ミステリの部屋

ミステリの部屋

2008年05月25日
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この子は村の若夫婦に引き取られ、のちには製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれて輿入れし、赤朽葉家の「千里眼奥様」と呼ばれることになる。
これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。
――千里眼の祖母、漫画家の母、そしてニートのわたし。
高度経済成長、バブル崩壊を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる3代の女たち、そして彼女たちを取り巻く不思議な一族の血脈を比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。
(出版社より)



でも、これまでに読んだ どんな話とも違います。
色鮮やかな世界が、独特のスピード感で めくるめくように巡っていきました。

丘の上にそびえ立つ赤朽葉家は製鉄業を興し、時代とともに栄え、君臨し、そしてさびれます。

赤朽葉家に嫁いだ万葉は 山の民の捨て子で、先を見通す力がありました。
そして、娘の毛毬は暴走族から漫画家と 嵐のように激しく人生を駆け抜けます。
孫の瞳子は何もない時代に生れ、何も持たないと思っています。

とにかく面白く、一風変わった話に引き付けられ 夢中で読んでしまいました。

終盤になってある謎が解明されます。

そう、この作品は第60回日本推理作家協会賞を受賞しているのでした。

はじめから提示されていたある謎がとけることによって、いつもそこにあったはずの恋の姿が 切なくクローズアップされました。
同時に瞳子は祖母から、血とともに受け継がれてきたものを、、前へ進む力を受け取ります。

万葉の章が一番長く、一番面白く読みました。
汗を流して働いたものが、誇りを持って力強く生きることができる時代。
何だか懐かしさと温かさも感じます。
親友のみどりとの関わりが面白く、のちに二人で 山奥に秘密の墓場を捜しにいくシーンが印象に残りました。

それに比べて瞳子の章は地味ですが、読者である私たちに通じるものがあります。
自由だけれど、何か不安を感じている。

私は自分の祖母を 母を 思いました。
駆け落ちで結ばれた祖母、戦争の終わりに長崎の女学校から怖くて逃げ帰ったことで命拾いをした母。

どうせ綴るのならば……

「せかいは、そう、すこしでも美しくなければ。」

そう願います。






赤朽葉家の伝説 : 桜庭一樹








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最終更新日  2008年11月22日 21時30分08秒
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Re:赤朽葉家の伝説:桜庭一樹(05/25)  
もくよう☆  さん
第一弾と第三弾の紹介ありがとうございます(*^∇^*)
検索したのですが出て来なくて…(^ ^ ;)
大変助かりました(*^∇^*)
図書館に早速予約した所、第2弾が一番予約数が多かったです(^ ^ ;)
こち亀の小説もやっと回って来ました(*^∇^*)
(2008年05月26日 15時56分29秒)

文句なし!  
shov  さん
僕には、この本にコメントすることばすら浮びません。
編集者に「ここらで、中期の代表作を書いてみませんか?」と言われて、この本を書いてしまう桜庭さんは凄いです。
それと、ラテン・アメリカのマジック・リアリズムに親しんできたものにとって、この本には格別の想いが伴ったりします。
(2008年05月26日 20時12分56秒)

Re[1]:赤朽葉家の伝説:桜庭一樹(05/25)  
samiado  さん
もくよう☆さん、こんばんは!

>第一弾と第三弾の紹介ありがとうございます(*^∇^*)
>検索したのですが出て来なくて…(^ ^ ;)
>大変助かりました(*^∇^*)

お役に立てて幸いです♪私も1と2は読んでいないので知りたかったのですw

>図書館に早速予約した所、第2弾が一番予約数が多かったです(^ ^ ;)

おお、そうですか?「不思議」というキーワードには惹かれるものがありますからね。

>こち亀の小説もやっと回って来ました(*^∇^*)

作家のみなさんのこち亀への愛情が感じられるアンソロジーです。やっと順番が来たんですね。楽しんでくださいね♪ (2008年05月26日 22時46分06秒)

Re:文句なし!(05/25)  
samiado  さん
shovさん、こんばんは!

>僕には、この本にコメントすることばすら浮びません。
>編集者に「ここらで、中期の代表作を書いてみませんか?」と言われて、この本を書いてしまう桜庭さんは凄いです。

これまで読んだことがないような作品でした。
桜庭さんの作品を読むのは2作目ですが、感想を書くまでに時間が経ってしまい、後悔しています。すぐに書くべきでした。この間にこぼれ落ちてしまった言葉は探せません。

>それと、ラテン・アメリカのマジック・リアリズムに親しんできたものにとって、この本には格別の想いが伴ったりします。

正直よくわからないのですが、桜庭さんが『百年の孤独』のような話を書きたかったと言われたことに関係していますよね。自分の幅の狭い読書を後悔するのはこういう時です。 (2008年05月26日 23時03分54秒)

Re:赤朽葉家の伝説:桜庭一樹(05/25)  
みっつ君  さん
こんちは!
いや~、これは傑作ですよね!
ミステリ要素は薄めですが、大好きな作品ですね。
もうすぐ出るらしい新作「荒野」も楽しみです。 (2008年05月27日 12時42分20秒)

Re[1]:赤朽葉家の伝説:桜庭一樹(05/25)  
samiado  さん
みっつ君さん、こんばんは!

>いや~、これは傑作ですよね!

面白かったですね~。この作品、好きでしたよ♪

>ミステリ要素は薄めですが、大好きな作品ですね。
>もうすぐ出るらしい新作「荒野」も楽しみです。

桜庭さんには これからもどんどん読んで どんどん書いてほしいですね。
私は他の作品も読まなければ! (2008年05月28日 00時05分49秒)

Re:赤朽葉家の伝説:桜庭一樹(05/25)  
日向 永遠  さん
面白そうな内容ですね。
きっと読みますね。(*^_^*) (2008年05月28日 20時47分02秒)

Re[1]:赤朽葉家の伝説:桜庭一樹(05/25)  
samiado  さん
日向 永遠さん、こんばんは!

>面白そうな内容ですね。
>きっと読みますね。(*^_^*)

面白いですよ~♪三代記と共にその時代のできごとも描かれているので、一緒に時代を駆け抜けてきた気がします。 (2008年05月28日 22時19分01秒)

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