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一方で、別れられない彼氏からは毎晩電話が入っていた。取るときもあれば、もう出ないようにしているときもあった。こうやって少しづつ距離を置いていこう。そうすれば彼も私を嫌いになって、そのまま切れることができるのかもしれない、そう思っていた。ある夜。先輩との逢瀬から自宅に戻ったとき、自分の駐車場に見慣れた車が停まっているのに気がついた。・・彼だ。まずい、と思った。正直、その時間は夜中の3時。まさかこの時間に彼がいるなんて。私が車を止めると、彼の車のルームランプが付いて、彼が降りてきた。ものすごい形相で。私は車の中から引きずり出された。すごい力で腕を掴まれて引っ張られた。「こんな時間にどこに行ってた?? え??言ってみろよ!!!」「・・・・・」「ちくしょう、お前の車ボコボコに蹴ってやりたいよ。」「・・ごめんなさい」「俺がどんな気持ちでお前に電話してたと思う? ずっと車の中で待って。 なのにお前は他の男と・・・」殴られる、と思った。車もボコボコにされる、と思った。でも、そのとき私の腕を握りしめる力がフッと抜け、彼がその場にしゃがみこんでしまった。彼が泣き出してしまったのだ。彼が泣いたのは、弟さんが事故で亡くなったときしか見たことがない。弟さんが事故で亡くなった、あの時も私のジンクスは生きていたのだけれど。このまま彼を追い返すことなんてできなかった。とりあえず、自宅につれて帰り、客間で一晩かけて話をした。どうしても、私は彼の元には戻れない・・と。それでも彼は自分のところに帰ってくるまで待つ・・と。そんなにまでして私を許そうとする彼を前にしながらも、私は先輩のことしか考えられなかった。どうにかして別れたい。結局、この彼ときちんと別れられたのは1年先の話になる。それまでずるずる・・と別れることは叶わなかった。
2007.09.27
私はまだ頭の中の整理がつかずにいた。私は先輩に抱きしめられ、たった今キスをした。自分が10歳の頃からずっと片思いしてきた相手。追いかけても追いかけても手の届かない、絶対叶わないと思っていた遠い存在の人。その人の鼓動が自分の耳から直接聞こえてくる。こんなに近く・・こんなに近く。「・・大丈夫?」先輩が顔を覗き込んできた。顔を上げられるわけがない。まるで、中学生にでも戻ってしまったような気がした。25歳にもなった大の大人が、何もできないでいる。ましてや、キスだって初めてじゃないのに。相手が違うだけでこんなにも余裕がなくなってしまう・・。「おーい。」先輩がまた茶化す。私もようやく息をはくことができた。それくらい気が動転してしまっていたみたい。やっと二人の体が離れた。でも、手は握ったまま離さない。そのまま、後部座席で二人並んで他愛もない話をした。車内の時計が帰る時間を示している。もう、そろそろ戻らないと。「・・帰ろうか。」「はい。」こんなときほど時間が経つのはどうしてこんなに早いんだろう。私は運転席に戻ろうとした。でも先輩が・・私の左手を離そうとしない。「もう一度、キスしていい?」先輩の言葉に私は横に首を振った。「何で?」「私、さっきもう先輩の首に口があたってしまったんです。 それで、1回です。もう・・十分。」これ以上ドキドキが止まらなかったら、もう心臓が爆発してしまう。「・・それじゃダメでしょ。」そのまま左手をぐいと引き寄せられ、また唇を重ねられた。もう・・ダメだ。私はこのひとからもう離れられない・・。私は完全に先輩にのめりこんで行った。
2007.09.26
車のフロントガラスの前は、真っ暗な海。誰もいない、波の音だけが静かに聞こえている。明かりはオーディオのイコライザーのみ。青い光が車内をぼんやり青白く映している。「おいで。」後部座席に移った2人はどちらからともなく腕を広げた。私は先輩の右の首元に自分の顔を当てて、そのまま、先輩の背中に両腕を回した。先輩の胸の温かさが私をすぅ~っと温めていく。心地よい居場所。そのまま先輩が自分の体を後ろに少し傾けた。正確に言うと、私の体ごと。そうして、私は先輩に体をもたれさせる形のまま二人は言葉を発することなく少し時間が流れた。「先輩、重いよね、ごめんねありがとう。」そう言って先輩の耳元で私が口を開いたとき、先輩が顔をクッと私に傾けたので、私の口が先輩の耳の下あたりにほんの少し触れてしまった。!!何、今の。もしかして、今の!!ずっとずっと片思いしてきた私の先輩。その先輩の首元に私は口をあててしまった。その途端、自分がどんな大胆なことをしているか、今更だけど恥ずかしさがかぁぁぁっとこみ上げてきて心臓がドキドキしてきた。バッ!と体を起こそうとした。でも変に体が傾いてしまっていて、腕が先輩の後ろに回ってるから重心が戻せなくて起き上がれない。「・・せんぱ、」腕をつっぱってなんとか体の体勢を元に戻そうとしたそのとき先輩の体が少し離れた。顔を両手でそっと挟まれた・・と同時に私は先輩と唇を重ねていた。!!その瞬間全身が一気に温度が上昇した。鼻の下の筋肉がガチガチになるんじゃないかと思う位緊張のあまり硬直した。その時間、おそらく2、3秒・・。「ごめんッ!」そう言って先輩がまた私をぎゅっと抱きしめてくれた。私は先輩の腕の中でただ首を横に振るのが精一杯。涙がポロポロ出てきてしまって、言葉が出てこない。その様子を見て先輩がまたぎゅっとしてくれた。「ごめんな、ごめんな」と謝りながら。私達の初めてのキスだった。
2007.09.25
それから逢瀬を重ねる度、私達は互いの距離をぐんと近寄らせた。私達のコミュニケーションの中に「Hug」が入ったのだ。抱きしめる・・というよりは、軽くぎゅっとする、そんな感じ。会って、話して、別れるときに、最後にちょっとだけ先輩に「Hug」してもらえた。先輩はまだ少し抵抗がある様子だったけれど、私は幸せいっぱいだった。私が職場が休みの日。先輩の仕事が終わる時間に合わせて私は外出した。今日は、夜、二人で夜光虫を見に行く約束をしていた。ちょっと車を走らせたところにある、とある海岸。サーファーの客に穴場のスポットを聞いていたのだった。「今日は満月だから見られるといいな。」「台風が通った後とかの方がよく見えるらしいよ?」携帯でそんな連絡をとりながら、私はコンビニで小さなケーキを2個買って、待ち合わせの場所に向かった。先輩は10分くらい遅れて海岸のパーキングにやってきた。「あれ?先輩、会社帰りじゃないの?」車から降りてきた先輩はメカニックのツナギの姿ではなく、Tシャツにジーンズ姿だった。「着替えてきたよ。ツナギだと汚れてるしね。」そう言って、先輩が私の車の助手席に乗り込んできた。最近のデートはもっぱら車の中だ。音楽をかけ、他愛もない話をして二人で時間を過ごす。お互いが車が好きだから、車の話や、職場の話、中学の部活の頃の話、話題には事欠かなかった。多分本人は気づいていないけれど、高校生時代の話になると先輩は少し口をつぐむ。卒業アルバムを見せた時なんかは押し黙ってしまったほどだ。何かトラウマにでもなっているのだろうか。だから、私もなるべくその頃の話は避けるようにしていた。夜光虫はその日は見ることができなかった。雲が多くて、月光があまり見られなかったのだった。「ざんねーん。また次回かな?」そういう先輩に私はさっきのミニケーキを差し出した。「ん?何?買って来てくれたの?」「えーと、先輩の誕生日、1ヶ月前に終わっちゃったけど、 1ヶ月遅れで26歳おめでと~う♪」先輩の誕生日はもう過ぎてしまっていたけれど、何かの形でお祝いをしたかった。コンビニのケーキじゃ何も色気もないけれど・・。それでも二人で小さなケーキを食べた。食べるのに2分もかからなかった。「ありがとな。」「はい。」そう返事した私に先輩が両腕を広げてくれた。「おいで」「え・・・」先輩から腕を開いてくれたのは初めてだった。突然のことだけにどうしていいのか分からない。私は運転席にいて、ハンドルが邪魔して先輩のところまで届かない・・。「後ろの席なら、サイド(サイドブレーキ)もないから大丈夫かな。 後ろにおいで。」言われるがまま、私は先輩に連れられて後部座席に移動した。
2007.09.14
久しぶりに先輩に会うことになった。イタリア料理の職場はCLOSEが10時。仕事の帰りだから夜10時半くらいになってしまう。それでも先輩は待ち合わせの場所で、車の外で待っていてくれた。「久しぶり。」先輩にそう言われて返す言葉がない。「ウソウソ、ごめん、怒った?」先輩はそう笑ってくれるけど、それは私のほうが言いたい台詞だ。連日連夜の元彼からの電話で攻められ、正直言えばかなり精神的にも参っていた。でも、自分で選んだ道。先輩には迷惑をかけられない。先輩は私が守る。そう自分で決めたことだけれど、でも、心の中はスカスカの状態だった。満たされたい・・・おかしな言い方だけれど、私は幼少期の頃より、自分の親に頭をなでてもらうといった感覚がなかった。彼氏と呼べる存在ができて、男の人の腕でぎゅっと包んでもらうとそこに自分の居場所を再確認できるようで、頭をなでてもらえると心が和み、胸の中で落ち着きを感じていた。そうやって今まで、自分のバランスを保てることができていたけれど、今の私にはそんな胸の中に飛び込ませてくれる対象がいない。今まで憧れていた先輩にはそんなこと思っても見なかった。でも・・・このスカスカの自分を何とかして欲しかった。先輩との時間がどんどん過ぎていく。楽しいおしゃべりも1時間が限界。私も家に戻らなければいけない。「あ、あの・・・」もう、我慢が限界だった。「お願いがあります・・・。」「ん?何?言ってみて?」私は・・何も言わず、先輩の正面に抱きついた!「ちょっ・・、何するんだよ!!」びっくりして一瞬私を離そうとした先輩。それでもその胸の中に、私は飛び込んだ。「ごめんなさいッ、1分でいいんで、このままでいさせて」人気のない駐車場。私は、大好きな先輩の胸の中ですうと呼吸した。あったかい先輩の胸。まわりは本当に静かで、ただ心臓の音だけがダイレクトに私の耳から入ってくる。乾いた木に水が浸透していくかのように、私の中にどんどんと暖かいものが流れ込んでくる。満たされる。満たされていく。「・・・充電完了。」そういうと私はあわてて先輩から離れた。「なんなんだよ、一体・・・」先輩の顔が真っ赤だった。もちろんそれ以上に赤かったのは私だけれど。この歳になって、まだ二人はプラトニックだった。手しかつないだことがなかったふたり。年齢は重ねていても心の中はまだ15歳と16歳の淡い恋心のままだったのだ。
2007.09.13
「お前だけ幸せになんて絶対にしない。 お前も相手もメチャクチャにしてやる!!!」聞いたことのないような彼氏の声に私は言葉を飲んだ。友達は同じ土俵の上に立たせて男2人で話し合いをさせたらいいと言った。彼氏と先輩の間でフラフラしている優柔不断な私。どちらにもいい顔をして、2人が直接顔を合わせてバケの皮がはがれるのを恐れてるの・・??「・・ちょ、ちょっと待って。」こういうときのオンナって本当にずるいというか、神経が図太いというか。「・・何のこと?ああ、あの初恋の人? あの人はもう違う営業所に行っちゃったし、全然関係ない。 うん、関係ない。 私自身が結婚に対して自信がなくなっちゃった、っていうのが本音。」さらりと嘘がつけた。私は全然動じてない。冷静に言ったつもり。でも彼氏はまだまだ食い下がる。「お前、この場に及んでまだそんなこと言うの? 正直に言えよ。もうこっちはわかってるんだから。」「じゃあ、一体、私の何を分かってるの?」「いいところもわるいところもみんな知ってるさ。 だから、お前の心変わりも俺にはわかるんだって。」「わかったところで、どうするの? 本当にごめんなさい。あなたの元には戻れません。」・・言ってる自分が情けなかった。彼氏は本当に何も悪くない。私と恋愛をして「初めて彼女ができたんだ」と話してくれた。本当に惜しみなく愛情を与えてくれた。そんな何も非がない彼氏に対して、本当によくもこんな態度が取れるものだ・・。でも私の中のこたえはひとつだった。世界中を敵に回しても、私は先輩と生きて行きたい。それはたとえ神様を敵に回しても・・だ。先輩は私が守る。どんなことがあっても先輩の人生に傷をつけちゃいけない。この頃の私はひとりよがりだったのかもしれない。それでも愛する人と愛してくれる人の間でまだ私はさまようしかなかった。
2007.09.01
その日から先輩からの電話もメールもぱったりと途絶えてしまった。完全に嫌われた。先輩に指摘されるまで、自分の行動を何も深く考えていなかった。以前、先輩と話していたときのことを思い出した。バイト先に、友人が私用で少しの時間、尋ねてきてくれて、2分ほど立ち話をしていたら、オーナーに叱られた。そのことを先輩にぶつぶつと私が文句を言っていたのだ。そのとき、先輩は私にこう諭した。「もし、キミがオーナーだったら。自分の雇ったバイトが友人と短時間とはいえ、店の中で立ち話していたらどう思う?その話は店に何の売り上げも供給しない。」「あんまりいい気しない・・です。」「だよね。へんな言い方をすれば、オーナーは労働という形でキミの<時間>をキミから買ってるんだ。キミは契約された時間のあいだはお店のために自分の力を使わなくちゃいけない。それはたとえ2分でも許されないんだよ。」「そうですね・・私が悪かったんですよね。」「まず、行動する前に。相手の立場に立って行動を起こすということ。これを考えなくちゃいけない。自分がこの行動を起こすことで、誰がが傷ついたり悲しんだりするような影響がないかということ。それを瞬時に判断する頭を持たなくちゃいけないよ。」どんなに自分が腹立たしくても、先輩が私を諭してくれると私は素直に聞き入れられる。「道に倒れかかってるお年寄りを見て、『あ、助けなきゃ!』じゃもう遅いんだ。そう考える前に自然と体が前にでてるくらいじゃないと、間に合わない。人がこうして欲しいな、と思ってるのを察知して、してあげるのは誰でもできる。こうして欲しいんだろうな、って、相手自身が思うよりも先に、こちらの体が動けるようにならなきゃ。人のこころを読む目を養わなくちゃ。」先輩の言ってることは理想論かもしれない。それはそう簡単にできることではない。でも、先輩はそうやっていつも人のことを思い、言われる前にこれを実践して動いているひとだ。この話に、私は今回の騒動を当てはめてみた。先輩が、私より以前につきあっていた彼女を頼り、私には事後報告しかしなかったら。それを悪びれる様子もなく、正直に話せば許してもらえるとたかをくくってたら。・・・身震いがした。私でもイヤだ。なんで、後先考えずにこんなことをしてしまったのだろう。後悔した。私は先輩から受けていた信頼さえも失ってしまったのか・・・。1週間くらいして、やっと先輩に連絡を取ることができた。私は自分の過ちについて心の底から謝った。先輩は「もういいから、その話はこれで終わりにしよう。」といって、元の優しい先輩に戻ってくれた。先輩も自分の中で消化してくれたのだろうか。それからはこのことに対しての攻めは一切なかった。今も、このときの先輩の心境はわからない。それからというもの、私は彼氏に完全決別をしようと試みた。もう何度も何度も電話で別れ話をしてみるが、彼は「絶対に別れない」の一点張りで、わたしもつい、苛立ちから「もういいかげんにして・・」と言ってしまった。私のこの態度に、彼がキレた。「お前な、俺は本当はみんな知ってるんだぞ? I営業所のN。 先輩だろ?お前が追っ掛けてた。 お前、俺と別れてそいつのところに行くつもりなんだろ。 本社の会議室のところで、お前が男の写真見てはしゃいでたの、 俺、覚えてるんだ! お前が俺を捨てるなら、俺はそいつの会社に行って、 暴れてきてやろうか? 会社にいられなくなるくらい、メチャクチャにしてきてやろうか!!」彼が先輩の存在に気づいていた・・・。
