勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Separation―6



「おいっ!!桃花っ・・・!!」助け起こそうと、三蔵が屈み込んだ――――「・・っ!!?」


三蔵が、弾かれたように桃花の側から離れた。



「三蔵っ?」只ならぬ雰囲気に、悟空達が桃花に近付こうとするのを「・・近寄るんじゃねぇ。」牽制した。
「どー言う事よ?」「桃花の具合が・・?」「三蔵っ!何で・・・。」

三蔵が口を開く前に、「・・・ふふっ。なかなか楽しいモノを持ってるじゃない。」
座り込んだままだった桃花が―――――三蔵の小銃を握っている。銀色の銃身に唇を押し当てて。

「三蔵・・・?」八戒の問いかけに、「俺からすり取りやがったんだ。」苦い顔で答えた。
「ハ・・・。ジョーダンっショ?」三蔵からすり取るなんて。桃花にそんな事が出来るはずがない。



「三蔵・・・桃花が・・・。」悟空が僅かに後ずさった。




ゆるゆると立ち上がった桃花が、自分達との距離を詰めて来る。 
右手に握った小銃を弄びつつ、とても、楽しそうに。

「何て顔してるの?貴方達の望み通りの女になったって言うのに。」髪を掻き上げながら笑う桃花。
すいっと距離を詰め、悟浄の胸に身を寄せた。

「ね・・・色気って、女の体から滲み出るものよね。」クスクスと笑うその顔は別人で。
悟浄が唖然としている隙に、「・・・“女らしく”何て言われなくっても十分、女らしいし。」
身を翻して八戒の頬に左手を滑らせつつ、「貴方と言い争いなんてしないわよ?三蔵様。」三蔵の胸に躯を寄せた。




「お前っ・・・何なんだよっ!桃花じゃ無いだろっ!!」指を指して怒鳴った悟空に、
「嫌な子ね。・・・大人しくしていれば、貴方にもイイ思いをさせてあげるのに。」妖しく笑って見せた。


そんな桃花をチラリと見下ろした三蔵が、
「ふん。上目遣いなんて、気味悪ぃだけなんだよ。」小馬鹿にしたように嗤った。
そして自分の胸から桃花を引き剥がし、「・・さっさとソイツの中から出やがれ。」剣呑な眼で睨み付けた。


桃花がスザッと三蔵達との距離を取った。
「はんっ・・・何を言うのかと思えば!」そしてスウッと右手を挙げ、「この女はもう、存在してないのよ。」



―――――銃口を。 三蔵に向けて、銃口を合わせた。





「何・・だとぉ?」シュウゥッ―――・・・悟浄が錫杖を具現化させた。「ふざけた事言ってっと泣かしちゃうゼ?」
「あーら。女の涙は苦手なんでしょ?悟浄。」斜に構えた桃花の挑戦的な目つき。

「この・・・!?」思わず踏み出しそうになる悟浄を押さえ、「成る程・・記憶を奪ったって訳ですか?」
「記憶?いーえ、この女全てよ。自覚なさいな八戒。」その言葉に・・八戒の顔から笑みが消えた。



――――――吹き抜けていく、風。 重い沈黙が・・・三蔵達を包み込んだ。




「・・・嘘だっ!!」大声で悟空が叫んだ。空気を切り裂くように。



握った拳に爪が食い込んでいる。「嘘だ嘘だっ!!あの桃花が・・簡単に消える訳、無ぇっ!!」


「往生際の悪い・・「全くだな。」

三蔵が悠々とマルボロを取り出して、「あんな図太ぇ女が簡単に引き下がるか。」火を付けた。

「私がこの女を乗っ取ったって・・「じゃあ何だ?その脂汗は。」紫煙を吐き出しながら
「中で暴れてやがるんじゃ無ぇのか?簡単に乗っ取れねぇんだろうが。」ズバリ、指摘した。




「クッ・・・!」桃花の顔が口惜しさに歪んだ。



三蔵の指摘通り―――――『・・ったく、この女っ・・!!』桃花を乗っ取った女は焦っていた。




通常なら・・・薬で眠っているはずの少女ならば、造作も無い。
意識の無い間なら、簡単に深層意識の奥の奥まで入り込んで、文字通り“身も心も”簡単に乗っ取れる。

ところが今回は 『誤算だったわ・・!』薬で眠らされてはいなかった。意識が有る人間を乗っ取るのは
少々、手こずる事になる・・・それは予想していた。が、『強情な女めっ!!』容易く心を明け渡さないのだ。


三蔵達に話しかけ、時間を稼いでいる間にも、精神世界で女と桃花の必死の攻防が続いているのだ。



『それに・・何?この女の記憶っ・・・。』全ての記憶が手に入らない。最近の記憶はともかく、過去が・・。



過去が 見えない。 






まるで、過去の記憶の前に大きな壁が立ち塞がっているようだ。
記憶を全て手に入れられれば、そこから揺さぶりを掛けて精神を追いつめる事も出来るのに。




「なーる。そーゆーコト、ね。」悟浄がいつもの調子を取り戻し、「色気がある桃花って・・やっぱ気色ぃ。」
「ですねぇ。“女らしい”と言うより、別の意味でお嫁に行けなさそうですし。」八戒もアハハと苦笑した。
「お前なんかっ・・桃花に勝てるもんかっ!さっさと出て行けっ!!」悟空が腕をブンブン振り回しながら威嚇する。



・・・・・―――ガチャリ。 小銃の安全装置が外された。



「・・・私は出て行かないわよ?アンタ達を殺して、この女の体がボロボロに腐るまで使わせて貰うわ。
抵抗するならしなさい。この女の体ごと、私を殺せばいいわ。」



にっこりと。






笑いながら、引き金に指をかけた。 





© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: