勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Separation―5



不意に いくつもの影が現れた。





「今回は・・・この女か?」「みたいだな。・・ってオイ。年喰ってないか?この女。」
手にそれぞれ武器を持ちながら、桃花の品定めを始めた妖怪の男達。

「どうするよ?10代の美少女って村の奴らには言ってあるんだろ?」「もう一度脅しを入れるか。」
「入れてもイイが・・・もう居ないんじゃないのか?」「ああ、そうかもな。」「でも、こんな年増じゃ・・。」

口々に、言いたい事を言い放題の妖怪達。遠目にも、桃花の額に青筋が浮かんで来ているのが判る。

「ちょっとぐらい、年増でもしょうがないんじゃねーか?」「ああ、婆さん出されるより・・な。」



「・・オイ、八戒。ヤバイんじゃねーの?」物陰に隠れている悟浄が、笑いを堪えつつ八戒に話しかけた。
「もう少し・・様子を伺いたかったんですが・・ね。」八戒も苦笑しつつ、「もう、キレそうですよ。」



・・・その八戒の言葉通り――――「・・っ・・いい加減にしなさいよぉ!?アンタ達っ!!」
ガバアッと桃花が跳ね起き、「美少女でなくて悪かったわね!この変態共っ!!」怒鳴り散らした。

薬で意識の無い女が飛び起き、あまつさえ自分達に罵声を浴びせる事に・・・妖怪達は唖然としている。
「あ゛~~~~っ!!胸くそ悪りぃっ!ロリコン妖怪っ!!」ますますヒートアップしていく桃花。


「・・っの!アマッ!!」ハッと我に返った妖怪の一人が、手に持った長刀を振りかざした―――――
「キューッ!」バササッと桃花の背後から飛び出したジープが、妖怪の眼前に翼を広げ、視界を防ぐ。

「わっ!?何だっ!!?」不意を付かれた妖怪が蹌踉めく。その機を捕らえ、【ガァンッ】
「ナーイッス!ジープッ!!」桃花が妖怪の左側頭部に拳を(メリケンサック付き)叩きつけた。



「・・・マジで嫁に行く気が無いんだな、桃花。」悟空が真剣な顔で呟き、三蔵が無言で額に手を当てた。

「こ、この女っ!!」「何者だてめぇっ!!」仲間の一人が倒された事によって、他の妖怪達がいきり立った。
「ふんっ!か弱い女性によってたかって非道いわね!?アンタ達、それでも男なワケっ!?」



・・・・・・・ドコが“か弱い”のか。敵方の妖怪達と、隠れている三蔵達が(同じ事を)思ったのは別として。



グルッと桃花を取り囲んだ妖怪達。
「・・・生け贄じゃないのなら、容赦は要らないな。」「ああ。この女を喰い殺して、村の奴らも皆殺しだ。」

「そんな事、させないわよ?」微動だにしない桃花。「お前一人に何が出来るって言うんだ?」
妖怪が嘲笑った。が、
「・・・誰が。あたし一人だって言ったのよ。」不敵な笑みを浮かべ、「やっておしまい!下僕達っ!!」

【ガウンガウンガウンガウンガウンガウンッ】・・・背後からの攻撃に、次々と消滅していく妖怪達。

「なっ・・何・・!?」確認する隙も無く、【キイィィンッ】固い金属音と共に、妖怪の体が寸断される。
「ロリコンてーのは、救いようが無ぇよなぁ。」ニヤリと。錫杖を構えた悟浄がウィンクした。
パニックを起こし、その場から我先にと逃げ出す妖怪達を「一人たりとも逃がしませんよ?」
穏やかな声音でゾッとする台詞を吐きつつ、【ドオォンッ】気孔で妖怪達を消し飛ばす。

「くっ・・!なら女を・・・!」勝ち目がないと悟った妖怪が、桃花に狙いを絞り襲いかかって来る。
「・・・止めとけばイイのに。」小声で桃花が「後ろが見えてないのよね~。」呑気に呟いた。
自分に襲いかかって来る妖怪の背後から・・・・・「うおりゃああっ!!」【ドゴオンッ】
思いっ切り――――――悟空が。ジャンプしながら如意棒を叩き付けた。


「桃花っ。大丈夫か?」やや息を弾ませながら、駆け寄ってくる悟空に「ダイジョブダイジョブv」
笑いながら手を振り、「ホラ、早くしないと全部カタが着いちゃうよ?」指を指して見せた。

「ぁあっ!?ヤベーッ!」暴れ足りないとばかりに、悟空が駈けだして行く。
既に妖怪達は殆どが死体と化し、残った少ない妖怪達も散り散りに逃げ出していた。


所詮は“烏合の衆”――――――――訓練されている訳でもなく、刺客のように強い妖怪でも無い。
たった20人足らずの妖怪達では、三蔵らの相手になどならないのだ。



スタスタスタスタスタ・・・・己の当たり分は消化したのか、三蔵が無言で桃花に近付いて来た。

「三蔵?お疲れさー・・【スッパアアァンッ】軽快なハリセンの音が響き渡った。
「っ・・!!?何す・・「誰が下僕だっ!!バカ女っ!!」幾つもの怒りマークを額に浮かべ、怒鳴り散らす。

その三蔵にヘラヘラと笑いながら、「だって~。一度言ってみたかったんだモンv」やっておしまい!ってv
「ね、ね。カッコ良くなかった??ね?」キラキラと目を輝かせて聞いて来る桃花に、「ケッ。阿呆が。」
吐き捨てるように毒づいて、マルボロを取り出した・・・が。

「桃花!動くんじゃねぇっ。」取り出したマルボロを投げ捨て、背中を向けた。
「・・三蔵?」只ならぬ三蔵の様子に、その場に立ちつくした。



――――――――――・・・・・何だ?この気配は。





自分達の周りに。妖怪とも、人間とも判断の付かない“気配”を感じる。

眼には見えない、その気配。その気配が高速で周囲を移動していて・・・『場所が掴めねぇ。』

妖怪達を全て片づけた悟空達が、「おーいっ!三蔵、どうしたんだ??」バタバタと近付いて来た。

「煩せぇっ!静かにしやがれっ・・・。」三蔵の気が削がれた刹那――――『・・気配がっ!?』



ハッと振り返った先には、胸を掻きむしって倒れる桃花の姿が眼に映った。





















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