2007.08.25
「お願い、人から見えるよ・・離して。」腕をつっぱねてようやく彼が私の体を離した。私はすぐに彼との距離をおいた。「俺、自分の親にはまだ話してないんだ・・壊れたこと」彼がそう言った。「もし戻ってきたら、何もなかったようにできるだろ?」「・・だから、もうそれは。」「俺は待つよ。どれだけでも待つよ。」何を言っても無駄だった。彼は私の言葉を聞き入れようとはしてくれなかった。とりあえず、上司と再会した2人が建物から出てきたので、私達は帰ることにした。上司は周りの説得の末、実家に戻りその後、彼女と結婚することとなる。・・が失踪の理由は、やはり二股だった。元カノと今カノとの3人で泥沼状態になっていたらしい。私は上司の気持ちがすこしだけ分かるような気がした。ゴルフ場から戻った日の晩。久しぶりに先輩が時間が取れるから会おうか?と連絡が入る。「何度か携帯に電話したんだけど、今日仕事休みじゃなかったっけ?」先輩が私に電話をくれた時間・・それは紛れもない、私が彼氏の腕の中にいたときの時間だった。「・・うん、先輩、私、先輩に嘘つきたくない。 正直に話す。」私は上司の失踪のこと、事務の彼女から相談を受けたこと、やむを得ず彼氏にお願いをしたこと、上司が見つかったこと・・を先輩に電話で話した。すると、先輩が想像していなかった反応をしたのだ。「・・・なんで、俺にまず相談してくれなかった?」先輩の声がすごく怒って聞こえてきたのでびっくりした。「あ・・・」「Hさんが失踪したって話、探しに行くって話、 何で俺に言おうとしないの・・??」私はいつもの優しい先輩だから、正直に訳を話せば許してもらえると思っていた。事務の子に泣きつかれて自分自身パニックにもなっていたし、確かにこのことを先輩に伝えてはいなかった。「あ・・・ごめんなさい・・・」浅はかだった。彼氏の地元だから、というだけで、私は彼氏が今回の適任者だと自分で勝手に決めてしまっていたのだ。事務の子に頼まれたとはいえ、先輩には相談せずに、私は彼に話を持っていってしまったのだ・・・。「ん・・・ちょっと俺に時間くれないかな。」先輩が怒ってる。声が怖い。今まで感じたことの無い緊迫感がビリビリと伝わってくる。「電話もメールもしないで欲しい。」先輩が本当に私を拒否した。私は先輩に拒否されてもおかしくない事をしてしまった。それは先輩にとっては裏切り行為そのものなのかもしれない。翌日、私は仕事帰りに後悔と謝罪を連ねた手紙を先輩の車にはさんできた。しかし、その日の真夜中に雨が降ってきたので、明け方もう一度、先輩の車のところまで行ってみた。私の書いた手紙は雨に打ち付けられ、運転席の下のところにふやけて落ちていた。いつもなら、その時間には手紙を読んでくれて、その内容について語ったりメールしたりしてたのに・・・その手紙を拾うと私はずぶぬれのまま先輩の部屋の明かりを見上げた。自分の浅はかさを痛感せずにはいられなかった。
2007.08.24
私の携帯に知らない番号からのコールがあった。出てみると、それは私の前の職場の事務の女の子だった。彼女は私の部署の上司に当たる男の人と交際をしていたのだが、その上司が突然行方不明になってしまったらしい。何故、彼女が私に電話をかけてきたかというと、どうやらその上司が県内にある、とあるゴルフ場にいるらしい、とそこまでは彼女が調べたのだけれど、そのゴルフ場の場所がよく分からない。というのだ。そのゴルフ場がある地域とは、まさしく私が婚約を破棄した彼氏の住む地域。破談にしたことを知らない彼女はせっぱつまって私に電話してきたのだった。「お願いです、彼氏さんに一緒にゴルフ場の場所まで 行っていただけるよう頼んでいただけませんか?」私の彼氏は、何度も私の家に来ていたこともあって、私の勤めていた営業所の中でも顔が知れていた。もちろん、その上司も事務の子も顔見知りだった。・・多分、先輩はこの辺あたりから私の結婚話を聞いたのだろう。私は断ることができなかった。上司は警察に捜索願も出されていたし、本当に彼女が気の毒だと思ったから。私から彼に連絡を取ることはしていなかった。すれば、また要らぬ期待を持たせてしまうから、かかってくる電話やメールは受けても、自分からはしないようにしていた。けれど、私が連絡をいれてしまうということは、私から彼氏とのつながりを持とうという意思ととられてしまうかもしれない・・・。私が彼に電話を入れ、彼は協力すると約束してくれた。私は事務の子と上司の親を連れて、彼が指定した場所まで2人を連れて行った。私はただそれだけの役目を果たしたら、すぐ帰るつもりだった。約束の場所はゴルフ場の手前のガソリンスタンドの裏手の駐車場。車で乗り入れていくと、見慣れた彼の黒いセリカが止まっていた。「あれ?痩せましたね、彼氏さん」事務の子が私の車の中から、外で待つ彼を見てそうこたえた。私は事務の子には彼と別れ話が出ていることは言ってなかったから、何気なく彼女はそういったのだけれど、私はあえて外の彼と目を合わせないように下を向いていた。彼がこちらに向かって歩いてきたので、事務の子と上司の親は車を降り、3人がゴルフ場のサービスカウンターの方に消えていった。その間、駐車場で私は自分の車にカギをかけて、乗せて来た二人を待った。10分くらいしただろうか、運転席の窓をコンコンと誰かがたたいた。・・・彼氏だ。顔をあげて私がぎょっとしたのは言うまでもない。顔が・・げっそりと肉が落ちていた。腕も肩もひと回りもふた回りも細くなって、頬の部分がこけて顔の輪郭が変わってしまっていた。「!!」「・・開けて?」思わず息をのんでしまった私に彼が話しかける。「・・相手さん、いたわ。俺が呼び止めて連れてきた。 今、3人で話してるから、もう少し時間かかるよ。」「・・・・・。」「俺らも話そう?降りてきてよ。」もう前のように私をなじる勢いは彼にはなかった。私は車のロックを開けて外に出てしまった。「・・痩せたね。」「ん?ああ・・どうだろ10キロ近く落ちたかな・・」私の車にもたれながら、彼は自分の服の腕をまくって見せた。小学校から大学まで野球をしていたヒトだから、どちらかといえばガッチリ系のヒトだったのに、かなりからだの筋肉が落ちてしまっていた。「・・食べてるの?」「うん、食べてるよ。身につかないだけみたい。」ごめん・・といいかけて頭を上げようとしたとき、彼が私を引き寄せて抱きしめてきた。「やめて・・お願いだからやめて。」車が影になっていて、国道やガソリンスタンドからは見えないけれど、ゴルフ場のほうからだと二人は丸見えになってしまっている。懐かしい彼氏の匂いがした。私はその匂いから逃れようともがいたけれど、彼の力の方がずっと勝っていた・・・。
2007.08.23
私の中で彼と結婚する意思はもう完全になくなっていた。ただ、彼のことを突き放せない。ずるいオンナ・・・。彼はまた自分のところに戻ってきてくれるまで待つ、といった。私は結婚はできない、もう会わない、と伝えた。彼は電話やメールだけでもいいからつながりを切らないで欲しいと求めた。『つながりをどんな形であれ切りたくない。』その気持ちが痛いほどわかる。かつて私が先輩に対してずっと抱いていた想い。だからこそ、突き放しきれなかった。タダの言い訳に過ぎないかもしれないけれど。会社の同期の女の子に指摘された。「それって二股じゃんね。」ショックだった。私、何やってるんだろう・・・。もう情けなくて、でもどうすることもできなくて、泣くことしかできなくて。「先輩のこと話して同じ土俵にたたせてあげなよ。」彼女はそういってタバコをふあ~っとふかせた。彼女は、私が会社の入社試験のときからの友人。私が会社を受けた不純な?動機も、そのあとの彼氏との出会いもやり取りも、全部知っている。「・・先輩は今回のことは関係ないの。 巻き込みたくないんだ、こっちのドロドロに。」「もう十分ドロドロだってば。」「うん・・・。」「アナタが踏ん切りつけない限り、彼も先輩も誰も先に 進めないんだよ?」「うん・・・。」彼女は私に対して態度を変えなかった。そのことが私にはとても救いだった。彼と共通の友人からはかなりのバッシングを受けていたからで。その中には私の昔からの幼馴染がいて、幼馴染のご主人と彼が意気投合して仲良くなっていたので、私はその幼馴染からも嫌われてしまった。これも自分勝手を通そうとする報いなのだ。彼は何度も会いたい、と言ってくれたけれど、私はさすがに会ってしまうとまた引き戻されると思い、それだけは断った。こんなブルーな気持ちのままでは先輩にも会うわけにも行かず、どちらにも会わないまま3ヶ月が過ぎた。二人とも、メールだけは続けていたけれど。その間に私は会社を辞めた。このことが原因ではなく、前に足の靭帯を怪我をしたときの保障問題で会社とトラブルになってしまったからだった。そのまま、営業でよく回っていたイタリア料理の店に従業員として雇ってもらうことにした。彼は私より先に会社をやめ、自動車教習所の指導員になった。先輩は変わらず転勤先の営業所でエンジニアの仕事を続けていた。先輩からは「どうなった?」との問いはなかった。先輩は私を信じてくれている。私も先輩を信じている。私の勤務先がかわって仕事の時間帯が大幅にずれ、同じ地元に住んでいながらも、なかなか会う時間が合わず、メールのやりとりをしたり、私が仕事から戻る夜の11時くらいに、先輩の家の前を通るとき、先輩のMR2のワイパーに小さい手紙を差し込んで帰るようにしたりと、ちょっとしたことくらいしか進展はなかったけれど、それでも先輩とは少しづつ距離を縮めていけた。・・・しかし。私の優柔不断さが先輩を怒らせてしまう事件が起きてしまったのだ。
2007.08.22
それから2日ほど彼氏からは何の連絡もなかった。先輩は「俺が出て行って話をする」と言ってくれたけれど、私はそれを断った。自分が勝手にしたことであって、私と彼氏の話の決着に先輩は関係ない。先輩を私の泥沼に巻き込みたくなかった。ただ、先輩には時間がかかると思うから、自分がちゃんと決着をつけるまで待ってて欲しいとお願いした。まだ自分の両親や身内には彼に別れ話を持ち出したことは話せないでいた。もちろん、そんなことが家族に知られれば、私は家族からも非難轟々になるのを分かっていた。まだ、、、自分の中で一人になる勇気がなかった。家の中にも敵を作るほどの根性がなかった。3日目・・。彼氏から電話があった。「もしもし。」「・・・はい。」「俺な、何度も何度も考えたんだけど、やっぱりわかんないわ。 ちゃんと理由を教えてくれよ。」「・・自分が結婚に対して思ってた理想と現実が違ってた・・・の。 私はあなたと結婚するべきじゃない。」「そんな抽象的なことじゃなくて、具体的に言ってくれ。 俺のところに嫁に来るのがイヤなの? それは了承してくれてたんじゃなかった??」「・・ううん、あなたは全然悪くない。悪いのはすべて私。 ひっかきまわしてばかりいるのはみんな私。」「俺が悪くないんだったら、俺のことが嫌いでないんだったら、 もう一度考え直してくれよ。 なあ・・・。」「・・・・・。」3年以上付き合ってきた。まったく情がないわけじゃない。私のことを真剣に想い、大事にしてきてくれた人。私が先輩のことを忘れられる・・と初めて思った人。嫌いじゃない。嫌いになれるわけがない。でも・・・「もう一度やり直そう。」「・・・・・。」これ以上電話を続けていると「うん」と言ってしまいそうになる。情に流されてしまう。「あ、ごめん、今ちょっとキャッチが入った・・。 」咄嗟に嘘をついてしまった。私が、彼氏に嘘をついた。「そうか、また電話する。」人を疑わない心の綺麗な彼氏はそうやって電話を切ってくれた。こんなときにこんなに簡単に嘘をついてしまう私のために。もう最底だ・・これ以上、彼を傷つけていいのかどうか。本当に自分の向かう先が全く見えなくなってきていた。自分が嫌われたくないがためだけに、綺麗な別れ方をしようとしてるだけなんじゃないか、悩んで、悩んで、悩んだ。電話を切って時間が少したった。また彼氏から電話がかかってきた。私はそれを取らなかった。翌日は携帯にも履歴がすべて彼氏からで埋まるほどひっきりなしに呼び出し音が鳴っていた。それでも私は携帯も固定電話も取らなかった。すると今度はメールが大量に入ってきた。私はそれを読まなかった。嫌ってほしい。私のことをめちゃくちゃ嫌ってほしい。情けないけど、自分から切る勇気が本当にないのだ。しばらく鳴っていた電話もメールも、ちょっと間があくようになった。でも自宅の留守番電話に彼の泣き声が入っていた。「・・頼むから、無視するのはやめてくれ・・・」・・・だめだ。こんな声を聞いてしまって、私はそれでほっとけなかった。彼に電話をかけてしまった。私の優柔不断さがこのあともこのずるずるとした状況を長引かせていくことになる・・・。
2007.08.21
