シングル母のアメリカ暮らし

シングル母のアメリカ暮らし

8年間同一担任


それからキンダーからの全学年を通して、スペシャルサポートの先生がつく。
息子は特にお世話になっているが、問題のない子もいつも発達具合や心身の調子などをこの先生が見る。

さて担任に戻るが、1年生から8年生までの長い年月を一緒に過ごすのである。先生自身と、そして親にとっては、それなりの覚悟を決めておまかせする訳だ。何しろ8年間つき合って行くのだから。教師の方でも同じ子供を8年間見る訳だから、それ相当のコミットメントが必要であるだろう。
たまに合わない事だってある。高学年の父兄の中にはそれが理由でやめて行った人もいないではない。何しろ一学年ひとクラスしかないのだから、合わなければやめるしかない。

そういったリスクを負ってでも、やはりメリットはあるのだ。
1年生はひよこである。
最初に出会った自分の先生に、無条件になつきひょこひょこついていく。
3年生から4年生になって、自我がもっと発達するにつれ、反抗も出てくる。
思春期にさしかかる7、8年生になると、権威に対する反発があり、今まで師と仰いでいた教師がただの人であった事に気づくそうだ。教師の行動を批判したり、という事も出てくる年齢だそうである。
でも教師の方は、自分にまとわりつき、鼻に指を突っ込んでいた頃からのつきあいだ。
その子が今どんな状態にあるのか、どんな変化をとげているのかをいつも見てきている訳である。
今がこういう状態だからといって、その時の事だけでその子を判断しないですむ。

長男の担任はとても素晴らしい先生だ。
長男の状態について、色々勉強してくださり、席を頻繁に変えてどの状態が彼を一番落ち着かせる事ができるのか、やってみたりもしてくれる。
一人一人の生徒の状態を実に見事に把握してくれている。
ユーモアと厳しさのバランスがとても上手な先生である。
この先生になら、安心して8年まかせられるなと思った。
面談のたびに「まだまだ先は長い。一緒にがんばりましょう」と言ってくださるのを聞くたび、
長男はラッキーな子だなと思う。

人によって意見はさまざまである。
8年間も同じ先生なんて、と難色を示す人もいる。
いろんな人間にふれて、視野を広くした方がいい、と考える人もいる。
私もそれの意味する事はとてもよくわかる。
それでもあえて、このシステムで良かったな、と思うのは、
小さい頃の教育はあまりたくさんの舵取りはいらないんじゃないかと思えるからだ。
自分の経験だが、3年生と4年生それぞれの担任の大きな教え方の違いに、私自身はものすごく混乱した覚えがあるからだ。
うちの息子のようにトランジッションの苦手な子供にとっては、安心して学べる状態かもしれないと思っている。

そしていつか、この先生とは合わないなと思う日が来ても、それを克服するチャンスはじゅうぶん与えられているし、どうしてもどうしてもダメだと思えば、やめてもいいと思っている。
今のところは考えられないけれども。

この子たちが、どんな変化を遂げるのか、どんな大人になって行くのかを見届けるのがとても楽しみだ、というような事を最初に言ってくれた先生の、その言葉がとても胸に響いた。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: