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JAPANESE GIRLS&BOYS
Messiah of Lipuid
あなたの掟を教えてください。
あなたの口から与えられた裁きを
わたしの唇がひとつひとつ物語りますように。
どのような財宝よりも
あなたの定めに従う道を喜びとしますように。
【詩篇119章より】
『おはよー呉姐(くれねぇ)。
今日もあたしは相変わらず現在進行形で超絶不調だよー。
それもこれも一時間目から数学入ってるせーだよねそーだよね。あーもーダルいなー今日フケようかなー?あーでも今日パソコンの授業あるしなー。ねえ今呉姐何してんの?仕事中?もし暇だったら次の授業でパソコン使うから一緒に『トリスタ』入ろうよ虹鯖で。スパドラ狩でもすりゃいいじゃん?大丈夫絶対ばれないからー…(以下省略』
…という内容のメールを常人には捉えきれないほどの速さで、
左親指で打ち込んでいく女子高生=教室の最窓際最後尾@授業中。
西暦21XX年。
この市井(しせい)、高度技術が振興、地球温暖化を進行させていた温室効果ガスやフロンガスによるオゾンホールなんかもあっという間に技術にものを言わせて暴力的に鎮圧、その後は環境に、地球に、人間に優しくクリーンな新開発エネルギーでボーダレスな地球の浪費は賄われるように。
しかし、貧富の差は昔以上に。裕福層及び庶民はこの世界に10と1箇所に点在する『楽園(エリュシオン)』と呼ばれる超巨大ドーム型隔離区中で衛生的かつ健康的生活し、貧民はその外壁周辺で獣のように暮らすように。
要するに、現代=技術が金より物を言う時代。
器用な人間はどんどんのし上がり、
逆に不器用な人間はどんどん蹴落とされる、そんな時代。
そんな時代の第8楽園(エリュシオン)『栄光(ホド)』中心部に位置する
超難関高等部進学校第2学年教室内の黒板には、数学の難解な公式が次々と板書されているが、彼女にとってそんなことはもはや興味の範疇から抜け出ているらしい。
彼女は春色のフワフワセミロング、くりっくりの紅色の瞳、
学校指定とは別の紅い襟に白地のセーラー服、
赤縁の可愛い伊達眼鏡の出で立ち――――要するに赫ずくめ。
「おい、熾崎(しざき)!」
しかし遂に、キレたら怖そうな熱血中年教師に見つかる。
ズカスカと近づき、女子高生―――熾崎に近づいていく。
「お前…まさかケータイ触っとんじゃなかろうの?」
遠い昔の産物…ヤクザのようなドスの利いた声。
超難関進学校にケータイ電話の使用は御法度なのである。
普通の女子高生なら、ここで涙目になること請け合いだが―――――
―――――――しかし。
赫い女子高生こと熾崎藺織(しざき いおり)は至って無表情だった。
「まっさかー。そんなことしないよー」
しかし、それだけで許してくれる教師でないことは周囲が百も承知―
――いや、周知である。
あー何やってんだよアイツ的視線で教室の誰もが見守る中―
「熾崎、お前手ェ上げろや」
教師が、半ば脅迫的口調で勧告。
藺織は携帯電話を握ったまま――――――左手を上げた。
―――――――――――――――――――――。
「むぅ。ホラ、ケータイ持ってないでしょー」
その手には、ケータイどころか、何も握られていない。
驚いた教師が机の中も確認するが、それらしきものは勿論入っていない。
―――KERAが山積みにされて入ってる以外は。
「うむむむむむ―――――――――――――」
教師は悔しげに唸ったが、証拠が見つからないなら何も言えない――
―その後は何事もなかったように授業を再開する。
藺織はそれを確かめると―――――――――
『それでさ、今日の仕事は何?―――呉姐』
―――メールの締めを打ち終え、送信ボタンを押した。
彼女の携帯電話――――光化学迷彩仕様携帯電話。
特殊レンズ内蔵の彼女の赤縁眼鏡以外を以って識別するのは不可能―――