私達の結婚話は結納というところまで来ていた。しかし、私が結納に日取りを半年ほど延期したことで、二人の間になにかしら違和感ができていた。あのことが合って以来、私は彼氏の家に行くのを極力避けて、彼が私の家に来ることがほとんどになっていた。仕事が終わって、休暇前の晩、彼氏が家に泊まりにやってくる。車で2時間。同じ県内とはいえ、端と端の地域。車の営業を終えてからやってくる彼は体も疲れきっているに違いない。いつも家の前の駐車場に車を停め、着くと携帯をワン切りする。その合図が鳴ると、私が車のところまで出迎えるのが決まりになっている。その日・・私は車から降りようとする彼氏を引きとめ、助手席側に回って車に乗った。「ごめん・・話ある。」「何?家ではできない話?」「・・・うん。」メガネを外す彼氏。このメガネをかけた横顔が大好きだった。高い鼻も。少し小さな耳も。大好きだったはず・・なのに。「・・・実は。」「うん。」「・・・結婚やめたい・・。」「はぁ!???・・・なんて?もっかい言ってみ?」普段はおとなしい物腰の柔らかい彼氏もさすがに声を荒げた。「・・・ごめんなさい、ごめんで済まされる問題じゃないんだけど、 どうしても結婚に踏み切れない迷いが出たの。」「んなっ、何だよそれ、迷いって!!!」「・・・自分の中の迷い。」「だから結納先延ばししたんだろ? それで半年ゆっくり考えるんじゃなかったのかよ!」「・・・うん・・・」「何がいけないの?オレが悪いの? 何でいまさらここまで来といて結婚やめなくちゃなんないんだよ!! ワケを言ってみな、ワケを!!!」彼氏の剣幕はものすごかった。当たり前だ、いきなり結婚を反古にされてハイそうですか、って人はいない。「オレ、お前のこと本当に好きなんだよ? ちゃんと大事にしてきたのに・・・ 何でなんだよ、意味わかんねぇよ!!! 理由をハッキリ言ってくれなきゃ 納得できるわけないだろう!!」「・・・・・」はーーーっ、と右手を眉間に当てて彼氏がため息をついた。「理由も言えないの?何だよそれ。 オレ、じゃ、何のために今までこうしてこっちに来てたの? 婚約だってお前の言うとおりに待ってたの?」「・・うう。」なじられても何を言われてもしかたがない。すべて私の身勝手なことが引き起こしたことだ。「・・帰るわ、オレ。降りろ。」なすすべもなく私が助手席から降りると、彼氏はものすごい勢いで車を急発進させた。周りが真っ白になるくらい煙を噴かせて、あっという間に彼の車は見えなくなってしまった。本当にこれでいいのだろうか・・・人を傷つけておいて、自分は幸せになれるだろうか・・・自分のエゴのために、私は自分を愛してくれる人を傷つけた。愛するヒトから拒否される痛みを私が一番よく知っているはずなのに。ぽつりその場所に立ったまま、ボーっと空を見ていた。星はとても綺麗だった。綺麗すぎて、自分のことがさらに汚らしく情けなかった。人を傷つけることの怖さと重みを知って、しばらく足が震えてうごけなかったのだ・・・。部屋に戻ると、携帯にメールが入っていた。「オレハワカレバナシヲキキニ2ジカンカケテ イッタンジャナイ。 2ジカンカケテマタカエルキモチガワカルカ」「ナットクデキルマデワカレナイ」もう自分が何をやってるのかわからなくなってきた。真っ暗闇にどん!と突き落とされたような感覚に陥った。
2007.08.20
まず二人で車を押して、高架下のスペースまで移動させた。それから先輩が少し先のレンタカーの店にガソリンを少しわけてもらいに一人で歩いていった。「キミは車の中にいて。カギ掛けといて。」こんなときも先輩は何もあわてず私の心配をしてくれる。しばらくボーっと一人で考え事をしていたけれど、このまま私はどうなってしまうのだろうと思うと、頭の中で整理がまだつきそうになかった。20分ほどして先輩が帰ってきた。どうやらガゾリンは分けてもらえなかったみたい。併設のカラオケのバイトしかいなかったらしい。「ココの先、時間かかるけど、営業所あるでしょ。 多分、会社の裏の社宅に、所長が一人で住んでるから、 会社の車借りてくるよ。」先輩の転勤先の営業所が確かにこの道をまっすぐ行った先にあった。でも歩いていくにはかなりの距離だ。「・・先輩、私も行く。」「寝ててくれたらいいよ、帰ってきたら合図するから。」「さすがに長時間一人でいるのは怖いです。」本当は先輩と離れるのが嫌だった。しかたないな、と先輩は笑って、カバンだけを持って車を施錠した。そして大学の構内を抜けて、二人は歩き始めた。さすがにこの時間帯だと人はだれも歩いていない。信号だけが点滅して車も全く通らない。並木道も、電灯も、横断歩道でさえも、二人だけが占領できたような、不思議な感覚。「先輩、、、」びっくりした。何も言わずに先輩が私の手をとったのだ。まるで、幼稚園のこどものように手をつないで二人で並んで歩いた。何も言葉を交わさず、ゆっくり歩いていく。つないだ指先がじんじんしてきてそこだけ熱をもっているようで。片道30分以上、先輩の勤める営業所が見えてきた時点で、先輩が私の手を離した。「ここで待ってて。すぐ借りてくる。」そう言って先輩が社宅の方に走っていった。私は少し汗ばんでしまった自分の手をハンカチであわてて拭いた。心臓がどくどくいってとまらない勢い。どうしよう・・・。やっぱり、このままあきらめられるのかな・・・。すぐに車のエンジンがかかる音がして、先輩が別の車に乗って戻ってきてくれた。「こ、これ、誰の車??」「所長の車。所長寝てたよ、ドアドンドンってしてたたき起こしちゃった」所長のスポーツカーでとりあえず私達は帰ることにした。先輩のMR2はあとで先輩がレース用のガソリンタンクにガソリンを買って入れるから心配ないと言ってくれた。元々、私がいらぬ電話さえしなかったら、先輩は夜中、こんな目にあわずに済んだのに。本当に振り回して申し訳なかった。車に乗り込むと、先輩がシフトの上で手を開いていた。「はい。」「え?また何してるんですか、先輩。」「ここに右手置いて。」先輩がシフトを指差す。私がシフトの上に自分の右手を乗せると、その上にせんぱいの大きな左手が重ねられた。「行くよ?ちゃんとセカンド入れてくれよ?」「危ないですって!クラッチすれちゃいますよ。」「俺の車じゃないよ、所長のだからヘイキヘイキ」「いや、そーゆーことじゃなくって!!!」最後なのに。なんでこんなに楽しいんだろう。心のそこから楽しいと思える。何時間でも先輩と一緒に居たい。この時間がずっと続いてくれたらいいのに・・・。結局、私の家の前に着くまで、二人の手は重ねられたままだった。「・・着いちゃった。」「うん、そうだな。怒られないか?親に。」「多分、寝てますよ。怒られるって言ってももう大人だし。」「そっか、それならいいんだけど・・。」それでも先輩は私の右手を離そうとしない。5分くらい、ずっと沈黙があったあと先輩が口を開いた。「・・・俺、この手を離しちゃいけないって思ったんだ。」「・・・私も。」「俺が、全部責任持つよ。・・・俺のところに来い。」「いいの・・?」「ああ。」「本当に先輩のところにいってもいい??」「ああ。」私はまた大泣きしてしまった。今度は正真正銘のうれし泣き。まわりまわって、もつれてからまって、切れかけていた私と先輩の糸が今ようやく結ばれたのだ。数日後、私は自分の彼氏に婚約破棄を申し入れた。自分の身勝手さを本当に痛感した。
2007.08.19
二人とも何を話せばいいものやら、会話に詰まる。元々、寡黙な先輩と、その寡黙なところに緊張して話せない私が、二人で何を話せばいいのか。私が切り出したい話はもちろん先輩が避けているのは、先輩からの雰囲気でわかった。先輩は基本車の中では音楽をかけないヒト。音楽ももちろん好きだけど、ガンガンかけるのではなく、それよりも運転席の窓を少し開け、自分の車のエンジン音を静かに聞いている。窓のところに指をかけるのも癖のようだ。でもその日の晩はさすがの沈黙に耐え切れず、先輩が持ってるCDを1枚デッキに入れた。青いイコライザーがうねうねとたなびいている。「昔の話・・しよっか。」「・・はい。」「何か聞きたいことある?」「え・・っとじゃあ、コンクールのこと・・あの日、先輩はどうして私を観に来てくれたんですか?」「・・だって、あの頃、俺はつきあってる、って思ってたから。」・・は?思わず目を見開いてしまった。今、先輩、なんて??「は?・・え??・・なんて??先輩、今、なんて??」「何度も言わせるなよ、だってそっちがつきあってください、 って言ったじゃない。」「言ってませんよ!!絶対、絶対、言ってません。 いつ?私、いつそんなこと言いました??」「・・誕生日のとき・・かな。」「えー、絶対言ってない!!私、つきあってくださいなんて とてもじゃないけど言う勇気なんかなかったですよ。」「言ったよ。俺、返事したもん。」「うそだぁ・・・なんて?」「うんって言っただけ。」私の記憶の中にはそんなやりとりはない。初めは他の誰かとまちがえてるんじゃないかとさえ思った。じゃあ、、、私達は・・というより私は意識のないまま高校生のときお付き合いしていたの?あのもどかしくて顔をあげられなかった通学の朝も私の独り相撲なの?何かイベントがあるごとに先輩が優しくしてくれたのも、それは私が彼女だったから???「・・そんなぁ。」ちゃんと先輩の気持ちをあの当時確かめていたのなら、私がきちんと先輩の目を見て確認していたなら、こんな遠回りせずに、二人は両思いだったのに。「彼女でもないコを自転車の後ろにのせたりしないよ。」言われて見て納得した。今までの先輩の優しさもこれで全部合点がいった。なんてことだ・・・。鈍感なのは先輩じゃなくて私だったの?隣の市内に入っていよいよガソリンの残量がやばくなってきた。「オイオイ・・嘘だろ?」いつもならあいてるはずの24時間のガソリンスタンドが、台風上陸のため、なんと店を早く閉めてしまっていた。「他にどこかあった?」「えっと、あの商工会議所の裏あたりは・・」数件心当たりをまわってみたけれど、なぜかその日に限ってどこも早く店じまいをしていた。時計の時間はもう真夜中の2時を回っていて、気持ちは焦るばかり。何度かクラッチが抜けて、エンジンを掛けなおすことを繰り返し、そして、大学のある高台の下の道にさしかかった時、先輩の車はとうとう道の真ん中で止まってしまったのだ・・。「プッ。」もう二人で顔を見合わせて噴出した。大笑いした。なんなの、この結末は。私達の最後のドライブはまさかまさかのガス欠。「あはは、やってらんねー」「この展開は予想できなかったですよ、あはは」初めて、二人でこの夜大笑いした。
2007.08.18
私はポーチの中に財布とハンドタオルを詰め込むと、そのまま部屋の階段を駆け下りて玄関に出た。家族はもうみんな眠りについていたので、家のカギだけそっと施錠すると、そのまま家を飛び出した。・・顔はまだぐしゃぐしゃのままだ。まだ足も完全に回復したわけではないので、そんなに強くは走れない。それでも気持ちだけが先を急いでしまう。いつもの待ち合わせの浜辺。外は台風が近づいてきていて、生ぬるい風が顔に吹き付けてくる。自分が立つ場所から見える海は、真っ暗な中にも異様なほど白い波が防波堤にぶつかってしぶきを上げていた。しばらくすると、聞き覚えのある車のエンジンの音が、道の先のトンネルのほうから響いてくるのが分かった。・・先輩だ。カーブを曲がってMR2のリトラがこっちを大きく照らして近づいてきた。何度も見覚えのあるこの光景。車が私の前に止まって、先輩がルームランプを点けた。「乗って。」先輩が中から助手席のドアを開けてくれた。私は黙ってうなずいてそのドアから中に座り込む。車がまっすぐ動き出した。「勘違いしちゃいけないよ。俺はキミを説得しに出てきただけだから。」運転をしながら先輩が先に話を切り出した。「でも!」「駄目だって。相手の人の気持ち考えてみなよ。」「・・でも。」「・・だろ?そんな無理を言っちゃいけない。」「・・・でも。」車が人目につかない道路脇のスペースに止まった。「・・台風だけどさ、すこしだけドライブでもすっかな。」「・・・・・。」「今晩だけ。今晩だけなら相手の人も許してくれるだろ。」先輩はやっぱり私といまさらイチから始める気なんてない・・そう思うとまた涙がこみ上げてきそうになった。「どこ行きたい?・・っていっても、ゴメン、 今日ガソリン切れ掛かってるからそう遠くにはいけない。」「・・先輩の行きたいところでいいです。」「じゃ、とりあえず、車出すよ。」先輩はそう言って、ハンドルをまた国道に戻した。「どっか24時間開いてるガスステないかな・・」「・・えっと、R●●線沿いに昭和シェルかモービルか あったはずですけど・・」「じゃあ、そこまではガゾリンも持つだろうな、行こうか。」R●●線のある市はちょうど私達の住む町から1時間かかる。山道をずっと走っていく、少し長めのドライブコース。大好きな先輩との最後のドライブなんだ、じめじめせずに笑っていよう、いい思い出にしなくちゃ。私はそう自分に言い聞かせて、泣くのをやめて顔を上げた。・・・そのあと、本当に忘れられない思い出ができてしまったのだけれど。
2007.08.17
ばかみたいに。子供みたいに。私は声をあげておんおんと泣いた。今まで溜めていた分、流しきらなければいけないかのように、こんな泣き方をしたことがなかったくらい、ばかみたいに泣いた。後悔の無いように。先輩にありがとう、という気持ちを伝えて、私のことをバッサリと切ってもらえたら、私は先輩のことをあきらめざるを得なくして、そのまま望まれる場所に落ち着こうと思ってた。やっと、やっと先輩の本当の気持ちが聞けたというのに。先輩が私のことを好きだと言ってくれたのに。どうして、それが先輩との最後の電話なんだろう。約束された幸せが別のそこにあったとしても、私が心の奥から欲する愛情がやっと照らし出された、ずっとずっと追い求めていた、私の大事な大事な想い人。私を見ていてくれたその人が完全に遠のいていく。なんで・・なんで・・私達はこう空回りしていくんだろう。先輩は私の泣き声をずっと黙ったまま聞いていた・・。かなりの時間、私は泣いたままだった。家族にも聞こえていただろうけれど、誰も部屋には入ってこなかった。それでも感情の波がひとつ山を越えたとき、先輩が口を開いた。「・・・泣くなよ。」「・・・だって。・・・だって。」「タイミングが悪かったんだな、俺達。」今、お互いの気持ちを確認できたのに、もう、先輩の気持ちを知ってしまったのに、私は他の人のところになんて行けやしない。もし、そのまま行ったとしても、もう幸せにはなれない。「・・先輩。」「・・ん?」「会いたいよ・・。」「・・止めとこう。会わないほうがいい。」私はまた子供のように駄々をこねた。「・・どうして。このままじゃ私、おかしくなっちゃうよ・・」「会ってももうどうにもならないよ。」「・・そんな・・。」このまま終わりたくはなかった。たとえ、皆から非難される結果が待っていようとも。自分勝手な生き方だと思われてもいい。私は先輩のことが好きなんだ。ただそれだけ。そこにあるのはそれだけ。会いたい、会わない・・と二人の中で押し問答が続いた。先輩は頑なに私と会うことを拒否した。それが、私の幸せを思いやってくれてることだと痛いほど分かるのに、私は先輩を困らせていた。「・・・私、やめる。」「何言ってんだよ、馬鹿言っちゃいけないよ。」「やだ、もうこんな気持ちになってしまったのに、 いまさら他の人との結婚なんてできないよ!! 私は今でも先輩が好き・・」とうとう、叫んでしまった。「・・わかった、会うよ。出て来い。」先輩が観念したような声で私に言った。もうその時点で夜の11時を回っていた・・・。
