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少し前ですが、マイケル・クライトンのNEXTを読みました。エンターテイメントとして、ぐんぐん引き込まれてすぐ読めますが、書かれている内容が、空想物語というわけでもなく、実際の世界がもうそんな段階に来ていると知ると、ぞっとします。遺伝子をちょっといじったからといって、オウムに子どもの宿題を手伝う能力ができるのかは疑問ですが、自分の身体の中にある物質の特許を勝手にとられてしまう、ということは、もう南の国の人たちに対しては行われているそうです。 クライトンは本書を執筆するための取材をするうちに、次のことを思うようになったと、あとがきにあります。1)遺伝子の特許を認めるな遺伝子の特許を認めるということは、鼻の特許を認めるようなもの。そうなったら、眼鏡もティッシュペイパーも鼻炎スプレーも作れなくなる。2)人の組織の使用に関する明確なガイドラインを作るべき身体を離れたからといって、何の権利もなくなるのはおかしい。3)遺伝子実験緒データは公開されるべきである遺伝子治療により死者が出た場合、隠蔽しようとされがちである。4)研究に禁制はさけるべきであるするべきではない実験はたしかにあるが、今の時点では、ある国で禁止しても上海では行われてしまう。5)Bayth-Dale法を無効にせよ1980年に可決されたこの法により、学者は税を使って成し遂げられた研究を自らの利益のために売ることができるようになった。その結果多くの学者が企業とタイアップするようになった。30年前には利権と無関係の学者が公共の利益のためにあらゆるテーマで議論することが可能だったが、今では学者の個人的な利益が判断に影響している。大学は研究より利潤追求に走り、納税者は政府を通して寛容な投資家にさせられている。消費者は自分たちが出資した薬を高い値段で買わされている。投資家には普通見返りがあるが、アメリカの納税者にはない。かつて人道的な欲求を感じていた科学者は今では損得に関心が深いビジネスマンと化した。マイケル・クライトン著 「NEXT」 早川書房 遺伝子組み換えや生命特許についてさらに知りたい方は天笠啓祐編著「生命特許は許されるか」 緑風出版 をお読みになってみてください。 アルツハイマーやパーキンソン病になる遺伝子も特許が取られたり申請されていますが、そうなると、他の製薬会社や学者は研究ができなくなり、患者にとって不利益になります。そもそも特許制度は工業製品のためにできた制度であり、学者が発明したわけでもなく存在するものに特許を与えることがおかしいのではないでしょうか?この本には、ミリアド・ジェネティクス社が乳がん遺伝子BRCA-1とこの遺伝しい関する知識から得られるすべて緒治療および診断手法に対し、特許を申請しており、認められると、同社は患者が診断スクリーニングを受けるたびに特許料を請求することができる、と書かれています。2003年に出版された本なので、検索してみると、どうもその後この特許は認められてしまったようです。検査料が高いのも、特許料が含まれるからではないでしょうか。 医療・医学ニュース
July 9, 2008
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サミット抗議デモで逮捕者が出ました。公安が自分で転んで「公務執行妨害」で逮捕という話を聞きますが、同様なことが行われたようです。クリームな日々阿修羅掲示板 原田武夫さんによると、このサミットは原発サミットだそうです。ドイツのDer Spiegelのサイトには、ブッシュの側近がドイツのメルケル首相に、原発廃止をやめるよう勧めているとの記事が載っています。そうしないと気候変動を防止できないなどとブッシュ大統領側は言っているけれど、ドイツは原発廃止の方針を変えないとのことです。 アメリカは京都議定書も抜けてしまったくせに、と驚いてしまいます。二酸化炭素が温暖化の原因かどうかには議論があります。原発も高熱を水で冷やしたりするので、温暖化に関係ないとは言えないのではないでしょうか。 サミットとは関係ありませんが、天木さんのブログもぜひお読みになってみてください。「天木直人のブログ ヘレン・ミアーズの「アメリカの鏡・日本」という著書を読んで」 少し引用させていただきますね。(文字の色を変えたところが引用です) ミアーズが繰り返しその著書で訴えているのは、 米国は戦争に勝つために日本を占領したのではない、占領そのものが目的であった 米国は日本が脅威だったから日本と戦ったのではない。日本の脅威をことさらに強調し、それを口実に日本国民と 日本文明の破壊のために日本を戦争に追い込んだ という事である。天木さんの以前の記事もご参照ください。「天木直人のブログ 米国とイラクの安保協定締結の動きを注視せよ」
July 7, 2008
