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勝手に最遊記Ⅱ
Separation―3
天界に戻った菩薩。 ヤレヤレと首を振った。
「・・・菩薩様。」背後から、苦虫を噛み潰したような顔の次郎神が詰め寄る。
「ご自分が何をしたか・・・判っているのですか?」
「あ~桜が綺麗だよなぁ~・・「誤魔化さないで下さいっ!!」大体、いつも桜は咲いているでしょうが!
噛み付かんばかりの次郎神に、「ん?何の事だよ?」惚けた顔で応対する菩薩。その顔を睨み付け、ハーッと盛大なため息を付きつつ
「・・・只の人間に“神気”を吹き込む何て・・・。」コレが天帝にバレたら・・頭を抱える。
「ふん。構わないぜ?俺は。」しれっとした顔の菩薩。
「なっ!!?な・・何て事を言うのですかっ!天界の血を引かぬ人間に、“神気”を吹き込んだ事がバレたら、
例え観世音菩薩様と言えども、お咎めは免れませぬぞ!?
そもそも“神気”自体、普通の人間に発動させられる訳が有りませぬか!それを・・。」
まだまだ続きそうな次郎神の小言に嫌そうな顔をしつつ、
「わーった。わーった。てめぇが言わなきゃ、バレ無いだろう?それに・・。」「それに?」
一呼吸おいた菩薩は、真剣な面もちで
「・・・“神気”が発動しねぇ何て判らねぇだろ?大体、あの女に其れぐらいの事してやったって罰はあたらないんじゃねぇのかよ?」
「菩薩様・・・・。」ハッとした次郎神。沈痛な表情(かお)で、押し黙った。
「“神気” あの女なら・・・・どうかな。正に“神のみぞ知る”って事だよな。」
そう言った菩薩の眼は。 深い、慈愛に満ちていた。
――――――――――――――――――――「・・・ベタですねぇ。」八戒が苦笑した。
昼過ぎに辿り着いた村。寂れた雰囲気。人影のない通り。
・・・そして、「・・コレって、祭壇なワケ?」村の中央に祭壇が造られていた。
祭壇の周りには、この村では用意するのが困難であろうと思われる程の食料が、並べられている。
果物・・・酒。それに、
「・・・女の子?」桃花の顔色が変わった。
祭壇に縛り付けられている少女。淡い色の着物を身に纏い、意識を無くしている。
「薬ですか・・・。」近寄り、少女の様子を伺っていた八戒が眉を顰めた。
「ね、八戒ちゃん。この状況ってもしかして・・・。」顔に、微かな怒気を含ませている桃花。
「ええ。いわゆる人身御供・・でしょうね。」穏やかに言う八戒の口調も固い。
「何だよソレッ!この女の子、死んじゃうのかよっ!?」悟空がいきり立つ。
「酷ぇな。この子・・・どう見たって15・6歳ぐらいじゃねーかよ。なぁ?三蔵サマ。」
「・・・・・・チッ。」三蔵が面倒くさそうに金糸の髪を掻き上げた。「判ってんのか?」
三蔵が言いたい事―――――“罠がある”そう忠告を受けたばかりで、この状況。
「そ、それはそうだけど・・・。」桃花にも、三蔵が言いたい事は良く判る。「でも罠とは・・。」
そう答える声も小さい。自分が一番、戦闘力が無いのを自覚しているから。
そんな二人のやり取りを余所に、
「可愛い顔してるじゃん。・・よっと。」「大丈夫か?ソイツ。」悟浄と悟空が(ちゃっかりと)
少女を助けていた。「貴様らっ。勝手な事を・・・。」三蔵が睨み付けた時、
「そうですとも。よそ者に勝手な事をして頂いては困ります。」物陰から老人が進み出て来た。
着ている着物は粗末で、苦渋の表情を浮かべている。
体も痩せこけていて、貧しい生活を忍ばせていた。
「よそ者で悪かったな、爺さん。で?こんな幼気(いたいけ)な少女を人身御供に差し出すなんざ、
どんなワケがあるっての?」
少女を抱えたまま笑顔を浮かべる悟浄だが、その紅玉の眼は、微かな怒りの色を浮かべている。
「あなた達には・・・「無関係でもイイだろっ!黙って人殺しを見過ごすなんて、出来ねーんだから!!」
ガウルルルッと今にも噛み付きそうな悟空の勢い。思わず怯んだ老人へ、
「・・・大人しくしているウチに、喋った方が身の為ですよ。でないと暴れ出したら、貴方もろとも
この村を破壊し尽くしますからねぇ・・・。」こっそりと八戒が耳打ちした。
サッと顔色を変えた老人に、
「そ・れ・にvあの、お坊様は・・・ああ見えても“三蔵法師”ですよ?
素直に相談なさった方が宜しいと思いますけどね。」
「さっ三蔵法師様っ!!?」今度はアゴが外れるのではないかと思うぐらい、驚愕の表情を浮かべ、
ズサッと三蔵の足下に平伏した。
「こっこれは失礼致しました!まさか三蔵法師様とはつゆ知らず・・・!お願いでございます!
どうか、この村を救って下さい!!」
頭を土に擦り付けんばかりに土下座する老人。三蔵はチラッと一瞥して「・・・面倒くせぇ。」
ため息と共に紫煙を吐き出した。
「まぁまぁ、三蔵。とにかく話だけでも聞きましょう。寒いですし、何処か暖かい場所で・・ね。」
後半の方は、老人に語りかけた八戒。その言葉に、「はい!どうぞ我が家へ・・!!」
ピョンッと勢い良く起き上がり、いそいそと道を案内し始めた。
「さっ、行きましょうかv」にこやかに皆を促した八戒に、全員が嫌な汗をかいていた。
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