2007.08.16
私は受話器を握ったまま泣きじゃくっていた。先輩を怒らせてしまった?・・・もうワケわかんない。いつだって物静かな先輩が、声を荒げることなんてなかったから、もう駄々っ子のように泣くしかなかった。「・・じゃ、最後だから。」「・・うっぐ。はい・・っぐ・・。」「本当は言わない方がいいと思ってた。 俺はマキのことが好きだったよ。 高校卒業最後の日。あの、中学校の玄関で。 俺はマキと離れるのが嫌だった。 あの時2年、2年待っててくれ、って言ったら、多分マキなら俺のこと 待っててくれたと思う。 でも、2年ものあいだ、俺がマキを縛り付けることで、マキのいろんな出会いや 可能性を奪ってしまいたくなかった。 マキとはいつかまた、この先どこかで絶対に会える・・って思ってたし、、、 覚えてる?俺ね、俺なんかのどこがいいの?って聞いたよね。 『俺、キミが思ってるようなイイ奴じゃないから』って言ったこと。 俺、あのまま一緒にいたら、抱きしめてたかもしれない。 自分の理性が壊れそうなのをずっと我慢してた。 だから・・そのまま・・・マキをあそこに置き去りにした。 ごめん、あのときは本当に傷つけてごめん・・。」淡々と、でも真剣に先輩が自分の胸の内を明かしてくれる・・。「でも、やっぱりマキとは会えた。 まさか、会社に入ってくるとは思わなかったけど・・。びっくりしたよ。 やっぱり、俺はマキが好きだった。 でも自分に自信が持てなかったんだ・・。 俺がマキを幸せにできる男かどうか。 俺が本当に一人前になるまで、 自分がちゃんと胸を張って言えるように、 俺はまず会社の中の資格・・TOYOTAの1級整備士と国家検査員、 一番上の資格を全部取ろうと決めた。 そして、資格を取って、まだマキが昔と同じ気持ちのままでいてくれたのなら、 俺はお前を迎えに行こうと思ってた。 ・・知ってるだろ、会社の広報で。俺、社内最短で国家検査員1発合格したの。」もう私の目からは奥から奥から涙が止まらない。「でも、彼氏がいると他の会社の女の子から聞いて・・ 結婚ももう近々だとは聞いてて・・ 後悔したよ。1歩遅かったと思った。 悔しかったよ。 俺、本当にお前のことが好きだったから・・・。」「・・せ・・・んぱいぃぃ・・・」 「最後に俺の気持ち伝えられてよかった。これで俺も諦められるよ。 ・・うん、俺も頑張って早く彼女見つけないとな。 ・・幸せになれよ。」「・・・せんぱい、・・私のこと・・もう過去形なの・・??」もう私の頭の中には何もなかった。ただあるのは先輩のことだけ。「好きだよ。今でも好きさ。」何かが私の中ではじけた。パン!とガラスが割れたような、しゃぼん玉がはじけたような。「・・・幸せにしてくれるのは先輩じゃなきゃイヤだよ・・!!」私はそう叫んでしまっていた。
2007.08.15
その日のことは今でも忘れない。台風がちょうどこちらに向かっている時で、外が風が出てきて山の木がざわざわとしていた。夜9時過ぎ・・。私は先輩の部屋の電話だけを鳴らした。前に先輩が教えてくれた「じきじきコール」。特殊な掛け方をすると、先輩の家の親機・子機のなかから、先輩の部屋の子機だけを鳴らすことができる。その掛け方を知っているのは先輩のいちばんの友人と私だけ。友人は今は携帯に直接電話をしてるはずだから、その子機が鳴るということが、誰からの電話であるかは、受話器を上げる前から先輩にはわかっているはず。私はこの電話にかけた。先輩が自分の部屋にいることを信じて。いつもより少し長くコールがして、ガチャッと受話器が上がった。「・・もしもし。」「先輩、私・・マキです。・・今晩は。」「・・うん。こんばんは。」私のテンションが下がる。どんどん下がっていく。言葉が喉の奥からでてこないのだ。先輩も何か感づいたのか、何も言おうとしない。重く静かな沈黙がしばらくあった。「あの、今日はちゃんと先輩に大事なお話があります。申し訳ないけれど、少しの時間、お付き合い願えますか?」「・・何?外に出て行こうか?」「・・いえ、顔を見て話ができそうにないので電話にしました。電話でいいので話を聞いてください。」そして私はついに先輩にこう言った。「先輩、実は私、・・・結婚が決まったんです。 11月に結納することになりました。 今まで、先輩のことをずっと追い掛け回して、迷惑をかけてばかりですみませんでした・・・。いろいろありましたけど、私、本当に先輩のことが大好きでした。自分の今までを振り返ってきて、先輩のことを考えない日はありませんでした。でも、私のことを好きだといってくれる相手ができて、私もようやく先輩のことをあきらめられる、と思ったんです。今日は、最後に、今まで先輩が私のことをどう思っていたかどうかをお聞きしたいんです。しつこかった・・でもいい、なんとも思ってなかった・・でもいい、何でも構いません。先輩の本当の気持ちを私に教えてください。それを聞いたら、完全に先輩のこと吹っ切って結婚します。」本当の本心だった。今まで、中学のときからずっと、先輩だけを想い続けてきた。そんな私を先輩はどう思っていたのか。聞きたくても聞けるわけもなく、ずっと片思いしてきたのだから。最後に、最後に先輩の本心が知りたかった。「ふぅ・・・・」先輩がひとつため息をついた。面倒なオンナだな・・と思ったに違いない。長い、大きなため息。「結婚おめでとう。俺にはそれだけしか言えないよ。」先輩がそう言った。「・・先輩、お願いです。どんなこといわれても傷つきませんから。こっぴどく先輩に振られたいの・・!!」最後の方は声じゃなく嗚咽に近かった。頭の後ろのほうからぐあああああっとおしよせてきて、涙がボロボロとあふれ出た。いつも取り乱さないように我慢して我慢してきた先輩との節目。でも決着をつける最後だと思うと卑怯だけど涙が止まらなくて。それでも先輩は何もこたえようとしなかった。「幸せになりなよ」とだけ言っただけ・・・。泣きじゃくる私の声だけが電話を通じて先輩のほうに聞こえていた。「・・・あー!!!もう!!!」・・・いきなり先輩が声を荒げた。
2007.08.11
彼氏は休みのごと、かいがいしく私の世話を焼いてくれた。私の本当の心の中など知りもしないで。彼にまるで傷をなめてもらって治癒していくかのように足は回復していった。しかし、心の中のもやもやがぬぐえないまま時間だけが過ぎる。右足のくるぶしに4センチほどの傷跡を残して、其の年の夏が終わった。私は職場に復帰した。もちろん、もうそこに先輩の姿はなかった。事務の女の子が私と先輩の関係を知ってか知らないでか、「Esprit*さん居ない間にね、※※エンジニア、先月、移動になったんだよ。」そう教えてくれた。「そうなんだ、通勤とか遠くなるから大変そうだよね?」私はそう簡単に受け流しておいた。会社の中では同僚、ただそれだけだから。先輩の車の駐車場からは、もうネームプレートが外されていた。・・・もう、いないんだな。寂しかった。ぽっかりと抜け落ちた状態のまま仕事を再開した。相変わらず彼氏の親からは、延期した結納の日取りの決定を催促する電話が私の携帯にガンガンかかってきていた。精神的にもちょっとまいってしまうほどの回数で、彼に仕事中は電話には出られないので、すみませんと謝っておいて?とお願いして、彼の自宅からの電話を極力取らないようにした。すると、彼の父親が私の家までたずねてきて、私の両親と勝手に日取りを決めてしまったのだった。「年が年だから、早めに孫を作ってもらわないと。」秋の季節で私は24歳になる。彼と同い年の私だから、早く子供を作らないといけない・・というようなニュアンスの言葉を彼の父親に耳打ちされ、背中に悪寒が走った。やっぱり・・どうしてもこの結婚にしり込みをしてしまう。彼の親だけが問題ではなくて。彼とだったら幸せになれる、と思っていたことが思い込もうとしているだけの自分に気がついた。まわりから囃し立てられるとどんどん自分の気持ちがクールダウンしていくような感覚になる。最後。最後に先輩にもう一度だけ、もう一度だけ話がしたい。いつも先輩には自分の気持ちを伝えるだけだった。本当にしつこいオンナと思われてるかもしれない。でも先輩にこっぴどく振られたら諦めがつく。自分のもやもやも晴れると思う。夏の最後の日。「最後の電話」をかけて私と先輩に決着をつけよう。いつまでたってもあきらめられない私に引導を渡してもらうために私は先輩の家に電話をした。携帯でなく、家に。
2007.08.10
私が怪我で自宅治療をしている間に先輩の転勤話が決まった。先輩はちょうどそのころ国家検査員の資格を取っていた。車検対応に最低3人は検査員が各営業所に必要になる。たまたま隣市の営業所の検査員が他の新営業所に移動になって、先輩がその代わりにひっぱられたとのことで、とりあえず3年。3年経ったら、今の営業所に戻ってくるということらしいけれど、その期間の間に他のエンジニアが国家検査員資格を取らなければ、転勤期間は延長される、というものだった。「もう、しばらくは顔会うこともないな・・。」「え、もう全くこっちには来ないんですか?」「ん、仕事の帰りに何か運んできたりとかするかもしれないけど、出勤時間も違ってくるし、帰りも時間はずれるし・・・。社内運動会とかだったら会うかもな。」先輩は淡々と話してくれていたけれど、私はもう言葉が出てこなかった。先輩と電話を切った後、携帯を握りしめたまま、ずっと考えていた。まただ・・。私が先輩のことを想うと、先輩は離れていってしまう。毎日、目で追っていられた私だけの幸せな時間。高校の通学のときと同じ、見ているだけで幸せだったあの時間。やっと少しだけでも存在を分かってもらえるようになると、先輩は私の目の前から消えてしまう・・。いつも目で追うことさえも許されなくなってしまう・・・。「おーい、どうだ?調子は。」彼が休日の前夜は家に泊まりに来てくれていた。休みの日には松葉杖の私を連れてドライブに誘ってくれた。私のことだけを一生懸命見てくれる彼氏。愛おしい人。愛おしいはずなのに・・・やさしくされればされるほど、なぜか彼氏への愛を意識しすぎてその愛情がホンモノなのかツクリモノなのか自分でも本当に分からなくなっていた。私は彼と幸せにならなければいけないんだ、結婚して幸せな家庭を築くんだ、幸せに・・幸せに・・・考えれば考えるほど、心の中で何か違うものを求めている。確約された幸せより勝る私の中の秘めた想い・・・。職場復帰と延期した結納の日取りがどんどん迫ってくる。もう結納を先延ばしにすることは許されないだろう。本当にこれでいい・・??本当にこれは私が望んでいる未来・・??2時間かけて帰っていくセリカのテールランプに手を振りながら、私の目の先にはあの待ち合わせをした海辺の堤防が沈んでいく夕日に真っ赤に色を染められて、綺麗だけど物悲しく思えてならなかった。
2007.08.07
私は結納の日取りを延期することを彼に申し出た。彼は「なぜ?」を繰り返した。私は自分の気持ちの整理がつかないから、としか言えなくて、いろいろな面で準備期間が必要だ、と彼を説得して半年ほど時間の猶予をもらうことで話が落ち着いた。親はマリッジブルーだろうと、軽く笑って承諾してくれた。彼の親は足踏み状態になるのを恐れて、早くしたほうがいいとせっついてきたのだけれど、私の頑なな拒否反応に有無をいわざるを得なかった。その間、私は自分の気持ちがわからなくなってきてしまっていた。彼氏と結婚するということ。彼と一緒になれば幸せな日々が確約されている。彼は私を心から愛してくれている。それで万事うまくいくはず、と考えていた。・・万事うまくいく?何から逃げるの?彼の父親から??仕事から??実家のしがらみから??・・先輩から??結局、私の考えるところはいつもここからがスタートになる。私の中の先輩を消し去らない限り、私はいつまでたってもあの中学校の玄関に置き去りにされた高校2年生のままなのだ。ちょうどその頃、私は職場で怪我をした。ショールームから看板の人形を外へ運び出そうとして、2メートルほどの高さのところからパンプスで足を滑らせて、道路に足から転落したのだった。その日一日は痛みをこらえて仕事を続けたけれど、翌日には右足のくるぶしが真紫に腫れ上がり、診察に行った病院で靭帯亀裂と診断され、そのまま手術。全治2ヵ月とされた。自宅療養で家で休んでいたときのこと。見慣れない携帯番号からの電話が鳴った。「・・はい、○○です。」この頃はまだ携帯を持っている人自体が少なかったから、携帯の犯罪なんてなかったし、安易に知らない番号でも取ることは普通だった。「あ、もしもし。俺。※※です。」・・その声は紛れもなく先輩の声だった。「は、はいっ?」会社の連絡網で社員の携帯番号はすべてメモリ登録してあった。先輩の番号も入ってる。だから仮に電話がかかってきても名前は出るはずなのに、画面に先輩の名前は表示されなかった。「・・え?先輩??この携帯番号って・・」「あ、会社用とプライベートと二つあるからさ。 会社に自分の番号知らせるの嫌だったから。」その当時、携帯の権利加入が5万くらいしてた時だから、2台持ってる人なんて多分いなかったと思う。私はちょっと驚いてしまった。「ここ3日くらい見てないからさ、何かあった?」先輩が私が出社していないのを心配して電話してくれたのだった。「はい、外の看板を出そうとして・・」私が事の流れを説明すると先輩はそうか、大変だったな、とやさしく声をかけてくれた。私が怪我をして松葉杖のところを先輩は工場の中にいて見てなかったようだった。「・・そうか、2ヶ月か。」先輩の言葉が何かひっかかった。「・・何かあるんですか?先輩。」「うん・・、多分、キミが復帰する頃には俺、営業所にいないと思う・・。 隣市の営業所に転勤が決まった。」て・・ん・・・き・・ん・・・目の前が真っ暗になった。
