ?」
「はんっ!ヤってみろよ?お前・・・「うるさああ~いっ!!」

いつものケンカを始めた二人を、桃花が怒鳴る。

「あーもー!!朝からケンカすんなって何度言えば・・【スパアーンっ!!】

「・・・てめぇも煩い。」
ハリセンを握り締めて、三蔵が素っ気なく言った。

「~三蔵っ・・。」恨めしい顔の桃花が、

「なんで、あたしが叩かれるわけっ!?大体、悟空ちゃんの躾はアンタが
担当なんでしょーにっ!!」三蔵に喚いた。
「フンッ。ペットの躾なんて俺が一々やってられるか。」
「ヒデー三蔵!!なんだよ、ペットって!桃花も俺を子供扱いしすぎっ!!」
「小猿ちゃんは、子供扱いされて丁度いいんでないの?」
「うるせえっ!赤エロゴキブリ河童!!」
「ああ~!またケンカになるでしょっ!止めなさいって言ってるだろーがあぁ!」
「だから、てめぇら静かにしろっ!!!」

「・・・・あのぅ・・・チェックアウトしたんで・・・出発を・・。」

「ソレはないんじゃないっ!?んな事言ってるから、ハゲてくんのよっ!」
「・・・ぶっ殺すっ。」
「ホントのこと言われて怒ってやンの、三蔵サマってば。」
「エロ河童。貴様からだっ。」
ガウンガウンッ・・「キャアーッ(悟浄)」

ぎゃあぎゃあと騒いでいる三蔵達に、八戒は脱力した。

そして、苦笑。


花喃


ねぇ花喃

僕は君を愛している

コレからも変わらない

君を愛している

でも

           『幸せな人生を、諦めないで。』 

僕は


僕は


もう、とっくに“幸せな人生”を    歩いているのかも知れないね。


「ハーイッ、園児の皆さーん!出発ですよ~。」          


八戒が、朗らかな笑顔で言った。





                       第七話      完


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