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FUTURE (仮)
頂きものです(小説)
大神さんがとてもカッコいいです!見所満点!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『希 望』
大帝国劇場2階の1室が彼女の自室だった。
その自室は殆ど何も置かれていない状態のまま、ただそこに存在した。
この部屋の主である少女もまたこの部屋に佇んでいた。
いや、閉じこもっていたと言った方が正しいかもしれない。
少女は2日間もの間、誰ともまともに顔を合わさず、食事にも顔を出していない。
そしてこの自室の明かりさえ灯そうとしないのだ。
「レニ、いる?」
ドアの向こうで彼女の名が呼ばれる。
「・・・・・・・・いるよ」
レニは一言返事を返す。
「どうしたの?最近アイリスたちの前に顔出してくれないから心配してたんだよ」
ドアの向こうの人物がまた尋ねる。
その人物がアイリスだということはレニも当然わかっていた。
「・・・・・・・帰って」
レニはそう冷たく返答した。
アイリスは思いもしないレニの冷たい言葉に恐怖を覚えた。
だがめげずにもう一度聞き返した。
「ねえ、レニっ!どうしたの?アイリス、放っておけないよ!」
しかしレニの答えは変わらない。
「帰って・・・・・・・気分が悪いんだ」
仕方なくアイリスはその場を立ち去った。
アイリスが立ち去ったことに気付くと、レニはまた大きな溜息を零した。
そして帝劇の資金で購入されたベッドに横たわる。
「遠い・・・・・・・・・」
レニは目に涙を浮かべて言った。
横たわったのはいいものの寝付けないのが現実だった。
誰もが寝静まったことを確信すると、レニは自室を出た。
そして静かに階段を下り、中庭に出た。
『ワンワンワンワン・・・・・』
ベンチに腰掛けるレニにフントが寄ってくる。
フントは尻尾を振りながら嬉しそうにレニに寄り添った。
レニもフントを見て微笑む。
「フント・・・・・・お前はいつでもボクの傍にいてくれるんだね」
そう呟いた途端、堪えきれなくなった涙が溢れ出してきた。
「ここにいるのが・・・・・・・怖いんだ」
そしてそう言い放ち、レニはフントを突き飛ばした。
思いもしないレニの行動に、フントはアイリス同様恐怖を覚えた。
「ごめん・・・・・・フント!ボクは帝劇を去る・・・・・・さようなら」
思い詰められたレニはその場を駆け出した。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
大きな叫び声を上げ、支配人室の前を一気に走り抜け、来賓用玄関の方から帝劇を飛び出した。
しかしレニは誤認していた。
「支配人、今のは――――――」
「レニの声、だったな・・・・・?」
誰もが寝静まったことを確認したはずだが、米田と支配人室に呼び出された大神がまだ起きていたのだ。
更に先の叫び声が響いたのか、2階の自室ぐっすり眠っていたアイリスまでもが起きてしまい、声のする方へと駆けて来た。
「・・・・・・支配人、2日前からレニのことは気になっていました。心配なので見て参ります!」
丁度、アイリスは支配人室から出てきた大神と鉢合わせた。
「お兄ちゃん・・・・・・レニが!」
「ああ、わかっている。来賓用玄関の方へ行ったみたいだ!行ってみよう!」
2人は来賓用玄関へと駆けつけた。
しかしそこには既にレニの姿がない。
「レニ・・・・・・・・」
不意に大神は2年前のあの出来事を思い出した。
何のために戦っているのかわからなくなり、知らないうちに水孤に操られていたあのレニが――――――
再び大神は危機を感じた。それはアイリスも同様だ。
だがレニは既にいない。
「ひょっとしたらまた引き返したのかもしれない。アイリス、手分けして探そう!俺は2階を見てくる。アイリスは1階を探してきてくれ!」
「うん、わかった!」
大神はまた階段を駆け上がった。