2007.08.07
彼氏がいるのに気になる人がいる生活。何度同じことを繰り返してもどうしても惹かれてしまう想い人。遠距離の彼氏と会っているときは彼氏のことを好きなんだと思い、普段の生活に戻ると、職場で目で追ってしまう先輩への気持ちがどうしても捨てきれない。自分が最低だと思った。結局、先輩が忘れられないくせにひとりにもなりたくないんだ。先輩に受け止めてもらえない想い。誰にもいえない想い。そしてまた彼氏のことも嫌いじゃない、切る勇気もない。このまま彼氏と結婚してしまえば・・もう先輩のこともどうにもならなくなるのでは・・このまま流れにまかせてしまえば・・「愛するより愛されて」この言葉に逃げようとした。私は彼氏を愛している。そう思うことで先輩から離れる、ただそれだけを考えた。・・ジンクスは続いていた。私が結婚を意識した相手には、何かしら障害が伴うのだ。前の彼氏のときは、彼の兄がバイクで事故をした。彼は実家に戻り、会う時間が減り、最終的には別れた。私が結婚しようと思った彼氏。デキのいい弟がいて、彼氏の親は兄より弟に期待していたから長男だけどウチに婿養子に来てくれるところで二人で話し合った。けれど、話がまとまってすぐ、まだ20歳にもなってないその弟が事故で亡くなった。弟のお葬式で私は初めて相手の親に紹介された。身内の不幸で相手の家族に初対面、これがなぜかジンクスとなる。期待の弟が亡くなり、残された兄を婿養子にやるわけにはいかないと、婿養子の話は撤回され、嫁にこなければ結婚は反対されることになってしまった。彼氏の親は弟のいない寂しさを私を家族に迎え入れることで埋めようとする。特に彼氏の父親の執着はひどかった。会社に偽名を使って電話をかけてきて、携帯番号を聞き出した。彼氏の家に行くとベッタリとどこでもついてこられた。母親にも内緒、とAVのコレクションを私に見せてきたこともあった。彼が転職して休みが合わなくなった。私が休みの日は彼が職場から戻る頃にあわせて家に伺うパターンになった。そんなある日。部屋で彼氏を待っていると、いきなりメジャーをもった父親があらわれて、「パジャマを買ってあげるからウエストをはからせて」といって家中追い掛け回され、必死で対抗したけれど・・廊下で押し倒された。私の体に馬乗りになった彼の父親。私の腰に父親の手があたるかあたらないかのところで、彼氏の祖母が外出先から帰ってきた。なんとかうまく彼氏の祖母の部屋に逃げ込んで逃れたものの、怖くて悲しくて汚らわしいとさえ思った。「結婚相手の父親に押し倒されました。」こんなことを彼氏や自分の親にも言えるわけがない。一生誰にも言わずに私の中で墓場まで持っていこうと思った。私は彼氏と結婚するのだから。幸せになるのだから。しかし、それからというもの、彼氏の家に行くのが怖くなり、徐々に彼の家に行く足が遠ざかる。遠ざかれば遠ざかるほど、彼氏の親は強引に結婚話を進めていく。親同士がとうとう会うことになり、結納の日が決まってしまった。私の父が友人の警察の人に彼氏のことを頼んで調べた。そんな勝手なことどうしてするのか憤慨したけれど、そこでまた新たな事実が判明する。彼氏の父には前科があった。「婦女暴行」。彼氏も彼氏の母親も知らないであろう事実。私は心臓が止まりそうになった。彼氏はなんにも悪くない。彼と結婚したらきっと二人は幸せに暮らしていけるはず。なのに。私は結婚に踏み出せない。「もう少し考えたい・・・」こうして結納が延期された。
2007.07.07
結局私は自分で車を一台買うことにした。運転も未熟でまだまだ危なっかしいので親からは反対されたけれど、通勤に親を送っていくことで今回のような焦りが出て事故を起こしたので、どうしても親とは別々に通勤したかった。買った車はAE111。このときばかりは、MT車の免許を取っておいてよかったと思った。先輩と同じマニュアルミッションに乗りたかった。納車の日。自分の車が会社の工場の中にやってきて、エンジニアが最終チェックを済ませてくれていた。私は自分の車の中をのぞき込んでみた。新車のいいにおい。自分で初めて買った自分の車。嬉しくて自分の車のキーを手にとって見た。そこには小さなライト内臓のキーホルダーがついていた。「あれ・・こんなの、普段の納車のときは付いてないのにな・・」自分がお客様に車を購入してもらって、もちろん納車準備も納車も自分で全部やるのだけれど、こんなノベルティーなんて見たことがない。「?」ま、いっか。何かのおまけなんだろうな・・。それくらいにしか思ってなかった。しばらくして、珍しく先輩と話ができる時間があった。「スカッフプレートなんて・・変なオプションつけるのな?」いきなり先輩が話しかけてくれたので、私はびっくりしてしまった。「え?何で知ってるんですか・・。」「だって、取り付けたの俺。」先輩は少し上目遣いに得意げな顔をした。また引き寄せられてしまいそうな、屈託のない笑顔。ドキドキするのをばれないようにするのがやっと。「一応、俺が付けたんで、1ミリ単位でもずれないように慎重につけておきました!っと^^」「は?はは・・」「なんだかずれてて、コレつけたの誰ですか?って言われて俺だったらヤじゃない??」「はぁ・・・」先輩は普通に話してくれてるけど・・。私達はただの同僚として他愛もない話をしてるだけなんだ・・。そう、そこにはもう何もしがらみもない。ただの・・ただの・・同僚。先輩はそうやって、ふっきれ、って言ってくれてるのかもしれない。「・・でさ、キー見た?」「!!・・あ、あのキーホルダー!!」「ま、俺の新車祝いってとこかな~?あれで夜とかキーの穴が見えない時、照らすといいよ。しょーもないもんだけど、プレゼント。」先輩から、先輩からキーホルダーをもらった!!嬉しくて大声出してしまいそうだった。「ありがとうございます。大事にします。」「もう。危ない運転するなよ。じゃあな。」小さなねじまき時計・・お守り・・シャープペンとボールペンのセット・・キーホルダー・・先輩からもらったものはすべて私の大切なもの。なにひとつ、私から切り離せない。社屋の中に入っていく先輩の後姿を見ながら、やっぱりこころのどこかで、つながっていたいという気持ちがまだくすぶり続けていた。
2007.05.25
「おいおい、体は大丈夫か?」先輩が事故車の下を覗き込んだ。ガードレールのポールが見事に車の下まで入り込んでいる。素人目から見たって動きそうにない。「あー、足回りまでいっちゃってるな。仕方ないな。」先輩が車の中を開けて、私のカバンを持ち出してきた。エンジンがかかりっぱなしの車から、エンジンを停め、カギを抜いてカバンと一緒に私に渡した。「先の民家に一言断っとこう。何かあるといけないから。俺の車に乗って。会社に着いたらすぐ積載車で拾いに来てあげるからさ。」そう言ってMR2の助手席のドアを開けた。まさかここで、先輩の車に乗ることになるなんて。「ほら、さっさと乗る!泣いてないで。」「・・す、すみません・・」民家のおじさんに事故の報告と車をすぐに引き取りに来ることを告げ、会社まであと20分ほどの道程を先輩の車で行くことになった。その間、先輩と私はほとんど会話をしなかった。私はグスグスと泣いてばかりだったし、先輩も何も聞いてはこなかったから。駐車場に着くと、同じように出勤してきた他の社員の人たちが目を丸くしてこっちを見ていた。無理もない。何も接点がない(ように振舞っている)二人が1台の車で出勤してきたのだから。「何?Esprit*さんとNさんとそーゆー仲だったの???」「馬鹿か、何言ってんだよ。この子来る途中で事故ってたの。 積載のカギって工場の中だっけ?」先輩の1年下のエンジニアがからかってきたのを先輩が軽く流して、社員駐車場の裏から、工場の中へ消えていった。しばらくすると工場の奥に停めてある、車を運ぶ大きな積載車のエンジンがかかる音がした。私はその音を聴きながら、事務所の方に向かって他の女の子と歩き始めていると、クラクションが2度、プップーと鳴って、積載車に乗った先輩が私を手招きした。「あ、車のカギ貸して。で、ちゃんと所長に報告しなよ?」「・・はい、ありがとうございました。先輩。」「気にすんな、これも仕事だから。俺のタイムカードだけ打っといて。」先輩はそう言って私から事故車のカギを預かると、大きなトラックに乗り込んで会社を出て行ってしまった。やっぱり、先輩のこういうところっていいな。どさくさに紛れて、普段なら会社ではNさん・・と先輩の苗字を言うのに、先輩、と呼んでしまっていた。何気ない先輩の優しさとてきぱきと作業をこなす姿に、感謝の気持ちでいっぱいになってしまったのだった。
2007.03.08
なぜ先輩がこんな意味のわからない行動に出たのか、家に戻ってもさっぱり訳が分からなかった。今までのことを謝る、そう先輩は私に言った。なぜ、謝る必要があるの?謝ってそれでそこから一体何があるというの?私と先輩の中にはもう「同僚」という立場しか残されていない。ただの同僚にそれ以上の関係はないというのに、その「謝る」行為自体に何の意味があるのか、全く私には理解できなかった。そしてまたそれ以上何が起こるわけでもなく、普段と変わらない日常が始まった。私は彼と休みの日には必ず会うようにして、時間を埋めていった。先輩とは特に会社でも言葉を交わすこともなく、先輩がいる工場と私のデスクがある事務所でそれぞれの業務を果たすだけだった。私は父親の車で、父を先に職場に送ったあと、自分の職場にそのまま出勤していた。時間帯がほとんど一緒であれば、大体前後を走る車の顔ぶれも似通ってきている。もちろん、その中には同じ会社に出勤する先輩のMR2も含まれる。大抵先輩のほうが数分早く会社に着いていたけれど、ほとんど社員駐車場で鉢合わせることが多かった。そんなある日のこと。小雨がパラパラと降ってきていて、父の職場に着いたのが予定より遅れたので、私は遅刻しそうになり、焦っていた。海岸沿いの道はくねくねと細かいカーブがいくつも続いている。「あッ・・」カーブ注意と大きく書かれたいつもの大きなカーブ。普段ならなんともない道路も、焦りでスピードが増していた。気づいた時には路面にタイヤの舵をとられ、私の車はふらふらと蛇行を初めた。怖くてキュッとブレーキを踏んだとたん、景色がぐるぐるぐるっと左に流れて、車は360度回転してカーブの先のガードレールにぐしゃりと激突。時間はまさに通勤ラッシュの時間帯。車は前のボンネットが大破して大きくくの字に押し曲がっていて、通る車がスピードを落としてはもの珍しそうに覗き込んで通り過ぎていく。「・・しまった・・やっちゃった。」車からとりあえず降りて、前の様子を見て愕然とした。父に怒られるのもある。この時期はまだ携帯なんて持ち合わせていないから、数キロ先の公衆電話まで歩くしかない。とりあえず、三角の事故標識を出そうと後ろのトランクを開けたとき、声がした。「何やってんだよ。」振り返ると、窓を開けた車から先輩が体を乗り出していた。少し呆れた、少し怒った、少し心配してくれた先輩の声。今日は私が先を走ってたのか・・。先輩がMR2を事故車の横に止め、降りてきてくれた。先輩の顔を見た途端、涙が出そうになった。
2007.03.07
約束の時間。浜辺に向かうゆるやかな下り坂の途中で先輩は堤防に頬杖をついていた。その姿が目に入った途端、また胸の奥がチリチリと痛み出した。何度こんなことを繰り返すのだろう。私をまた好きにさせておいて、また柔らかい暖かい眼差しで私を拒絶するの。私は自分で決めたはず。今度は何を言われても私の中で先輩を切らなければ。そう何度も繰り返しても、私はまた先輩の魔力に惹きつけられてしまう。傷つきたくないのに。傷つかなければ会えない人。「ごめんな。来てもらってごめん。」やっぱり先輩の声は心地いい。特別声のトーンがいいわけでもない。言葉じりが優しく響く。柔らかければ柔らかいほど私の心はまたじわりと締め付けられる。「あの・・話って。わざわざ電話くれるほどの・・?」何を言われるのかわからない恐怖。もう分かりきったことをさらに肯定されることほど、悲しいことはない。肩に力が入って、先輩の顎の部分までしか顔を上げることができなくて。「・・これまでのこと、謝ろうと思って。」先輩の口からは私がいろいろ考えあぐねていた、どの場面とも違う、想定していなかった言葉が出た。「・・は?」先輩が私に謝る?何を?傷つけたこと?気持ちを受け入れてもらえなかったこと?気持ちに気づかなかったこと?好きにさせるようなことをしたこと?出会ってしまったこと?何一つ先輩は悪いことなんてしていない。私がひとりで勝手に出会い、見つめ、好きになり、自分で勝手に走り、思いつめ、逃げた。ただそれだけ。だって私は先輩に好きだということは伝えても、つきあってください、とは言ってないのだから。何を先輩が謝らなければいけないのか、そんな理由は何一つない。「・・それだけですか?」「うん、・・それだけ。」先輩の喉元から鎖骨にかけてスッと伸びた曲線が綺麗だった。私の視線はその辺までが精一杯。その視線に気づいたのか先輩が左手で襟元を隠した。「・・や、やだなぁ先輩。何言ってるんですか?先輩が謝ることなんて何もないでしょ?もしかして、気にしてくれたんですか?大丈夫です、私、彼氏できたんです。今、幸せなんです。」ここでやっと顔を上げることができた。すると先輩がふっと顔をそらした。いつもなら、私が視線をそらしてばかりだったのに、顔をあげるといつも私を見ていてくれた先輩がはじめて先輩が私を見ようとしなかった。「・・よかった、また昔のマフラーか何か突っ返されるのかと思った。」この場を早く立ち去りたい。長く同じ時を過ごせば過ごすほど私はこの人から離れられなくなる。それを否定するためにまた何を言ってしまうかわからない。・・私は必死に先輩との間合いをとった。「まさか。でもさすがに、もう持ってないよ。」先輩もこう答えた。おかしな言葉のやり取りだけど、私達2人には十分な時間だった。これですべてが終わる。私の想いも、先輩の罪悪感も。「じゃ、帰ります。」そういって私は先輩の横顔に礼をして家まで駆け足で帰った。振り向きもしなかった。先輩の声も聞こえなかった。あの日と同じような月がとても綺麗な晩だった。
2007.03.06
