JAPANESE GIRLS&BOYS

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暗転


それはまるで主の居ない蜘蛛の巣みたいで、何を捕らえようが誰を絡めようが、
まるで満たされるものが居ない。

冷たい壁に爪を立てると不衛生に伸びたそれは少し、撓んだ。
がりがりと壁を引っ掻いて、目を瞑る。
爪の間に何か詰まる。爪の間は何かで満たされる。

ふ、と鼓膜を振るわせる雑音が届いた。


―――暗転。



僕は一直線に腕を下ろした。指を削るように。
不自然に上を向いた爪と、くぷくぷと沸いてくる血液、分泌される唾液。
少しの目眩、早くなる鼓動、嘔気。
1ミリでも動かせば何か崩れてしまいそうで。




―――暗転。



僕が壁から手を離したのは、雨が降り始めてからのことだった。
均衡を崩し、爪と壁の緊張を無かったことにする。
かろうじて繋がっている爪はぶらぶらと僕の指先で遊んだ。
引きちぎった。
ああ、僕は晒している。肉が直接雨に打たれる。
硬い殻を無理やり引き剥がした僕の本体が濡れている。
アスファルトに拒絶された雨水が浮く、流れる、混ざりながら進む。
僕の血液をその見に混ぜて侵食する。

それは空を写していた。



―――暗転。


人々はまるでお互いが見えないかのように先を急ぐ。
その姿は滑稽で不自然でそして僕も同じようなもので。
だから人ごみに混ざって僕は晒し続ける。

未だ赤い肉を。



―――暗転。









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