それを確認すると、アイリスは舞台、楽屋、衣裳部屋、大道具部屋、食堂と様々な場所を捜索した。
しかしレニは何処にもいない。
残されたのは中庭―――――アイリスは中庭に向かって走った。
「レニ・・・・・・・?」
アイリスは中庭に顔を覗かせた。
『ワン・・・・・・ワン!』
人気を知らせるかのようにフントの鳴き声が聞こえてきた。
アイリスは恐る恐るフントの声のする方へと近付く。
「フント、そこにレニいるの?」
フントは何も答えない。
アイリスはいつもレニの座っていたベンチを覗く。
「レニ・・・・・・!」
そこにレニの姿はあった。
レニは顔を伏せて泣いていた。
レニの泣き顔はアイリスも初めて見た。
「レニ、どうしたの!?」
しばらくアイリスはレニの横顔をそっと眺めていた。
何故レニが―――――アイリスには何もわからなかった。
「ボクは・・・・・・この場所を離れる」
レニは聞こえにくい声でぼつりと言った。
が、アイリスはそれを聞き落としてなかった。
「えっ!?」
アイリスは聞き返した。
「ごめん、アイリス・・・・・・・・・アイリスのせいじゃないんだけど、そう思ってしまうんだ。本当にごめん・・・・・・信用できないなんて友達じゃないでしょ?だからボクは帝劇を出て行くことにした。それじゃ」
そう言うとレニは傍らにいたフントを撫で、荷物を持って走って行った。
「待って、レニぃぃぃっ!」
すぐにアイリスも後を追う。
正面玄関を突き抜け、夜の銀座の街を風のように駆け抜けて行くレニをアイリスは必死で追った。
しかし中々追いつかない。
と思ううちに、アイリスの背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「アイリス!」
「お兄ちゃん!?」
アイリスは不意に立ち止まった。
そしてその声の主が来るのを待った。
「アイリス・・・・・・・レニは!?」
声の主はあの時2階を捜索すると言ってアイリスと分かれた大神だ。
「今あっちの方へ行ったよ!もう追いつかない・・・・・・」
「頑張って追うんだ。レニを行かせるわけにはいかない!」
「うん」
この時、既にレニの姿は見当たらなくなっていた。
大神はアイリスの手を取り、全力疾走した。
その速度はやがて銀座停留所を出た帝鉄を抜き、あっという間に煉瓦亭付近まで辿り着いた。
「フウ・・・・・・疲れた」
大神はぜいぜい溜息を吐く。
「アイリス、お腹空いちゃったよ~」
今はレニを探している時――――アイリスだってそれぐらいわかっていた。
しかし幼心が空腹に耐えられなかった。
そして大神もそれをよくわかっていた。
「・・・・・・さすがにレニもまだここまでは来ていないだろう。少しココで待ち伏せよう」
「うん!」
2人は手を繋ぎ煉瓦亭へ入店した。
閉店時間が間もない煉瓦亭の客は大神とアイリスの2人だけだった。
「アイリス、よく食べるな」
「・・・・・・レニのことが気になって、晩ご飯殆ど食べれなかったの。それだからお腹空いちゃった」
「そうか・・・・・・・」
大神はゆっくりとコーヒーを口に運ぶ。
そして窓の外を見つめる。
銀座の夜景はいつ見ても美しいものだ。
いや、銀座だけではない。遠くに見える帝都全景が美しい。
やがて雨が降って来た。
アイリスはそんなことお構いなしに黙々と食べている。
最早レニのことなど忘れているのではないかというくらい。
「ココのオムライス、本当に美味しいね!前さくらが言ってたけど本当だったね」
「あっああ・・・・・・・・・」
アイリスの話にも空返事し、大神は窓の外を懸命に見つめていた。
勿論夜景を見ていたわけではない。
レニが通りかかるのを待っているのだ。
しかし通りかかるのはいずれも日本人ばかりだ。
レニらしき少女は見当たらない。
「ねえお兄ちゃん!デザートも頼んでいい?」
またアイリスが話し掛ける。
「ああ、いいよ」
大神は笑顔で答えた。
アイリスが追加注文をする間も大神は窓から目を離さなかった。
それでも現れないレニに大神は心配を擁き始めた。
(擦れ違ってしまったのか・・・・・・・・・?)