ずっと放置状態ですみませんでした。ここから話が極端になるため、どうしてもPCに向かう勇気が出ませんでした。本当はちゃんと最後まで書くつもりだったのですが、途中でやめてしまうことをお許しください。この後、彼との婚約、彼の父親のストーカー行為、そして婚約破棄。私と先輩の恋の成就。そして最愛の先輩の死。先輩は26の若さでこの世を去りました。私が先輩にプロポーズされて2週間後のことでした。そこから私が自分の意識を取り戻すのに3年かかりました。私が後を追おうとしたとき、母が私からナイフを取り上げ、「もう彼はあなたひとりのものよ。誰にも取られることはない。だから、安心しなさい。」そう言って母自身も大泣きしながら私を抱きしめてくれました。私はなぜか心がすーっと落ち着いていったのを覚えています。今でも先輩のことが大好きです。本当は、先輩がそんなに私にとって大切な人だったか、こんな人が生きてたことを何かに残したかったそれだけの思いで書き始めたブログでした。でも、話が進むにつれ、最終的に行き着く先を果たして私は残すことが出来るだろうか、考えると手が止まってしまいました。先輩を失ったときのあの恐怖。私はどうしても今もなお拭い去ることができないのです。中途半端なまま、閉鎖することをお許しください。リンクしていただいた皆様にはお礼の言いようがありません。申し訳ございません。短い間でしたが、ありがとうございました。~Esprit*~
2006.01.23
毎週火曜は彼とのデート最近黒のセリカに車を替えた彼が私の家の前まで車で迎えにやってくる毎週火曜に同じところに駐車するスポーツカーその車に私が乗り込んでいく姿の見られてるから田舎の近所に噂が広まらないはずはなかった親に「一度、家にもきてもらいなさい。」と言われたけれどまだ紹介するとかそんな大げさなものでもないと思いあやふやなままにしてあった二人でお揃いの携帯を買ったまだ携帯が一般の人にはあまり普及していなかった当時もちろんメールなんてまだまだ先のお話これで四六時中連絡を取っていたので携帯代だけで5~6万かかったでも寂しい思いをさせないために彼は毎晩電話をかけてくれていた友達と買い物から帰ってきたある晩祖母が私に電話があったことを教えてくれた「男のひとで・・、NさんだかOさんだか・・。」そんな知り合いは心当たりなかったただ一人・・先輩を除いてはでも、先輩が私の自宅の番号を知るはずがないししかもかけてくるわけがない「おばあちゃん、相手のヒト、何て言ってた?」「えっと、晩に帰ってきますって言ったら、またかけますって。」・・いたずら電話だろうか少し不気味だったそして晩の8時ごろ自宅の電話が鳴ったので私が受話器を取った「・・もしもし。**です。」「あ・・もしもし、俺、Nですけど・・。」その声は紛れもなく先輩の声だった「え?・・本当に?先輩??」思わず聞き返した「うん・・。自宅の番号探すのに苦労したよ・・。」どうやって探したのかはわからないけれど今、先輩から初めて自宅に電話がかかってきていた「ちょっと・・これから時間ある?」「え?どうしたんですか?」「あー、家の前の浜のところまで出てきてくれないかな?」???先輩からの呼び出しだったこんなことはいまだかつてなかったこと何が何だかわからないいったい何があるの?「・・じゃあ、9時に浜の駐車所で。」そう言って先輩の電話が切れた切ってしばらくは呆然としかできなかった先輩が私に話がある・・??何を話すの??何を言われるの??だんだんと怖くなってきたでも待ち合わせの時間が迫ってくると浜の方角に向かって歩き出す私がいた
2005.12.24
同じ県内でも北の端と南の端毎週私の彼は片道2時間半かけて私に会いに来てくれた仕事の悩みも休みも同じだから予定はすぐに合わせられるいろいろなところに彼は私を連れて行ってくれた彼は本当に優しいヒトだったそんな彼の優しさに私はどっぷりと甘えていった一生懸命好きになろうとした会社では私の心をとらえて離さなかったあの先輩が何も声をかわすわけでなくもくもくと工場で車のメンテナンスをしている初めはそんな先輩の姿をみているだけでせつなくて仕方がなかったけれど「私自身が先輩ではなく彼を選んだ」という自分への言い聞かせがそのせつなさを心の奥にしまいこんでいたそのうち先輩を見ても何も思わなくなる日がやってくるそんな日がくるのだろうと思っていたある朝出勤するとまだ営業所は開いていなかった「所長、また開けに来るの忘れてる~~。もう、しっかりしてよ~」私が営業所の裏口のドアをガチャガチャ確認してひとりごとを言いながら社宅にカギを取りに行こうとして振り返ったすぐ後ろに・・先輩がカギを持って立っていた「わ!」あまりの不意打ちに私は声をあげてしまった「・・おはよ。」「あ、おはようございます。」「カギ・・もらってきたけど。」「あ~、ありがとうございます。」誰もまだ出勤してきていない営業所今なら、先輩に話しかけることができる二人で順番にタイムカードを押すでも何も話をしない工場の中にしまってある展示車のキーの束を持って先輩が工場の方に向かおうとしたそのとき私は先輩に話しかけた「先輩、モモって・・バカかな?まだ私を見て吠えるんです。」すると先輩が笑った「言ったとおりでしょ。モモは社員の顔を覚えらんないの。」以前の先輩と同じだった「いつ、話しかけてくるかと思ってたけど・・結構長かったな。」「だって、先輩めちゃめちゃ話しかけるなオーラ出してた・・。」「出してないって!」そのとき、事務の女の人が出勤してきたので私はスッと先輩から離れて掃除器具庫の方に移動した・・心臓はバクバクだった本当に先輩を忘れられる日が来るのだろうか自分が選んだ結果にとてつもなく不安だった
2005.12.23
営業所に初めて入った朝のことは今でもはっきり覚えている社員駐車場に私の車を停めるスペースがあり私が親の車をそこに停めようとバックしていたらそこに先輩のMR2が入ってきたからだった先輩は私の顔をちらと見たけれど表情ひとつ変えず、自分の納める場所に車を停めたそしてお弁当箱を片手にさっさと所内に入っていってしまったやはり他の社員の手前私が話しかける隙も与えてもらえなかったのが事実営業所に隣接する社宅から所長が飼っている犬のモモが私を見るなり「わんわんわん!!!」と吠え出した(手荒い歓迎、ありがとう・・モモ)以前に先輩から聞いていたモモの話営業所の社員のヒトのことも何故か初対面のような気がしないそれはまだ先輩と仲良く電話していたころ教えてもらったいろいろな情報が頭に入っていたからだ手に取るように分かるのが面白いでもそんなことすらも誰にも言えるはずはなかった(先輩はこうなることが分かっていたのかな・・)会社では一切他人だったそれは会社の外でも同じことを意味している私達は、今日初めて会った「新入社員と同僚」だったでも仕事は仕事全部を恋愛にかまけているわけにはいかない今日からは仲の良かった同期もみんなスタートライン揃ったライバルとなる誰が何台車を販売したかすぐに判るように所内には棒グラフが既に用意されていた朝の朝礼で私は新人セールスとしてみんなに紹介された私はもう先輩の方を見なかったその晩、くらちゃんから電話があった今日の初出勤のことで話が盛り上がったくらちゃんも答えを気にしているのかなかなか話を切り出そうとはしない私からくらちゃんに返事をした「よろしくお願いします。」私にまた彼氏ができた今度こそ先輩のことをあきらめて自分を好きになってくれたヒトと幸せになりたいと思った
2005.12.22
あれ以来先輩とは連絡を取っていなかった先輩も会社の社内報とかで私の入社については知ってるはずだったでも私から連絡を取らなければ先輩とのコンタクトはありえないこうやってどんどん時間が過ぎていって先輩と会社で再会したとき全くの初対面のような存在になってしまうのだろうかそんなことばかり考えていた新しい仲間達との行動は私の世界を大きく変えることになった毎日、研修で顔を合わせているのに休みの日になるとおねえのマンションに集まってはみんなで夜通し神戸の夜景を見に高速を走ったりたくさん買い込んでそのまま宴会したりしてひどいときは私はそのままおねえのマンションからみんなと一緒に通勤する日もあった男も女も関係なくみんなでゴロ寝して朝までいろいろ語り合ったそんなときは先輩とのことを忘れて心から笑ったそうやっているうちこのままみんなと一緒にいることができたら先輩のことを少しずつ薄めていけるのではないかな・・とあきらめる気持ちになってきた私がしつこく追い掛け回して嫌われていくよりも私から先輩のことをあきらめるくらいの勇気が欲しいもう追いかけるのはよそうそれが自分のためかもしれないと自分に言い聞かせたもう研修も終わりに近付いたそんなときくらちゃんから「つきあってほしい」と告白を受けたたしかにもう私は彼のことが嫌いではなかったそれだけ一緒にいた時間も多くなっていたでもすぐには返事が出来ずに少しだけ待ってもらうことにした研修が終わりとうとう同期のメンバーは各営業所にバラバラに配属になった私は営業所に初出勤となるいよいよ先輩との再会の日となる私は自分が会社で先輩の姿を見た時自分がどういった反応をするか、それだけでくらちゃんへの返事を決めようと思っていた自分から先輩を切ろうとするのは初めてだった
2005.12.21
このディーラー研修がきっかけで、それまであまり話したことはなかったこの男の子と少しづつ話をするようになった何故か、研修中の班分けをするごとに彼と同じ班やペアになることが多くまわりからも冷かされたりするようになった研修も1/3が過ぎたころ私だけ何故か居残り面談があり、おねえやその他の同期の子達もみんな先に帰ってしまった日があったしかも運悪くそのとき雨が降り出してきてしまった(傘、持ってこなかったよ・・)面談を終えしかたなく雨の中を駅まで走り出そうとしたときだった「Espritさん!」と私を呼び止める声がした「・・はい?」振り返ると、例の彼、「くらちゃん」がいた「わ。くらちゃん、帰ったんじゃなかったの?」「駅までみんなと一緒に帰ったよ。でも雨が降ってきたからさ、 もう一度ここまで戻ってきた。」「え?」「傘、持ってないだろうと思って・・。」彼の手には先まで水がしたたった傘が握られていた「えー、わざわざ?帰りの電車は大丈夫なの?」「一人で帰るのさびしいでしょ?俺、ヒマだし」私と彼の路線は正反対一緒に電車に乗って帰るわけじゃないのにわざわざ戻って来てくれたらしい「ありがとう。実はこの雨の中、帰るの泣きだったんだよね。」その日は好意に甘えて傘に入れてもらって駅まで一緒に帰ったいろんな話をした普段はおとなしくてあんまり話をしない子だけどメガネをかけたいかにも真面目ボクトツくん性格が顔に出ているようなヒトだったいい人だなあ・・と、でもその時はそれだけだった
2005.12.20
同じ会社に就職したけれど、はじめの3ヵ月は研修期間ということで毎日自宅から車で3時間以上離れた本社まで通勤することになった車の免許は学生の夏休みを利用して取ったもののほとんど車にも触ったことがなかったのでそんな遠くまで車を使うことを家族から止められてしばらくは電車通勤となった同期の人達の中にも少しづつグループが出来始め私は面接時に仲良くなった彼女・・「おねえ」と命名されたアネゴ肌の彼女と、彼女と同じ営業所配属の男の子、そしてその隣市の営業所の男の子2人と普段いつも行動を共にした共に・・といっても駅から本社の間を歩いて通勤するのに、みんなは同じ路線だけど私を朝、駅でおねえが待っていてくれたので必然的にそんな組み合わせが出来たのだったみんなの前でも私は先輩の写真を指さしては「このひとが私の初恋のヒトなの~」そんなことを言ってまわりから笑いを受けていた確かに社会人、そんなことばかりは言ってられないもの・・でもおねえだけはそんな私の茶化し話も真剣に応援してくれたそんなある日ディーラー実地体験というプログラムで実際に競合ディーラーにカタログと見積もりをもらいにいくという研修があった2人1組でなぜかリクルートスーツのままもらいにいくという毎年恒例のバレバレ研修らしい私はいつもの仲間のうちの男の子ひとりとペアになった上司にディーラーの前で降ろされて二人でカタログをもらいにいった私は何もわからずちんぷんかんぷんだったけれど彼はなんと買いもしない車の見積もりまで取り出した相当負けずキライらしい・・私はその彼の彼女役として一生懸命話をあわせた・・まさかこの彼とつきあうことになるとはそのときは誰も思っていなかった私は先輩のことしか頭になかったはずだった・・
2005.12.19
それから・・しばらく先輩とは連絡を取らなかった何だか自分ひとりではもうどうしようもないほど先輩のことを想うことに少し疲れてきていたのかもしれない気持ちの中では先輩が何をおいても最優先だけど想えば想うほど自分との間に距離を示されてしまうようで後が悲しくなってしまう結局、大学でつきあった彼氏とは卒業と同時にサヨナラした二人とも地元にもどり、遠距離恋愛をする約束だったのだけれどほぼ毎日顔を見ていた生活から会えなくなった寂しさを埋めることはなかなか出来ない・・それが、表向きの理由だったでも本音を言えばやっぱり先輩が忘れられなかった、ということになるのだけれどずるい私は距離のせいにして無理やり終わらせてしまった彼には「4年もつきあっていて簡単に別れられるひどい女だ」と罵りを受けたでもほんとうにその通りなので「ごめんなさい」としか言えなかったそして私はあんなに待ち焦がれていた先輩と同じ会社への入社を果たすこととなったなんとあの面接の時友達になったあの背の高い女の子と入社式で再会することができた本社で取り行われた入社式にはセールス・エンジニア・事務職員を含め総勢60人ほどセールスの女性は私達2人だけだった入社式が終わり大会議室に私達新入社員は通されたそこにはここの会社の全従業員の個人写真が壁一面に貼られていた私達も今から撮影をしてその写真に加えられることとなる私は自分の配属先の営業所を探した<S営業所>20人ほどの羅列されたその中から先輩を探すことは容易だった先輩が私を見ていた私の心はとても複雑だった
2005.12.07
