FUTURE (仮)

FUTURE (仮)

Change of a feeling


 フントの散歩の途中でふと気付く。そういえば吹く風が時折冷たくて身震いしたこともあった。フントとの散歩は、レニが心を取り戻してフントを受け入れられるようになってからの日課である。どうしても外せない用事がない限り、
帝劇の外へ出て散歩をすることもよくある。
 今日は、事務処理に忙しい大神に代わってレニはアイリスの勉強を見ていたので、フントの散歩の時間が少し遅れたのである。…と言っても、帝劇を出たのは4時前だったのだが…。

「こういうのを“秋の日は釣瓶落とし”っていうんだっけ?」
 確かに既に、もう10月も数日過ぎた。夏の暑さも9月の終わりのころにはほぼなくなってきていた。
 呟き、物思いに耽ってると、フントが帰路を急かす様にレニのズボンの裾を口で引っ張る。
「あ、ごめんフント。もう寒くなってきたし帰ろうか」
 レニがそう言うと、まるで理解したかのようにフントは「わん」と一吠えした。  


 帝劇に戻り、フントを中庭の小屋に連れていった後、いつもの様に手洗いうがいを済ませる。普段も感染症等の予防にはなるが、特にこれからの時期は夜と日中の気温差もあったりするので、こういった行為が風邪の予防になる。だから、最近レニは更に念入りにそれを行ない、全て済ませると、夕飯の時間まで読書をしようかと自室へと向かう。
 その途中、事務処理を終えた大神とすれ違った。
「レニ、今帰ってきたのかい?」
「うん。隊長は?」
「俺も今仕事が終わったところだよ」
「そう、お疲れ様」
「今日はどこを散歩したんだい?」
「隅田川の方まで。川や草花をフントと一緒にみていた」
「そうか。どんな花が咲いていたのかい?」
「色々みてきたけど、紅葉葵や芙蓉とか・・・秋桜も僅かながら咲いていたし・・・そうだ、楓やカンナの花も綺麗に咲いていた」
 レニの記憶力なら見てきた花を全て覚えているだろうが、仲間と同じ名の花を見たことが一番印象に残ったと楽しそうに話す。
無機質なやりとりからだんだんと会話が弾む。以前のレニならばそういった会話は絶対にしなかった。
まだ、慣れていないのでぎこちなさは残るものの、それでも確実に変化している。
今こうしている自分が不思議だな、とレニが心の中で思った瞬間、
「ふぁ…ハックション!クシュン…クショッ!」
 と三回連続で大神がくしゃみをした。
「・・・隊長、大丈夫?風邪?」
「ああ、大丈夫だけど、風邪・・・なのかな?最近寝不足気味だし、さっきも事務所の暖房が壊れてたから寒いところで仕事してたしなぁ・・・」
 確かに、もぎり服だけでは防寒に欠けているといえる。
 レニは心配そうな瞳で大神を見つめる。
「仕事、最近根詰めすぎなんじゃない?それに、せめて暖かくしなきゃ駄目だ」
「そういえば、由里くんが最近タチの悪い風邪が流行ってるって言ってたっけな~」
 大神はというと、何か人事のように言う。まるで自分に関係がないかのように。
「だったら尚更だよ。隊長が倒れたらもしもの時どうするの?隊長は花組になくてはならない存在だ。もっと自覚しないと駄目だ」
 レニに呆れたように言われると、大神は苦笑するしかなかった。
「はは、それもそうだな。みんなに風邪をうつしても大変だし、気をつけるよ」
「・・・それに・・・それだけじゃない。隊長が倒れたら、ボクは・・・・・・」
 小声で呟こうとしたが、恥ずかしさから途中でやめる。
「ん?なんだい?」
「・・・なんでもない、失礼する」
 頬を薄っすらと赤らめて踵を返すレニに朴念仁の大神はキョトンとレニを見つめていた。


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