大神はアイリスに店を出るように話を持ちかけた。
「なあ、アイリス。そろそろ・・・・・・・・」
「アイリス、このパフェ食べたい!」
「まだ食べるのか?」
「駄目?」
「いや、いいよ」
話をそらされてしまった。
こうなったらここをレニが通るのを祈るしかない―――――そう思った時だ。
大雨の中を傘も差さずに颯爽と走る少女を見つけた。しかもその少女は銀髪。
「レニっ!」
大神は席を立ち、煉瓦亭を飛び出した。
「お兄ちゃん、どうしたの!?」
アイリスも続く。
「お客様!召し上がられたからには料金を―――――――」
アイリスにパフェを運びに来たウエイトレスもそれに続いた。
だが後ろの列など大神の視界には入っていない。
「待ってくれ、レニ!レニぃぃぃぃぃぃっ!」
ようやくレニも大神たちの存在に気付いたようだ。
そして益々足を急がせる。
気がつくと4人は帝鉄の線路上を走っていた。
だがそんなことお構いなしにレニは走る。
が、その時だ。
先程の帝鉄が来たのだ。
泣きながら走るレニには見えていない。
「レニ、危ない!」
大神は叫ぶ。
だがそれさえもレニには聞こえていなかった。
「危ないよぉ、レニっ!」
アイリスも叫ぶ。
列車とレニとの差がどんどん縮まってゆく。
もう間に合わない――――――そう思った大神は一か八かの勝負に出た。
「アイリス、避けるんだ!」
大神はアイリスを避けさせると、レニと列車との数十センチの隙間に踊り出た。
そしてレニを抱きかかえ、歩道に向かって身を投げ出した。
「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
あまりの出来事に通行人、大神を追いかけてきたウエイトレスが立ち止まり、更には帝鉄の運転手までもがブレーキを踏んだ。
抱かれていたレニは軽傷で済んだが、身を投げ出された大神は路上に頭を強く打ち、血を流した。
「お兄ちゃん、レニ!」
アイリスが駆け寄る。
「隊・・・・・長・・・・・・・・」
レニが涙の枯れた目を見開いた。
「レニ・・・・・・無事でよかった」
大神はレニの無事を確信すると微笑みを浮かべた。
「隊長・・・・・・ボクのために・・・・・・・・どうして!?」
レニは大神に抱きついた。
「何言ってるんだ!?君を助けるのは当然のことじゃないか!」
「だってボクは・・・・・・・帝劇を出て行こうとしていた」
「詳しい話は後で聞くよ。とにかく帰ろう、レニ」
「なっ何言ってるの、お兄ちゃん!その怪我じゃ駄目だよ~」
レニを抱き帝劇へ帰ろうとする大神をアイリスが止めた。
通行人たちが大神をジロジロと見ている。
アイリスは大神に鏡を手渡した。
大神は鏡を覗く。
そこに映っていたのは血塗れの自分だ。
「アイリス、救急車呼んでくる!レニはお兄ちゃんとそこにいて」
「了解!」
アイリスは付近の病院に向かって走り出した。
公衆電話がなかったため、救急車を呼ぶには病院まで直接行くしかない。
「隊長、ごめんね・・・・・・・ボクのせいで・・・・・・・ごめんなさい」
「いいって言ってるだろう・・・・・・それよりどうしたんだ、レニ?心配したぞ」
「怖かったんだ・・・・・・・」
「え?」
「隊長たちが離れていくのが・・・・・・・怖かったんだ」
レニは俯いたまま話し出した。
