勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Pain―6






遠目にも人の気配が感じられない教会は、陰鬱な印象しか与えない。

「・・・・・扉が?」八戒が訝しげに眼を細めた。


外部から、何らかの力で吹き飛んだと思われる扉の破片が、教会内に散らばっているのだ。


注意深く気配を探り、中を伺う。

「誰も居ないみたいですね・・・。」そっと踏み入り、足下を確認した――――「・・・これは・・っ」

全員の足が、止まった。


――――――――――破片と共に、床に散らばった欠片・・・・「桃花の・・・バングルじゃねぇか・・・」

悟浄がしゃがみ込んでターコイズの欠片を手に取る。・・・僅かに指先がふるえてしまうのが、自分でも歯痒い。

「・・・桃花っ・・」


紅孩児が、桃花を護る為に贈ったバングル―――――――これさえあれば、最悪、桃花の命を奪われる事は無いと思っていた・・のに・・


「・・チッ。切り札もアウトかよ。」コイツは分が悪いぜ、と。悟浄が苦々しげに煙草を噛んだ。

「・・・・・・・・。」我知らずうちに、深い溜め息を三蔵が吐いた。




紅孩児が妖力を吹き込んだ石が割れた?・・・・あれだけ強力な妖力を持つ石を?あの石を破壊するには相当な力が要ったはずだ。


少なくとも紅孩児と同等か、もしくは紅孩児より強い妖怪か、それとも―――――“紅孩児本人”か・・・・?



それは無いだろうと、首を振った。しかし、紅孩児より強力な妖怪が居るのか?・・まさか、と言う思いが頭を駆け巡る。

「アレッ―――――アレッ、何なんだよっ?!」驚愕した声が、教会中に響き渡った。


悟空の指さす方向・・・・・教会の祭壇にまつられた、カプセルに入った 首―――――


「・・・・何処かで見たような光景ですね。」翡翠の瞳が、細められた。




――――――ゴォオンゴォオンゴォオン・・・・微かな機械音と共に、発光する液体・・・コポコポと気泡を立ち上らせながら、
首に繋がれた幾つものコードが揺れている・・・




「・・・なぁ。この首、誰なんだろ?」悟空が重たい口を開いた。




まだ幼さを残す顔立ち――――――悟空と似通った年頃だろうか?頬に文様状の痣、尖った耳・・妖怪の首であることは明らかだ。




「誰ってそりゃ・・・」悟浄が開いた口を閉じた。



この首が―――――――・・この妖怪が、桃花に何らかの関係が在るとしか・・判らない。






――――――っ?!」




突然、妖怪の眼が、見開いた。







「・・・・・・やぁ、三蔵君達。やっと来たね。」







至極、面白そうに――――――――――――首が、語りかけてきた。
























© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: