~Beginning of wind~

~Beginning of wind~

小説

登場人物紹介
(この小説に登場する人意外も)


石井真美  15歳
階級:高級陸将 総合司令官


八巻伸行  15歳
階級:上級准将 総合司令副官


日向玲   14歳
階級:高級一佐 日向連隊連隊長


坂下紗希  14歳
階級:上級将軍 衛生科司令幕僚長 


富田祐太郎 15歳
階級:下級陸将 総合通信科司令


佐古下柳  16歳
階級:名誉元帥 総合司令官統幕議長


佐藤翼   15歳
階級:准将 機甲科司令


姫宮鈴香  21歳
階級:最高級名誉大元帥 閣下


西野早苗  14歳
階級:二佐 日向連隊副官


杉卓哉   15歳
階級:中級空将 航空司令


etc…



私には家もあるお金もある・・。
ひと際高い階級も・・・。
だけど階級が高くてもお金があっても成し得ない事が一つだけあった。
それは自分にして遠く・・果てしなく遠いものだった。

遠いもの        ~無愛想~

「紗希?明日は非番だけど何か用事はあるのか?!」
旅団本部の廊下を歩いているところで佐古下が坂下に問う。
幼児のような顔をしている紗希はにっこりと笑いながら答えた。
「明日はね・・祐太郎君と遊園地に行くんだ♪」
そう答えた。
佐古下は少々表情を曇らせそれに答える。
「・・・そう・・・。」
どこかさびしげな表情でもあった。
そう紗希には大事な大事なそう・・『彼氏』がいた。
しかし、柳にはいない。
無愛想・怒りっぽい・性格が男勝り・料理が下手などの点から、
柳を好き好んでくれる人などいない。
それなりの努力はしているが、言葉使いもイマイチ・・・。
女性のほうでも紗希と高級官以外は相手にしたくない人らしい。
どうも彼女には不器用なものが多すぎたようだ。
「柳ちゃんは彼氏ほしくないの?」
急に坂下が問い掛けてきた。
「えッ・・・あっあたしは・・欲しくないよ!!」
強がりを言ってしまった。
本当は欲しいに決まっている。
本当の事を言いたいが、柳には言える筈もなかった。
絶対に付き合ってくれる人はいないと自分で思い込んでしまっているからだ。
しかし・・・
一番ダメなのは自分に自信がないことかもしれない。


その日の夜だった。
紗希を寝かせた柳は一人夜の旅団本部の廊下を歩いていた。
廊下には日向連隊の者が警備についているほかは通信科ぐらい・・あとは数組のカップル・・。
しばらく歩くと話し声が聞こえてきた。
日向連隊の隊員が数名で固まって話をしている。
「――――石井陸将って本当に綺麗だし、御しとやかよね~。」
「そうそう話し方と言い何と言い・・・。」
「私達の連隊長の日向一佐も張ってるけどね~。」
「ホント。どこぞの名ばかりの名誉元帥とは大違いだわ!」
「アハハハハハ・・。」
聞かないほうがよかったかもしれない。
日向連隊の隊員にここまで思われているとは、まったく思っていなかった。
「・・・本当に名だけの階級よね・・私って・・・。」
柳は悲しかった。
こんなに思われているなら、上官としてJSSに存在する意味がないのではないか?と思った。
そう思いつつその場を去った。
その後柳は旅団本部の大きな出入り口へと向かった。
少しずつ近づいて行くと門前にたっている人影一人を確認した・・。
「今晩はデス。佐古下名誉元帥殿・・・。」
日向連隊連隊長『日向 玲』だった。
ヘルメットを被っていても気品と言うか可愛らしさが、見ただけでも伝わる。
本当に玲は可愛かった。
「あ・・玲・・。そう言えば隊員の数名が玲と真美の可愛さは張ってるって言ってたぞ!!」
柳は先ほどの話を玲に伝えた。
玲は恥ずかしそうな顔をする。
「石井陸将と私がデスカ?そんな・・・私なんて石井陸将と比べたら外道ですよ~♪」
玲は手を頬に当てて赤くなりながら言った。
「・・・外道かぁ・・。」
その言葉が一番自分に合っていると柳は心の中で思った。
浮かない顔をする柳を玲が心配した。
「名誉元帥殿以下がなさいました?」
柳は咄嗟に返す。
「何でも無いッ・・・。引き続き・・・警備がんばって・・・。」
「?・・・了解いたしました!!」
そう言い玲は敬礼をした。
少し・・ホンノ少しだが、玲にはいつもの佐古下と違うような気がしていた。
最後の言葉使いも少々違っていた・・・。
玲がそう考えているうちに、柳は外に出ていた。
外に出るととても静寂で星空がとても綺麗だった。
街灯に明かりが燈っていて周りがホンワリと見える。
その後柳は人目につかないようにヘリの離着陸場まで歩いた。
柳はその場につくと、草むらの上に座り込んだ。
静寂な師団本部が目に映る。