楽しかったデートは、空が色を落とす頃合いと共にその終わりを告げる時間となったまるで恋人同士のようにはしゃいでこんなにも楽しい時間を過ごせるなんて夢みたいだった駐車場に戻り、先輩に自分の家まで送ってもらうその帰路で家まであと数キロの距離に来た時点から車の中の空気が一変した先輩が全く何も喋らなくなってしまったのだ話しかけても返事がないさっきまでは微笑みすらみせていたのにピクリとも表情は動かさずにただひたすら前だけを見てハンドルを握っている何か怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか全く私にはわからなかった車の中では回ったパビリオンの話をしていただけでたぶん、先輩が気を悪くするような内容は何も話してないはずただ、私から話しかけないことには会話すらも車内から無くなってしまいひんやりとした嫌な空気だけが流れてしまうのでまるでひとりごとのように私はひたすら話し続けた話して話して話して聞いているのかもわからないほど先輩が何も答えてくれないのでとうとう話を止めてしまった残り数十分家に着くまでとうとう二人とも何も話さなかったそれはいつものあの妙な沈黙よりもとても鋭利でとてもはりつめていて今日のデートの気分を台無しにしてしまうものだった何故こんな終わり方をしなければ帰れないのか私には理解できなかったでも泣きたいのをぐっとこらえて先輩にこういった「先輩・・私、何か気に障るようなこと言っちゃいました??」先輩はこちらを見ずに「いや・・。ごめん。じゃ、ね。」そう言って私が車を降りるのとほぼ同時に車を発進させて先輩の家の方向に走り去ってしまったわからないどう考えてもわからない道にぽつり置き去りにされたような感覚でまったく状況が把握できていなかったこの出来事がその後の私と先輩の間で大きな障害となるとはそのとき私も先輩も気づいてはいなかった
2005.12.03
皆様、ご無沙汰しておりましたコメントをいただいた皆様ありがとうございました少しづつですが体調も戻りつつありますこれからすこし不定期更新ではありますがUPしていきたいと思っております長い目でお付き合いくださいますようよろしくお願いいたしますEsprit*
2005.12.02
管理人体調不良のため、しばらく更新をお休みさせていただきますリンクしてくださってる皆様ご訪問して戴いている皆様には本当に申し訳ございません携帯からまた皆様の日記にはお邪魔したいと思いますどうぞお許しくださいEsprit*
2005.11.24
いくつかのパビリオンをまわってからメイン会場を見に行ったメイン会場の横に、ネットの車の対戦レースが行われてるゲーム会場があった「ここ入ってみない?」先輩に言われて私もそのままついていったそこは2人1組での参加になっていてほとんどが親子連れが多かった30台ほどのパソコンがひとつのメインPCにつながれていてそのうちの一台にエントリーする一人が方向担当もう一人がアクセル・ブレーキ担当パソコンのキー操作でレースをするというものだった私達は赤い車にエントリーされた先輩が私に合図を送る「右!って言ったら右に車を倒してね」「はい。」レーススタート!先輩の的確なコーナーワークの指示で私達の車は30台のエントリーされた車の中からさっそく1位に躍り出た「先輩!1位になってる!すごいすごい!!」はしゃぐ私でも終盤で後ろから猛追走してきた緑の車にゴール前で抜かれてしまった「ああ~!!」「2位になっちゃった!」でも二人で協力して遊んだゲームはとても楽しかった「のど渇いたね、ジュースでもどう?」先輩がジュースとなぜか唐揚げを買ってきてくれた二人でベンチの端っこに座って軽くお腹に入れた後飲み終わった缶を捨てに空き缶入れを探したするとここの空き缶入れは、スロットになっていて缶を投入すると自動的に虹の絵がついたスロットがまわるようになっていた「揃った方は下に出てくる紙をもって受付まで」と書いてあった「こんなの当たったらはずかしいよね~。」そう言って先輩が先に投入したはずれ。「当たったら・・音とか鳴るのかな~?」そう言って私が入れた瞬間虹が・・ひとつ・・ふたつ・・みっつ・・よっつ・・・・いつつ大当たり!!音もはではでしい音楽が鳴り響いたので近くにいた人達が一斉に振り返った「今日は、よく当たるね・・。」「びっくりですね・・。」二人ともちょっとさすがに引いてしまった受付に機械から出てきた紙を持っていくと今度はマスコットキャラクターの鉛筆を一本もらった・・一本??先輩とまた二人で顔を見合わせて笑った
2005.11.19
ゲートをくぐる頃には人が回りにいっぱいあふれてきた私は先輩とはぐれないようにずっと先輩の顔ばかりみていた先輩が着ていたデニムシャツのすそを本人にばれないようにそっと掴んでいた初めに並んだパビリオンは行列になっていて先輩は私が中に入りきるまでずっと通路側の人よけのかわりになって入り口で列が止まったときは私の頭の上でドアを押さえてくれていたこういう優しさが違和感なくできるのが私の大好きな先輩人数制限の為にちょうど私達の前で入場が切られてしまい次回、一番初めに入場することになったそのパビリオンは3Dの映像館私達は一番前の席に誘導されてシートに座ったしばらくするとマスコットキャラクターと司会の女の人が出てきてなにやら説明を始めた「そこのカップルのお二人様、ちょっとよろしいですか?」いきなり真っ赤な衣装に身を包んだ司会者が私たちのほうに向かって手をかざした??びっくりして二人で顔を見合わせた「ちょっと立ってもらっていいですか?」言われるがままに立つ二人「このパビリオン入場1万人目になられましたお二人です。 おめでとうございます!」え?!会場からは拍手が起こった何が何だかわからずにぽかんとしていると係の人が記念品を持ってきてくれた先輩は何も言わずに私の方に体を引いたので私が記念品を係の人から受け取った「お二人様は今日どのような方法でこちらに来られたのですか?」司会の人が続ける「車です。」私が答える「彼氏さんが運転されてきたのですか?」そう聞かれて言葉に詰まる・・。彼氏・・じゃないけど・・。先輩の顔を横目で見たとき先輩がうんうん。とうなずいて返答してくれた。「お付き合いも長いのですか?」「はは・・そんなことないです。」先輩が何とか返してくれてるけど私はもう何も話せなかった「そうですか、初々しいカップルさんですね~。それでは末永くお幸せに、気をつけてお帰りくださいね~」司会の女の人はそうやって笑顔で話していた・・私は顔が真っ赤だった人前でこんなこと聞かれたこともないしまして先輩のことを彼氏だとかお幸せにだとか二人はそんな関係じゃないのに照れくさくて恥ずかしくてやっぱり3Dの内容は頭にはほとんど残らなかったパビリオンを出て「無責任なこと言うよな・・。」先輩がそう言ってなだめようとしてくれたけれど私は顔のほてりがおさまらなくてしばらく顔が上げられなかった記念品はマスコットキャラクター入りのマグカップ2つあとでひとつずつ分けることにした
2005.11.19
約束の日・・先輩と出かける博覧会のチケットを父の会社の事務所までもらいに父の車に乗せて貰った父の職場には、久しぶりに会うバイト仲間の人達とがいて、玄関のところで私はその人達と談笑していた父にチケットをもらい、父が職場に戻った後も同年代の従業員の女の子達と話で盛り上がっていたちょうどそのとき玄関に続く長いスロープを黒のスポーツカーが上がってきたそう実は先輩と待ち合わせしたのは父の勤め先の正面玄関私と話していた従業員のコがびっくりした顔をして「ね?あの車、**ちゃんの彼氏?」と聞いてきた私は首を横に振って「ううん、中学の時の先輩。片思いだけど・・。」と、笑ったでもやっぱりMR2に乗って迎えに来てもらうとちょっと自慢したくなってしまう「私の彼氏なの・・。」こんな風に言える事ができたらいいのにな・・そう思っていたバイト仲間に見送られて先輩とのドキドキデートが始まった今回の博覧会は「まつり」がテーマになっていて全国各地のお祭りを催し物にしてあとは各協賛メーカーがパビリオンを出展させていた予想通り、行きから道は混雑先輩が他の人が知らないようなわき道にスッと入った「え・・?先輩、こっちじゃないですよ?」「どこに出るかお楽しみ!」先輩は、お客さんの車の引き取りや納車もしていたので抜け道にとても詳しくなっていた自分が通ったことのない道をスイスイと走っていくそんな先輩を見ていると前よりももっとかっこよく思えてしまうのだった駐車場になんとか到着したものの会場までは結構距離があったここからは歩いていかなければならない規制をしかれて一般道の一部が歩行者天国になってしまっているそんな人混みの中を会場まで二人で歩いた先輩は私の歩幅にあわせてゆっくりと歩いてくれるだから先輩が先に行ってしまうこともなく私が先輩を追い越してしまうこともなくずっと並んだままでこんな居心地のいい隣は初めてだった「今日はいいお天気になってよかったですね!」「・・そうだね。」「私、雨女なんですよ。イベントには滅法弱くって・・」「俺、晴れだよ。俺、雨当たったことってほとんどないな~。」会話がこんな間近でできるなんて夢じゃないかと思うほどだった
2005.11.18
就職が決まったお祝いをかねて父親が出張で出かけるツアーにまぜてもらってついて行くことにしたちょっとした卒業旅行!!行き先は韓国今度の博覧会の時に渡せるから先輩にも何かお土産買って帰ろう私は生まれて初めて飛行機に乗った初めて降りる日本以外の国車の多さと割り込みのすごさに驚いたバスに平行して走るお土産屋さんの顔がちょっと怖かった普通に道を歩いている兵隊さんに一緒に写真を撮らせて?と頼んで兵隊さんに叱られたりもした父が夜はカジノに連れて行ってくれたものの10分ほどで綺麗にお札が消えていく二人で顔を見合わせて大笑いしたルーレットもすごく面白くてきらびやかな世界を始めて目の当たりにして興奮しっぱなし父が先に休んだのを見届けて先輩に国際電話を入れたこんなに距離が離れていても電話はすぐそばに先輩がいるような感覚にさせる「え?今、韓国からなの?」「はい!」「試着の時とか気をつけて。鏡の奥がいきなり開いて どこか連れてかれるかもしれないから。」「・・え?ほんとですか?」私が真剣に驚いたので先輩はまたくっくっ・・と笑った「・・また、おどかしましたね?」「引っかかりやすいなあ~」先輩との話が楽しかった私が旅行の間、彼氏には自分のアパートに戻ってもらったので電話を引いていない彼氏には連絡の取りようがなかった先輩には小さな小銭入れを免税店で買った彼氏にも財布を買ったそれから大量にハングル文字のコーラとアンバサを自販機で購入した飲んでみたけど中身は同じでもこんなお土産の方がなんだか楽しいんじゃないかしら?そんなことを考えながら2泊3日の旅行が終わった先輩と博覧会に行く日がどんどん近づいてきていて私は待ち遠しくて仕方なかった
2005.11.17
誰よりも先に先輩に電話を入れた先輩のおかげで内定がもらえたから嬉しくて嬉しくて仕方がなかったでも先輩は「厳しい仕事だからね。多分泣くことだっていっぱいあるよ。 でも自分が決めたのなら頑張って。」と落ち着いて私を諭した私は他の就職活動をキャンセルしたその年の秋、地元で小さい規模ながら博覧会が催されることになった何年も前から土地を造成して大きなホールを作っていたけれどそれはこの博覧会のためだったのか・・と思った父の仕事の関係で、招待券が2枚私の所に回ってきた誰と行こう・・そんなことを考えながらも頭にははっきりと一緒に行きたい人を思い浮かべていた私(お礼のつもりで・・)あんまり人混みは自分が好きじゃないけれど先輩と一緒だったら楽しいだろうなまた、友達に名前を借りないといけないけれど・・結局あれから、学校を辞めるわけでもなく、でも学校に行かずに私の部屋に居座る彼氏に少し頭にきていたのもあって彼氏には招待券のことは言わなかった外の公衆電話から先輩を誘った「券があるんですけど、みんな都合が合わなくて・・。」もちろん他の誰にも声なんてかけてない行くなら先輩と行きたい・・先輩は「誰も行く相手がいないのなら・・いいよ。」と言ってくれたまた待ち合わせの時間を決めて先輩との約束ができた嬉しかった嬉しいのと同時に自分の部屋に帰りたくなくなっている自分に気がついた
2005.11.16
先輩の会社の二次面接の結果は程なくして私に通知された『次回、重役面接においでください』いよいよ、ここまで来た・・って感じいったい何人の人が残っているのだろうあの長身の女の子は残ってるのかな?私はもらったメモをカバンから探すと彼女に電話を入れた「私も通ったよ~!!」彼女から嬉しそうな声を聞けてホッとしたでももしかしたら今度こそライバル?どんなことがあってもこのふるいの目からおちるわけにはいかない必死でしがみつかなくちゃ・・そして重役面接の日今回は直接アパートから本社に向かった私は紺のいつものスーツではなく淡い水色のリクルートスーツに変えてみたちょっとでも印象をつけなくてはいけないそんな思いがあった面接では先輩に教えてもらったとおり、「自分を花に例えたら何だと思いますか?」「わが社の取扱車種を言えるだけすべて答えてください。」という質問が出た私はもちろんこの質問をクリアした花は・・多分オジサマたちが絶対知らないような花の名前を挙げた当然、花についての質問が来たので他の事についてイジワルな質問はされずに済んだ車種については頭から丸暗記していったけれど12~3車種のところで「もういいですよ。」と言って貰えたすべて先輩のおかげでも、「仕事中に彼氏から今すぐ来てくれと言われたら、 貴女はどうしますか?」と、こんな質問をされたそのときとっさに頭に思い浮かべたのはアパートで待ってる彼氏ではなく会社のつなぎを着た先輩の横顔受かりさえすれば先輩に毎日だって会える「彼氏には電話で我慢してもらいます。」「でも、今日、絶対!と言われたらどうします??」重役は何でこんなことを聞くのか不思議だった受け答えを試されているのだろうか・・?「・・では、彼氏に会いに来させます!」この回答に重役の面々は吹きだして苦笑したわざとウケを狙いにいった私・・失敗したかな?そして、面接が終了した廊下で友達になったあの女の子と話をしていたとき重役達が応接室からぞろぞろと出てきた私たちは一礼をした重役のうちのひとり、あの変な質問をした白髪の人が「ごくろうさん。」と声を掛けてくれたこの重役面接に残ったのは15人一次試験の時には同じ条件の女子大生が100人ちかくいたここから2人だけが内定をもらえる形となるそして待ちに待った、会社からの通知大きな紙袋の中には会社の概要を書いた冊子と真っ白な契約書の紙そして内定通知と書かれたコピー用紙が私の手の中に入ってきた内定!先輩と同じ会社に内定が決まった!!飛び上がるくらい嬉しかった
2005.11.16
