勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Pain―5



砂塵を巻き上げ、荒野をジープが疾走する―――――――――――・・・・・



『・・・そろそろジープも限界ですね・・・。』




早朝に町を出てから既に数時間――――――――食事も摂らず、休息もせず、アクセル全開で走り続けている。



いつもなら、空腹を抱えた悟空が喚きだし、


それを悟浄がからかい、喧嘩騒ぎを起こし、

安眠妨害された三蔵が銃を乱射する―――――――――――・・・・・・事になるのだが。


誰一人として、口を開くこともせず・・・・ただ、ただ、前を見つめているだけなのだ。




ジープの体力を考えれば、そろそろ小休止を入れなければ辛いだろう・・・が、この状況下で“休憩にしましょう”とは言い辛い。


自分だって一分一秒が惜しいのだ。ココは無理してでもジープに頑張ってもらわなければ・・・そう、八戒が汗ばんだ手でハンドルを握り直した時―――――――「っっ?!」


キキキキキッイイッ ――――大きく弧を描いて、停止したジープ。




「・・・おい八戒。貴様、何度、急ブレーキを踏めば気が済むんだ・・「―――――三蔵。」


勢い余って、フロントガラスに頭を打ちそうになった三蔵が、横目で八戒を睨んだのだが、


「・・・・・変、ですよ。三蔵。」ハンドルを握り締めたまま、八戒の視線は釘付けになっていた。

「あ?」剣呑な眼で、八戒の視線を追った三蔵。
「ココってあの村じゃねーか。」後部座席で悟浄が立ち上がる。
「変って・・・・そーいや、この村・・・・」悟空がジープから飛び降りた。

ビョオオオオッッ ・・・・・・・・・一際大きい風が、村の中を吹き荒れる――――――


「人っ子一人・・・・・誰の気配も感じねぇ・・・・・。」  紫暗が、忌々しげに歪んだ・・・・












「どーいうこと何だよっ!!」悟空が腹立たしげに喚いた。


村の中を駆けずり回ったが、誰一人として―――――――――桂林と言う名の老人や、生け贄にされかかっていた少女。
恐る恐る、自分達を見ていた村の住人の誰も・・・・誰も、居なかったのだ。


「嫌ぁ~なカンジがするんだけどよ・・・。」ペッとハイライトを口から吐き出し、悟浄が苦々しげに呟いた。


「三蔵・・・これは・・・・」八戒が言い淀む


――――――――――この状況下では、最悪の事態しか考えられない




まさか        まさか、この村自体が・・・・・・・罠、だったなんて・・・・

・・・・・・・・立ちつくす八戒達に、無情な風が吹き付けていく・・・・・・・・


「・・・教会に行くぞ。」感情を押し殺した低い声で、三蔵が踵を返す。


「だな。とにかくココに居てもしゃーねーし?八戒、行くぞ。」ポンポンと肩を叩き、八戒を促す悟浄。

「ぜーったい桃花は大丈夫だから!行こーぜ、八戒っ!!」悟空も一際大きな声を出す。




押し包まれる不安に、絡め取られないように・・・・・・・・




















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