遠く聞こえる隊員たちの笑い声・・・。
佐古下にはまるで嫌味のように聞こえた。
それが聞こえた瞬間は仏頂面であったが少しづつ表情が崩れてきた。
「誰か・・誰か私に気を配ってくれる人がいたらなぁ・・・。」
しかしそんな人はこの世に多くいるわけではない。
どちらかと言うとその逆のほうが多いのがこの世界である。
風が軽く流れ、柳のポニテールがなびいた。
柳は髪の毛を結んでいるリボンを解く・・・
真美に似たヘヤースタイルが露になった。
降りてくるヘリも無い離着陸上は以上に静かだった。
ここで泣いても誰にも気づかれはしないはず・・・・
柳はそう思った。
目に涙がにじんできた・・・
それを冷たく凍りついたような手で拭く。
体も完全に冷え切った状態で、氷のようになっていった。
もともと氷のように冷たい人と言われ続けているがそれがこの事なのだろうか?
「甘えさせてくれる誰かが欲しいなぁ・・・。もう疲れたよぅ・・・・ッ。」


その時だった。
不意に横から足音が聞こえた。
柳は咄嗟にリボンを付け直した。
足音は着実にこちらのほうに向かって近づいてくる・・・
そして先ほどまでの表情を捨てた・・・
足音の主はフラッシュライトを照らしながらこちらに向かってくる。
柳はその人物が誰か確認しようとしたが暗すぎて何も見えなかった。
「誰かそこにいるのか?」
声を上げられた。
間じかまでくる・・・
フラッシュライトを当てられ柳は目を細くしてみた。
「さ・・・佐藤・・佐藤准将・・・。」
「佐古下最高級元帥!なぜここにいるんですか?!」
彼の顔を見た瞬間涙がとめどなくあふれて来る・・・
佐藤は慌てた。
「えぇ!!ちょッ・・・佐古下元帥!!」
その場に柳は泣き伏せてしまった。
何が起きたのか佐藤には判らなかった。
だが、このままでは明らかに向連(日向連隊)に咎められてしまうと思った佐藤は柳の手を引いた。
彼女を連れて佐藤は走りだした・・・
佐藤准将の手はとても暖かく、柳の手とは全く違った。
暖かさが柳の手に伝わる・・・・。
人目に付かぬように師団本部まで佐藤は手を引きつづけた。
なんとか日向連隊の警備には見つからずに柳の部屋までたどり着く事が出来た。
しかし問題はそのあと・・・
泣き崩れた彼女をどうすれば慰められるのか・・・。
再び彼女の顔を見ると頬を赤く紅潮させ、まだ目に涙をためていた。
思い切って佐藤は聞いた。
「どうしたんですか?元帥。話してください。お力になれるのであればお力になりますが・・・」
こんなときでも彼女は強情だった。
何も話そうとはしない。



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