勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Decision―8


涎を垂らさんばかりの顔で、男達が三人。少女に絡んでいる。

「私はっ・・・あっ!助けて!!助けて下さい!!」八戒に気付いた少女が助けを求める。
男達の注意が向けられた途端、少女が腕を振り解き八戒へと駆け寄った。「お願い、助けて!」八戒の背中に隠れる少女。

「・・なぁんだぁ?テメェ!?」「ケガしたくなかったら、引っ込んでな!!」大柄な男が二人、八戒に詰め寄る。
「あははは・・嫌がる女性に無理強いは良くないですよ?」至極、人当たりの良い笑顔で男達を眺め、
「それに・・・ケガをするのは、其方の方だと思いますけど?」(更に)ニッコリと。

「テッ・・テメェ!バカにしてんのか!!」―――――案の定。 激高して殴りかかって来た男達は―――「仕方有りませんねv」
・・・・・次々に(笑顔で)殴り倒され、5分後には「おっ、覚えてろよ!!」お決まりの捨て台詞を吐いて、逃げ出すハメになった。


情けない男達の後ろ姿を見送って、「もう大丈夫ですよ、お嬢さん。」八戒が声を掛けると、「・・・っ、あ、ありがとうございます!」
固まっていた少女が、慌てて礼を述べた。

「私、麗芳(レイフォア)と言います。あの、貴方は・・・。」「僕は八戒と言います。麗芳さん、もう帰られた方が良いのでは?」
暗くなってきましたから・・・そう八戒が公園内を見回す。すっかり陽も落ち、夜の闇が包み込んでいる。

「また絡まれると・・・・はい?」自分のシャツの裾を、麗芳が握り締めている。「帰る家なんて・・・無いんです。」
その言葉に、八戒が目を丸くした。

聞けば――――――麗芳は17歳。 優しい両親の元、温かい家庭で幸せに生まれ育ったのだと言う。

「・・・でも、偽りの家族でした。」  

つい、先日。 自分の17回目の誕生日。 友達も呼んで、楽しい誕生日会を催して・・・・その深夜。
喉が渇いて起きた自分の耳に・・・・両親の話し声が聞こえて来た。

「・・・麗芳も17歳・・・大きくなったわねぇ・・・・。」
「ああ。子供が産めないと知った時、お前がどうしても子供が欲しいって・・・。」
―――――――子供が産めない?お母さんが?

「養子が欲しいって言ったら、あなた反対して。」
「だってそうだろ?見ず知らずの子供を育てるなんて、簡単な事じゃないし。」
―――――――養子?何言ってるの?

「・・でも、麗芳を貰って良かったでしょ?あの子が居て幸せよ、私。」
「そうだな・・・。良い子に育ったよ、麗芳は。」


―――――――私・・・・・・『養子』だったんだ・・・・・・・。

「・・その夜、家を出ました。・・・本当の母を捜しに。」深く、麗芳が息を吐いた。

「でも、桃源郷はこんな状況で・・・すぐ、あんな人達に絡まれちゃうし・・・。八戒さんも旅の途中なんですよね?
あの、少しの間だけで良いんです。便乗させて貰えませんか?」お願いします、と。上目遣いに自分を見上げる麗芳。


麗芳を見れば・・・・その容姿は華奢な美少女で。長い亜麻色の髪は、サラサラと音を立てそうな程、艶やかで。
栗色の大きな瞳は潤み、切なそうに自分を見上げている――――クラリと。普通の男ならば、有無を言わずに守りたいと願うだろう。


『この少女でも、良いかも知れませんね・・・。』 庇護したいと、思わせる少女。


―――――桃花でなくても  


花南の代わりに、 守って 助けて・・・・幸せにしたいと。思わせてくれるならば。


「八戒さんが居れば、安心ですよねv私、とてもじゃないけど戦ったり、争ったりって出来ないし・・・。」
自分のシャツに絡まっている、白く細い指を―――【パシッ・・八戒が強引に払いのけた。

「・・・・ぇ。」ポカン・・・と呆けた顔で。今、起こった出来事が信じられないと言う顔で、麗芳が八戒を見た。

「すみませんけど、貴女を旅に同行させる事は出来ません。」本当にスミマセンと、軽く頭を下げて去ろうとした八戒へ、
「どうしてですか?私がイヤなんですか!?」麗芳が八戒の腕を取り、縋り付いた。

「あの、食事の支度とか、繕い物とか!そう言うの得意なんですよ!?そりゃ甘えん坊とか、天然とかって
言われるような性格だけど、迷惑なんて掛けませんから・・・「迷惑なんです。」キッパリと言い切った八戒。

驚きの余りに、口をパクパクさせて居る麗芳へ、「・・幸せに暮らしてたんでしょう?血が繋がっていないからって、何処が悪いんです?」
麗芳の腕を外しながら、珍しく、八戒が真顔で
「そんな“甘ちゃん”連れて旅なんて出来ませんよ。悪い事は言いませんから、両親の元に帰りなさい。心配してますよ?」

言い捨てて―――――立ち去り際に、
「ちなみに、僕らのジープに乗れるヒトは、年増で、足が太くて、ケツが大きくて、くそ度胸があって、鼻ペチャでないとダメなんです。」

ニッコリ、と。  史上最強の微笑みで・・・・・・・・・・・サヨナラと、手を振った。

「・・なっ・・なんなのよ、あの人・・・・。」唖然としていた麗芳が。 「家に帰ろう・・・・。」くっすん、と。家路についた。


―――――本当に、バカですね・・僕。


胸ポケットから、しおりを取り出した。 誕生日に「花南さんへ、あたしから。」桃花に貰った、コスモスの花をしおりにしたのだ。


ねぇ、花南・・・・・可笑しいかな。

血の繋がった、実の姉―――――貴女に・・・女性としての愛を

血の繋がらない、他人―――――桃花に・・・家族としての愛を


僕は

僕は、


今頃気が付いたんです             『誰でも良い訳じゃない』

桃花だからこそ、               『大事に 大切に したかった』


僕の、妹であり(有る意味、弟ですけど)姉である、桃花を。

「・・・・・僕の知らない所で、死なれてたまるかっ・・・てカンジですよねv」

そう、ブラックに微笑んだのであった。










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