――――は、彼女の紅いミニスカートにスルン、と、
至ってSlowlyにしまわれた――――――――――――――。
[事の始め貳(2)@白亜の魔女]
私の神よ、今すぐ私をお助けください。
私の魂に敵対する者が、
恥に落とされ、滅ぼされますように。
私が災いに遭うことを求める者が、
嘲りと辱めに包まれますように。
【詩篇71章より】
「♪~~♪♪♪~~♪♪♪♪♪♪~♪~♪♪♪♪~♪
♪~♪♪♪~♪♪♪~♪♪♪♪♪~♪♪♪~♪♪♪~~」
…というやや残虐げなメロディーを優しい鼻歌で紡ぐ少女@94階建て高層ビルのフェンス無き屋上。
第8楽園(エリュシオン)『栄光(ホド)』の特級区。
楽園(エリュシオン)の中でも特に優れた技術者達がのし上がり、
巨額の財産を手にし、経済面及び社会面における名声と幸福を手にした者達
及びその一族達が最終的に辿り着く場所。
その中心に聳(そび)え立つ、最早旧約聖書の創世記に記された『バベルの塔』の現代アレンジ版と言っても過言ではないほど高い、そして暴力的に純白のソレ。
その屋上であるからには風も凶悪に強い筈だが、しかし、彼女はそんなこと気にも留めやしない。
ただ屋上の建物の縁に腰掛けて、優雅に鼻歌を歌っているだけである。
「おっ…お嬢様!お体に障りますと言うか死にますからどうかおやめくださいっ!!!!!」
そんな彼女だから、彼女の様子を見に来たメイド長が素直に悲鳴に似た突っ込みを入れるのも、最早気になるはずも無い。
「あら柚木(ゆぎ)。そんなトコロに立ってないでこっちにいらっしゃいな。
見晴らしがとても良くてよ?」
「その言葉そっくりそのままお返しします!!」
彼女は雪色の緩々ウェーブの長い髪に、涼しげな水色の瞳、
白い鍔広帽に白レースの牡丹(ぼたん)を模したブローチにヒラヒラの純白ワンピースという出で立ち―――――要するに白ずくめ。
「もう…柚木ったら怖がりなんだから。
落ちなかったらなんてこと無いのよ?こんな場所――――」
そう言って、やや拗ねた様に立ち上がり、彼女は立ち上がる。
勿論その時、ちょっとよろめいてメイド長―――――
――柚木員子(ゆぎ かずこ)29歳、超一流シェフの夫と共に彼女及びその家族に仕える現在2児の母―――の肝を冷やすのも忘れない。
「またこんな所に来て…何か善い事でもあったんですか?」
そういう柚木に、彼女は微笑んでみせる。
「そうです。鶸(ひわ)様からご連絡がありましたの。
『またわたくしと一緒にお仕事しませんこと?』って」
「まぁ…鶸様から。よかったですね、零也(れいや)様」
柚木はまるで自分のことのように喜んで見せる。彼女の記憶によれば、『鶸』という人物は、零也――――超一流建築デザイナーとして澪宮(みおみや)家を一代で超大富豪に仕立て上げた彼女の父の才能を引き継いだかのように、
ウエディングドレスデザインにかけて類稀なる才能を発揮し、
現在19歳にして世界的に有名になっている――――の才能を買い、
共同でファッションショーを開く等、零也の名を世界に知らしめるきっかけとなった人物であったからだ。そんな人物とまた再び仕事が出来るのだから、
彼女も…澪宮零也(みおみや れいや)も嬉しいだろう、と。
「ええ本当に…そうそう。忘れておりましたわ。
わたくし、鶸様にお返事しなくては―――――柚木ちょっと先に行っててくださいまし」
零也の言われるままに、柚木が屋上から去ると、零也はワンピースのポケットから服と同一に純白の携帯電話を取り出し、
9桁の番号と通話ボタンを押した。
柚木は知らない。『ブライダルファッションデザイナー』という肩書きは、
彼女の副業でしかないということを。
『お。連絡してきたってことは…参加するってことか』
柚木は知らない。『鶸』は彼女の『本職』の同業者であるということを。
「ええ。もとよりそのつもりですわ」