「・・・・・一週間前、花組で花やしきに行ったんでしょ?ボクも行く予定だったけど、高熱を出して行けなかった・・・・・・勿論そのことは仕方ないと思ってるよ。でもそれからみんながその話ばかりするようになって、話に入れなくなったんだ・・・・・・・。アイリスもその時の隊長との思い出話ばかりして・・・・・・・・ボクの居場所がなくなった気がしたんだ。ボクの知らない隊長が・・・・・アイリスが・・・・・・花組のみんながいると思うと怖くて。自分だけ取り残された気がして・・・・・・・・何より隊長が遠ざかってゆくのが怖かった」
「そうだったのか・・・・・・・・」
「それから、隊長とアイリスが急激に仲良くなって、2人でいることが多くなったことにボクは気づいた。別に2人が仲良くしてることが嫌なわけじゃないんだけど・・・・・嫉妬、って言うか・・・・・隊長がボクから遠ざかっている気がした。そして、アイリスも・・・・・・・。だからいつしか部屋に閉じこもるようになってしまった。そして遂に帝劇を離れて遥か彼方へ行こうとしていた・・・・・・」
「レニ・・・・・・・」
大神はもう一度レニを抱き直した。
「・・・・・花やしきの話ばかりしていたのは俺たちが悪かった。レニの気持ちも知らずに・・・・・・すまなかった。アイリスとばかり話してレニと話そうとしなかったことも謝る。だがこれだけは絶対に言い切れる。俺は片時たりともレニのことを忘れた時なんてなかった。本当だよ」
「隊長・・・・・・・・・・」
レニは俯いていた顔を大神の方へ向け微笑みを浮かべた。
「俺はレニから遠ざかったりしない。それはアイリスも一緒さ」
「ありがとう・・・・・・ごめんね・・・・・・隊長!」
「もういいよ、レニ」
レニが落ち着いた頃、救急車のサイレンが鳴り響いた。
「おにいちゃぁぁん!レニぃぃぃっ!」
「アイリス!」
2人が声を揃えて呼ぶ。
「アイリス、ありがとう」
「お兄ちゃんは喋っちゃ駄目だよ!けが人なんだから~!」
大神は救急車に乗せられ、病院へ運ばれていった。
大神が運ばれたのは近くの軍事病院だった。
彼が目を覚ました時は夜が明けており、そこは病室で、レニとアイリスが傍らにいた。
「よかった・・・・・やっと目を覚ました」
「心配したんだよ、お兄ちゃん」
大神は上体を起こす。
真ん前に置かれている鏡に映されたのは、頭に包帯を巻かれた自分だった。
「俺・・・・・こんな怪我を?」
「そうだよ!お兄ちゃん痛くなかったの?」
「いや、それがさっぱり・・・・・・・・・ァ悴 首をかしげる大神に、レニが囁いた。
「隊長、ボクはやっと気づいた・・・・・・・愛の溢れる家は帝劇だったんだって。ボクはもう何処にも行かない。だってボクの居場所はここだけだから」
「アイリスの居場所もここだけだよ!だって、ココが一番楽しいもん!」
「俺の居場所も帝劇・・・・・・大帝国劇場だけだ」
大神は窓の外を見上げて言った。
空は雲一つない美しい青空だった。
後書き~~~~~~
HP開設おめでとうございます。
レニの小説を書くのは初めてだったのですが、ずっと書いてみたいとは思っていたものの書く機会がなく、書かずじまいかと思われたのですが、この度は管理人さんである銀河壱惺さんがレニファンということで書かせて頂きました。
私はどっちかというとぴったりした(?)終わり方をしたい方なので、最後に大神の元へ煉瓦亭から請求書が出された、というところはカットしましたが、当然請求されました(笑)
同時にイラストも書いてみたのですが、かなり劣っています(汗)
(一応このSSに合わせたつもりです)
読んで下さった感想、文句などを聞かせて頂けたら光栄です。
巴里華撃団副司令 吹雪
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