そこから1時間電車を乗り継いで先輩の職場の本社に着いたリクルートスーツに身を包んだ人達が駅から一斉に同じ方向に向かって歩き出したので私が本社まで道に迷うことは無かった今日は次長面接人事の年長者らしき人と1対1の対決時間指定された紙を配られて廊下でひとりひとり順番を待つそのとき私のひとつ前の女の子が私に声をかけてくれた「前の説明会の時に会ったよね、覚えてる?」「あ、そういえば・・。」彼女は身長が170以上あるだろうその身長ゆえ、とても目立つ存在だった「私、MITUBISHIは内々定もらったんだ・・ でも、ここが一番入りたいの。」「そうなの?もう内々定もらえてるんだ・・いいね。」そんなこんな話をしている間に彼女の番になった時間は一刻一刻過ぎていく緊張して手のひらが汗ばんできた・・そして彼女が面接を終えて応接室からでてきた「玄関で待ってるよ。駅まで一緒にかえろ?」彼女の申し出にうんうんとうなずいてから、私は応接室をノックした「・・**さん・・ね。どうぞ」「失礼致します。」次長さんは私に自分の名刺を出してくれた私はそれを両手で受け取ると自分の左側に置いた次長さんは、私の履歴書を見ながら、たんたんと話を進めていく実際、聞かされる内容は、人事の人から聞いた話よりも先輩から聞いた話よりも過酷だった「もし・・配属なら、おそらく●●営業所になると思いますが。 通勤時間はどれくらいかかりますか?」「車でおよそ30分くらいです。」先輩のいる営業所だったもし配属なら・・配属じゃないといけないんだってばそんな気持ちがあった「あ、あなた、この地域なんだ?●●営業所にもこの地域から 通勤してるコがいるな。エンジニアだったかな・・。 年も近いよ。なんだっけな、名前。 ○○っていう名前・・だったかな?」次長が私にそう言ったまさか、こんなところで先輩の名前が出てくるとは!?「あ、はい、私の1学年上にいる方です。お名前は存じてます。」名前だけじゃないです、今日はその人に送ってもらいました!!叫びたいくらいどきどきした「じゃあ、今日はありがとうございました。結果はまた後程ご連絡します。」次長さんの言葉で私の二次面接は終わった最後に一礼をして私は退室した本社の玄関先ではさっきの女のコが待っていてくれたそのまま二人で駅前でお茶をして互いの名前を教えあってそのまま私は彼氏の待つアパートへ戻ったのだった
2005.11.15
朝、実家から国道沿いまで出て先輩の車を待っていたまたあの爆音でこの早朝からやってくるのかと内心、少しびびっていた私が道路に立って5分後、先輩が車で迎えにきてくれたあのスポーツカーではなく普通の白いセダン「おはようございます。あれ?車2台あるんですか?」「こっちは通勤用なのです。父の借りてるんだ。おはよう。」先輩は出勤するので(あたりまえだけど)黄色のつなぎを着ていた仕事のカッコをしてる先輩の姿を見るのは初めてところどころオイルで汚したのか黒くなってるところがまたカッコいい・・「悪かったね、早く出てきてもらって。」「そんな、乗せて頂いてるのに。」本当は私の面接の時間はそんなに早い時間ではなかったけれど先輩の出勤時間に合わせて出てきたのだったでも、先輩の横顔を見ているとなぜか急に緊張してきてしまったこれで、もし、採用されなかったら・・大恥もいいところだ・・そのとき、先輩が私に言った「この時間だと、もうひとつ隣市の駅まで行けそうだな。 そっちに送ってあげるよ。」「先輩、遅刻しちゃいませんか?間に合います??」「大丈夫。間に合うよ。」車は私達が通ったあのバスの通学コースを走り出した先輩の車が峠に差し掛かった時のこと「ちょっとちょっと、大丈夫?」先輩が私に話しかける「・・え?何でですか?」「だって、こんな峠道で車体が左右にゆれてるのに、 キミの体、硬直してるよ、遠心力に負けてない!」確かに私はガチガチになっていた何に緊張してるんだか先輩?面接?でも先輩はそんな私をみて大笑いした「ま、な、TOYOTAの社員の俺がTOYOTAの車でキミを 送ってるんだから、受かるよ、きっと。」それはこないだ私が言ったギャグ・・私もちょっと笑ったするとそのとき車につけてあった千成ひょうたんの飾りがぽとりと落ちた「わ・・不吉な。」先輩が茶化して言ったので私もさらに大笑いしてしまった「先輩・・何で落ちるの~?こんなときに~。」「この吸盤、着けてから一度も外れたことないんだけどね・・」「えー!!よりによって私の時ー!!」この笑いが私をリラックスさせてくれた先輩の気遣いのおかげで私はもうひとつ先の駅まで乗せてもらうことができた駅のロータリーで、私を降ろしたあと「じゃ、会社で会いましょ。頑張って。」そう言って先輩は走り去っていった私は先輩に応援されたことが何よりも嬉しくてこの面接、絶対受かって見せると心に誓った
2005.11.15
彼氏とのすれ違いを心に感じながらこの日も私は電車に乗っていた今日は地元の老舗ホテルと第三セクターのテーマパーク施設面接を受ける日だったそして翌々日には先輩の会社の二次面接を控えていた面接は元々嫌いではないほうにこやかに歯切れよくつとめて明るく好印象になるように心がけたでもそんなに試験は簡単ではなかった結果はすぐに判るその日に面接をしてその日中に連絡がなければ『あなたと弊社とのご縁はなかった・・ということで。』といわんばかりにいつもの分厚い履歴書入りの封筒で返送されてくるだけ同じ時間に受けた知り合いに二次面接の電話がその日の晩かかってきても私の実家の電話は最後まで鳴らなかった晩、先輩に電話をかけたあのニアミス騒動からは電話は全くしていなかった連絡をしたくてももう彼氏が一日中私の部屋に入り浸っていたからそんな弁解をする隙を与えてもらえなかったのだ「もしもし。」「先輩、**です。こんばんは。こないだはせっかく お電話いただいたのに すみませんでした・・。」ちょっと間があったこの感覚は以前にも覚えがある先輩の写真騒動の時と同じ、あまり良い空気ではなかった先輩は何か気付いたにちがいない私はそう直感したでも次に先輩が話し出したとき先輩の声は普通だった「明日・・だった?会社の面接。 ちょっと早く出てもらってもいいかな?U駅まで送るよ。」「・・本当にいいんですか?」「はは、どれだけ緊張した顔つきで望むのかみてあげる」いたって普通逆にそうしてくれたことで心がずいぶん楽になった「最近、ことごとく面接も落ちちゃって・・。 ちょっとへこんでました・・。」「おいおい、どこも受かってないの?」「あはは、先輩の会社と、あとホームセンターのところが1箇所・・。」「ホームセンター・・って。そんなところも受けるの?」「とりあえず企画の方なんですけど・・。」先輩との会話はやっぱり私を満たす先輩の声が心地いい自分の気持ちに下心がないと言えばそれは嘘でもこの関係を絶対に失いたくはなかったそしていよいよ先輩の会社を受ける日がやってきた外は良いお天気だった
2005.11.14
就職活動と称して私は彼氏と前向きに話をしていなかった将来のこと私達のこれからの行く末のことだから彼氏が言い出したことに反面大きなショックを受けた少しでも一緒にいられる方法を考えなくてはいけないここまで大事にしてきてくれた人なのに感謝の気持ちを忘れてる付き合いだして3年目私はちゃんと彼氏のことが好きなんだその彼の為に自分で出来ないことはないだろうかそんなことを考えるようになっていった彼が私のアパートから100mも離れていないところに部屋を借りた部屋といっても、1年中陽の当たらないようなお風呂もなければトイレも共同お世辞にも住みたいとは思わない環境その代わり、家賃は寮費の1/3で済んだそれはもちろん、名目上の契約でありほとんど生活基盤は私のアパートもっぱらバイトのない日は彼は私の部屋で一日を過ごすようになった少しでも彼が長く学校にとどまる事ができるのであればそのためならバイトも増やそうそう思って自分のバイトも掛け持ちで増やした結構私は思い込みが激しいのかもしれない尽くして尽くしてすることが私なりの愛情表現だと勘違いをしていたそんなある日私がバイトからアパートに帰ると彼が自分の友人を数人私の部屋に招き入れゲームをして遊んでいたもちろん私にとっても遊び仲間普段なら居たって全然不思議じゃない光景だったけれど就職活動に加え、バイトも増やし体力的にも精神的にも少し参ってきた私は自分が二人の為に働いてきた時間彼が私の部屋に勝手に人を上げこんだ・・という行動にキレてしまった「ちょっと、みんな、帰ってくれない・・かな・・。」その時の私の声は自分でも驚くほど凄んでいた彼氏に焼きもちを焼くとかではなく自分の領域を荒らされた気分になっていたたぶんすごい形相になっていたんだと思う友人達はみんなすぐに帰っていった彼氏には「あんな態度をみんなにするもんじゃない!」と激しく怒られたでも何か納得がいかなかった彼氏の価値観と私の価値観の違うところにそのとき気付いたのだった
2005.11.14
「今・・何て・・??」「ん・・だからさ、アニキあんな感じになっちゃったでしょ? 俺もバイトばっかりで必修単位いくつか取れてないし。 来年、学年は進級できても、 お前と一緒に卒業はできないよ。 ・・今回、実家に帰ってね、オヤジと話したんだ。 とりあえず、学校は最後まで行くつもりではいるけれど、 最終、オヤジの整体院、継ぐことにした。」彼のお父さんは自宅で整体院を開業している男ばかりの3人兄弟の末っ子の彼上の兄はバイクショップ、真ん中の兄は中華料理のコックすでに自立していたでも彼が大学を辞めてまで整体院を継ぐことにした事があまりにも唐突だったので信じられなかった「前も言ったろ?オヤジは元々俺が大学に行くこと自体反対してたの。 行くなら自分の力で行け。って。 学費を稼ぐには働かなきゃいけない。 働いてれば、学校に行く時間がない。 取れない単位の為に働いて、その為に学費納めてんだよ。」私大の学費を稼ぐ彼は小さい体をフルにつかって確かに朝から晩まで働いていたもう、こんな生活が嫌になった・・とまで彼は言った「そんなこと言わないで。・・一緒にここまで来たんじゃない。 どうしてそんな大事なこと、相談してくれなかったの?」「お前が就職活動で、実家とココを行っ足り来たりしだしただろ? ・・あれが俺の中でプレッシャーになってたんだよね。 俺は卒業できないまま、置いてかれそうな気がしてきてさ・・。」彼はちょっとうな垂れていた私はコートを脱ぎ、ハンガーにかけ直したもう外食どころではなかった「・・正直、生活費も出せないほど厳しくなってきた。 寮は出ようと思ってる。」「私、何かできることはないかな?」いきなりのことで動揺してしまったけれど彼のことがいとおしくなって仕方なかったそれは心の底から思ったことだった
2005.11.13
「おーい。居ないのかぁ?」彼が私に声を掛けながら玄関のドアを閉めて上がりこんできたいつもならここで「はーい。」と返事をする私でも、今は返事ができない先輩と電話はまだつながっている「何?誰か来たの??」先輩が私に言う先にも書いたけれど、私の電話はミニコンポ内蔵型先輩の声はイヤホンをした私の耳にしか届かないけれど私の部屋全体の音はマイクを使ってまさにオンフック状態彼の声も当然先輩には丸聞こえなはずだった私がおたおたと慌てて先輩に返答しようとしたのと同時に彼が部屋のドアを開けて入ってきた私は彼に向かって「シー!!!」と口の前に人差し指を当てて合図したそしてなるべく冷静を装って先輩にこう言った「・・すみません、ちょっとお客さんが来たみたい・・。 せっかくお電話いただいたのにすみません。 あとからこちらから電話します。」「・・あ、そうか、ゴメン、じゃあ・・。」先輩の声が彼には聞こえていなかったのが幸いだったとりあえず、先輩との電話を切ったそして憮然・・とした彼の顔を改めてじっと見た「・・誰なんだよ?」「ん、今、会社訪問してる人事担当の人。 二次面接のことで、わからないことがあって電話してたの。 男の人が出入りしてる・・って思われたら、印象悪いでしょ? ごめんね、出迎えしなくって。」「・・ならいいけど。」間一髪、何とかこの危機を乗り越えたとうに思ったでも私は先輩に嘘をついてしまった感のいい先輩のことだから何かは感じ取ったはずせっかく先輩が電話くれたというのに・・ん?でも先輩の用件っていったい何だったのだろう??用件を聞く前に電話を切ってしまったからどうしようもないことだけれど・・彼のお兄さんは何とか退院することになったらしいともかく無事でよかった・・と思ったここずっと就職活動やバイトなどで彼氏ともすれ違うことばかりだった「外にご飯でも食べにいこっか?今日は私、おごるよ。」彼にちょっとだけ償いをしようと思った「あのな・・、俺・・。」外に出かける準備をしている私に彼がこう言った「多分だけど・・ガッコ辞めるかも・・。」留めかけていたコートのボタンの手が止まった
2005.11.12
数日後彼氏が私の部屋に遊びに来ていたときのことだった部屋の電話が鳴って出てみると彼氏のお父さんだった彼の上のお兄さんがバイクでケガをした・・というケガ自体はそんなに大きいものではないけれど頭を少し打ったのでここ2ヶ月くらいの記憶が曖昧になっているらしい彼はすぐ実家に帰っていった私もそのお兄さんとは何度か会ったことがあるけれどひとりで北海道とかに何週間もツーリングに行ってしまうような人だったそれから彼氏からの連絡は1週間ほど何もなかったどこの病院かもわからないしこんな大変なときに自宅に電話なんて出来ない私は彼からの電話を待っていたお兄さんの容態だけでも知らせてくれたら・・そう思ったけれど私も妹の一件があったときは彼氏に連絡どころじゃなかったきっと彼も一生懸命看護しているのだろうそう思ってあちらからの連絡をずっと待ち続けた電話が鳴った彼だ!私の部屋の電話機はミニコンポに内蔵されているタイプだから相手の声がスピーカーから出てくるので隣の部屋に会話がまる聞こえになってしまうあわててイヤホンを耳とミニコンポに挿した「もしもし・・?俺。」この声は・・彼じゃない・・先輩だ!!先輩には一応、電話番号は年賀状で知らせたことはあったかもしれないけれどまず絶対にかかってくることのないヒトのはず・・「・・実は会社の旅行で、君が住んでるあたりの近くまで 来てるんだ。 で、電話してみた。」「は・・ハイ・・。」驚いた驚きっぱなしだった嬉しかったけれど何か複雑だったちょうどそのときガチャリと玄関のドアの開く音がした合鍵を使ってこの部屋に入れるのはひとりだけ・・彼だ彼が帰ってきてしまった・・・・絶体絶命だった
2005.11.11
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