勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Pain―4



「・・んで、アンタが・・・・」そう言ったきり、言葉が続かない。
「へぇ。ショックだった?・・・・あの子達もショック受けるかなぁ。」面白そうに桃花の顔を覗き込んで、煙草を取り出した。


「・・・・あの子・・達って・・・」ぞわぞわと沸き上がってくる悪い予感。握り締めた手のひらに汗が滲みだしている。

「あの子達ってもちろん、紅流・・・玄奘三蔵君たちだよ。だって・・「三蔵達とは別れたっ!!」

グッと踏ん張り、立ち上がった。気を抜けば膝がガクガクして、座り込みたい自分に活を入れる。

「別れたんだから!前の村でっ・・・・あたしとは同行してない!!三蔵達は三蔵達で天竺目指してるからっ・・関係ない!!」

歯を食いしばり、気丈に睨み付ける桃花。


そんな桃花へぷかーっと紫煙を吹き付けながら、

「キミ、さぁ。付き合いも長いんだろ?だったら判るよねぇ・・・あの子達が、キミを見捨てて行くと思う?」


「結局、切り捨てられない、甘ちゃん達だから。・・・・・・・まぁ、僕の思うツボなんだよね。」


「色々、苦労したよ?なんせ村ひとつ造ったり、あんな下らない女の魂に細工したり・・・」


「最大級の苦労はコレだね。ほら、この妖怪の首!キミの知り合いだろ?過去を調べてたら色々判ってね・・・。
関わり合いのある者をって探させたら見付けたんだよ。まぁ半狂乱状態だったんだけど、キミを誘き寄せるオモチャにはなるから。」


――――――――――上機嫌に喋り続けるニィ健一の言葉に、桃花の顔から血の気が失せていく。


「コレで・・・第一段階終了、ってとこ。面倒くさいけど魔天経文を手に入れる為の準備だからしょうがないか。」



―――――――――魔天経文を手に入れる為の・・・・・・・・・・・・罠?






その為に 三蔵達から引き離す為に





大桷の首を手に入れ、村を造り、女の霊魂を利用し、あたしを・・・・・・誘き寄せた・・・・?





三蔵達に、過去を知られたくなかったら






三蔵達の負担にはなりたくなかったから






だから・・・・だから、離れた・・・・のにっ・・・・・・!




「・・・っと・・・・」もう一本、煙草を探して白衣に手を突っ込んだニィを横目に、桃花が素早く立ち上がり扉へと駆け出した。



「・・・・悪あがき、だねv」


僅かな距離が、遠くに感じる


『・・ココからっ・・逃げなきゃ・・!』


もう少し・・・・・桃花の眼前で、教会の扉が―――――――――【ドガァンッ―――砕け散り、桃花もろとも吹き飛ばした。


「っ・・ぅあっっ!」扉の破片ごと床に叩き付けられ、全身を痛みが襲う。

カタカラカタ・・・・破片の転がる音と共に、誰かが入り口だった場所に立っていた。

「紅・・・君?」まきあがった埃が収まるにつれ、紅孩児の姿が現れた。


床に倒れたまま、自分を見上げる桃花に何の反応もせず、
「連れて行くのはこの女か?」「そ。多少、手荒にしちゃってもイイよ。趣味みたいだから。」

ニィと平然と会話を交わす紅孩児の姿に、桃花の思考は付いて行けなくなっていた。

「なんで・・?紅君?!」今日、どれ程口にしたか判らない疑問符が、口をついて出る。


「女、起きろ。立ち上がれ。」冷たく言い放つ紅孩児の眼に、感情の光は感じられない。

「紅君・・どうしたの?あたしだよ?桃花だよ・・・?」顔を上げ、見つめる桃花の顎に紅孩児のブーツが食い込む。


「立ち上がれと言ってるんだ・・・・。」グググッと、紅孩児の足で上半身を持ち上げられ、蹌踉めきながら桃花が立ち上がった。


「紅君っ・・・」―――――――――違う こんなのっ・・・紅君じゃないっ・・・!!


優しくて、気高くて    仲間に慕われている・・・・紅君じゃ・・・・・


【バァッ―――――――――咄嗟に、脇にあった扉の破片を投げつけて、紅孩児の視界を塞いで逃げようと脇をすり抜けたが・・・   


「・・ゃああっ!!」長い黒髪を鷲掴みにされ、教会の中へと引き倒された。


「人間のクセに、随分と舐めた真似をしてくれる・・・・。」パラッと前髪に付いた埃を払い、倒れ込んでる桃花の首に手を掛けた。


「っ・・・ぐぅっ・・・・!」片手で首元を掴み、体を持ち上げる。自分の体重だけで圧迫される苦しさに、もはや息を吸い込む事も出来ない。


『紅君っ・・・・・!』ぼやけていく視界に、バングルが紅く光るのが映る――――――まさか・・・

『桃花を殺そうとする輩に、効力を発揮するみたいですね。』


『コレが、お前を守護するだろう』




そう言って・・・バングルをくれたのは・・・・・紅君、なのにっ・・・?!


ゴオオオオンッ ―――――――――――火炎が、紅孩児に襲いかかる・・・・・・「ふん、笑止な。」


桃花の体を放り出し、両手からさらに上回る火炎を造り出した――――――「はあぁっ!!」

炎が炎を飲み込み・・・・・巨大な火炎の渦巻きが、紅孩児の体の回りを包み込んだ。

「かああっっ!!」紅孩児の気合いと共に、火炎が霧散し―――――パキイィインッ・・バングルの石・ターコイズが砕け散った。


「やる気マンマンだね、王子様。」ニィが薄ら笑いを浮かべながら、「手荒にしても良いって言ったけど、まだ殺さないでくれよ?」


無言でニィに頷く紅孩児――――――――――・・・・・・『・・・・・これは・・本当に・・・現実・・・?』

・・・・・お願い・・・だから、来ないで・・・・・・・来ない・・・で・・・・





三蔵・・・・・・・・・






薄れていく意識に、只一つの願いを託した――――――――――――――







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