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東京丸の内の出光美術館にてルオー大回顧展を見ました。今年没後50年ということです。ルオーの絵は黒い輪郭線と深い色彩が中世のステンドグラスを思わせますが、キリストや聖母をほとんど描かなかった時期がありました。描き続けていたのは、裁判官、娼婦、道化師など… たしかにそういう人たちを見れば人間の性が見えてくる気がします。といっても、それも一様でなく、裁判官でも傲慢な権力者の象徴であることもあれば、人を裁かなくてはならない苦悩の表情を見せていたり。道化師もしたたかだったり、子煩悩だったり、あるいは、穏やかな顔をしていたり。キリストや聖母が描かれていなくても、やはりそれらは宗教がといえるでしょう。「ミゼレーレ」という版画のシリーズで、「生きるとはつらい業」という題の絵のとなりに、「でも愛することができたなら、なんと楽しいことだろう」という絵があったのが印象に残っています。 最晩年の絵の具を異様に厚く盛り上げた色鮮やかな絵には吸い込まれそうでした。円空仏のような力強さを感じました。出光美術館公式サイト
July 4, 2008
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「なぜ世界の半分が飢えるのか」「WTO徹底批判」「オルター・グローバリゼーション」などの著作で知られるスーザン・ジョージさんの講演「グローバル化と社会・金融危機―私たちはどんな世界に向かっているのか―」を聴いてまいりました。スーザン・ジョージさんは現在TNIとATTAC FRANCEで活動していらっしゃいます。 現在、私たちが直面しているのは、1)社会的危機 2)金融危機 3)環境(気候・生物の多様性)の危機 結論を言うと、危機という漢字には機会の機がある、金融危機を逆手に取れば、社会的危機、環境の危機を解決するチャンスにできる、ということです。 それぞれの説明はだいたい以下のとおりです。(聞き違いがあるかも) UNDP(国連開発計画)のデータを見ても、この20年間で各国で格差が拡大している。世界の上位10%の人が80%の富を所有し、世界の人口の半分がわずか1%の富しか所有していない。世界で950万人が37兆ドルの流動資産(投機に使える)を持ち、さらにもうけることができる一方で、世界銀行によると世界の半分が1日2ドル以下で生活している。格差が拡大したのは、規制緩和、政府の役割の縮小、市場の自由化、民営化などの政策を選択してきた結果である。市場原理に任せた方がよいものといけないものがあり、水道、穀物、薬の開発などは任せては行けない。 銀行が合併などにより巨大になり、潰れるとドミノ倒しのように影響が大きいため、政府がお金を出して支えるようになった。そのため、銀行のメンタリティーがなにをしても潰れないのだからというよからぬものになり、サブプライムのような問題を引き起こした。住宅バブルがはじけて投機マネーが食糧に向かった。一般の銀行と投資銀行を一緒にできるようにしてしまったのが、終わりの始まり。 経済も人類も地球に存在しているが、経済システムが肥大化して浸食している。本来生物圏の中に経済があるのに、新自由主義経済では、経済圏の中に生物圏がはいっていると考えるので矛盾が生じる。ある人の言葉によると、生物圏の大きさは決まっているのに、無限に経済圏が成長すると考えるのは気が変な人、さもなければ経済学者。 金融市場を野放しにするなら、社会危機、環境危機は大きくなる。この10年でどう対処するかが分かれ目。環境経済への転換が必要だが、政治家はなかなかわからないので、自分たちが動くことが必要。ケインズは時代遅れと思われているが、不況のときほど政府の介入が必要ということを今もう一度見直すべき。 具体的には・政府が貸し付けしている銀行に、政府は、環境によいプロジェクトを持つ企業に融資したり、環境によいかどうかで利息を変えるよう指導すべき。・投機マネーに対して国際的レベルで課税することが必要。通貨取引税を課せば相当な財源となる。1970年代為替取引は1日800億ドル。現在は3,2兆ドル。・タックスヘイブンをなくすこと。(大企業がタックスヘイブンに逃げ、個人の税負担が重くなっている。大企業の利益と税金は反比例している)・最貧国の債務を帳消しにする 政府がお金の流れを変えることで、社会危機、環境危機を解消できるはずとのことでした。 質問の答えの中で、スーザンさんは、「成長」の意味を考え直すべきとおっしゃいました。ガンを増やせば病院のベッド数も増え、経済効果があるでしょうか?戦争、あるいは戦後の復興はもっと経済効果がある?それは、成長ではなく、破壊です。環境経済の成長率はもっと低いけれど、本来の成長ということでした。 来日された日、スーザンさんは空港で4時間止められたそうです。暴力とは無縁で悪しきグローバリゼーションに反対している(もうひとつのグローバリゼーション=オルターグローバリゼーションを提唱している)彼女に対する処遇によって、かえってG8の本質が見えてくる気がします。
July 1, 2008
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