『死んでいい』


大好きな後輩A(♂)からのメールは、いつも明るい。
その人は家の都合で、遠くの高校に通ってて、寮生活。

「久々ぁ。元気??」

そんな感じでメールが来たのは、夏休み入って間もない頃。

今までと何の変わりもなかった。
明るいメール。
中学のときもずっとお調子者だった。
授業サボったり、タバコ吸ったり、周りの人からは『不良』って呼ばれてた。
けどAは部活は毎日頑張ってたし、やるときにはやる、イイ奴なんだよ。


で、メール。

最初はいつものように明るかった。
で、話はいつこっちに帰ってくるの?って話に。
「わかんね。多分もーすぐ。帰ったら遊んでくれる?」
って。当たり前だよ。遊ぼうね。そう送った。

そしてその日から、毎日Aからメールが来るようになった。
「今から部活だよー。頑張ってくる!!」
「ただいま。マジ疲れた!」
とか、こんな感じの。
そんなAが可愛かった。

ある日、あたしはなんとなく、「あーぁ、学校行きたくないなぁ」
って送った。
「俺もだよ」
「じゃぁ二人で逃げるかぁ?笑」
「うん、そうしようよ」

こんなメールが、あたしが本当のAを知るきっかけになった。


その次の日。

「俺、今、寮を抜け出した。脱走。」

こんなメールが来た。夜の九時過ぎ。

わけがわからなかった。
Aのことだから、また冗談かなって思った。

「なに言ってんの??笑 こんな時間に外にいたら、補導されちゃうよ?」
「俺、本当に学校やめたい」
「・・・?どーゆうこと?」
「夏でも外って意外と寒いな」
「・・・本気なの?怖くない?淋しくない??」
「淋しいよ。・・・すげぇコワイ」
「寮に戻ったら?」
「・・・戻ったらいじめられるもん」

ショックだった。

あたしは今まで、Aからそんな話聞いたことなかった。
中学のときと変わらず、お調子者で楽しくやってるって思ってた。

あたしはAに電話した。

「・・・もしもし?」
「A・・・ごめん。あたし、今までAがそんなに悩んでるなんて知らなかった」
「いいよ。優しいなぁ、お前」
「寮には・・・戻りたくない??」
「・・・・・・・・・・・・・・・うん」
「・・・・・・・・・・・・・そっか」






















「・・・俺、もう死んでいいや」






















涙が出た。あたしはAが死んだら嫌だ。
何もしてあげれない自分に腹が立った。
今までの明るいAは、強がってたんだ・・・
不器用なAは、淋しいことを、周りに言うことができなかったんだ。
Aは、あたしなんかの何倍も悩んで、今日まで頑張ってきたんだ・・・・・

「ごめんね、ごめんね・・・」

あたしは何回もごめんねって繰り返した。
Aは笑って、「お前は何も悪くねーよ。・・・じゃぁ戻るかな。」
「・・・大丈夫?」
「・・・・・・・おぅ。まかせろや。俺を誰だと思ってんの」
また、AはいつものAに戻った。
つよいなぁ、A。
あたしはまた泣いた。

「死なないでね?」
「・・・さくらに会うまで死なねーよ」
Aは笑って電話をきった。




ごめんね、A。


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