柚木は知らない―――――――――――――
『了解。じゃあ――――期待してるぜ、澪宮零落』
彼女が白亜の魔女―――――――――――――――
「お任せくださいな、鶸様」
『澪宮零落(みおみや れいらく)』だということを。
[事の始め参(3)@橙なる人類最強と黄金たる人間失格]
見よ、その日が来る。炉のように燃える日が。
高慢な者、悪を行う者は凡(すべ)て藁(わら)のようになる。
到来するその日は、と万軍の主は言われる。
彼らを燃え上がらせ、根も枝も残さない。
【マラキ書3章より】
『おうおはよー俺の可愛いイオりん。俺は相変わらず朝から絶好調だぜー。
それもこれも授業中でもメールくれるイオりんのお陰だろーなというか間違いねーよ。今は忙しいがあと小一時間もすりゃ暇人だよん。そーだなートリスタ飽きたから『テイルズ』でもやんね?アカウント新しく作ってさ。最近の学校はスペック重くて2M3M一気に入りません~てことはねーんだろ?だいじょーぶ。他人のIDで入っときゃ先公にもバレねーだろーし(以下略』
…という内容のメールを常人の動体視力では捕捉不可能な速さで、
その長い左右の指とキーボードを以ってして打ち込んでいく女性@69階高層ビル69階
そっくりそのままオフィスらしき場所=窓際。
第8楽園(エリュシオン)『栄光(ホド)』の最南端――経済特区。
技術が金よりも物を言うこの時代、政府が数多の分野に携わる、
数多の技術者たちが、それぞれの分野に血道を上げられるように、
自ら特別会計国庫(自腹)をかっ捌(さば)いて土地代・光熱費の半額・開発費を特別負担でギルド(技術同盟)――昔で言う私企業――の開発活動を認めた
特別区であり、
現在、今は無き東京都――と呼ばれていた昔の楽園中心に在ったらしい首都―――の面積は軽くあるその土地に、数百という数のギルドが集中している。
――――その最も特区と一般区の境界線に近い場所、そこに彼女たちは居る。
「雪凪(ゆきなぎ)――。珈琲淹れて。ブラックで。すげぇ濃いヤツ」
「いやわけわからへん。自分で淹れたら…「わーありがとーマジ助かるわー」
「いや、無視せんといて?」
…などと言いつつ結局女性に従っている青年。
女性=輝くようなオレンジの、上下に分けて上だけ束ねた髪、橙色の猫っぽいキリリとした瞳、蜜柑色のつやっつやグロス。軍服のような白ジャケットの下にオレンジの丈の短いシャツ&同じ色のぴったりとしたパンツ、
サンセットカラー縁のスポーツサングラスをカチューシャのようにかけている
という出で立ち―――要は橙ずくめ。
青年=金のやや長いふわっふわ猫毛、琥珀縁のUV全面カットサングラスに隠れる金色の猫っぽいキリリとした瞳、ヒョウ柄の七分丈ジャケットの下に黒のシャツ&金スタッズ付きの白パンツ、やたら缶バッチをつけた金色のつばの白キャップという出で立ち――要するに金ずくめ。
女性は名を日暮呉乃(ひぐらし くれの)、
青年は名を皇神雪凪(すめがみ ゆきなぎ)という。
「ほれ。ブラックごっさ濃いーの。親切な兄貴に感謝しいや」
「アリガトー俺の下僕畜生(マイ・ブラザー)。愛してる」
「今明らかに漢字違たろ!?なぁ、明らかに違たろ!?」
ちぐはぐ兄妹。
支離の橙なる人類最強、滅裂の黄金たる人間失格。
彼らは今、物語の始まり(プロローグ)作成に血道を上げていた。
四凶神(ディストーション)に始まり、一夜(ひとよ)一日(ひとひ)に
屍(しかばね)、一宮(いちぐう)。
彼らがこれから始める『感謝祭(カルネヴァーレ)』の為に。
彼らの繰り広げる『御祭騒ぎ(フェスティバル)』に伴う、
会場(フェスタ)作りを。
彼ら――――――――『盛大な宴(バッカナル)』の為に。
皇神はこれ以上この妹と話していてもらちが明かないと
ポケットからラインストーンを散りばめた携帯電話を取り出して、
9桁の番号&通話ボタンをプッシュ。
「もしもーし。鶸(ひわ)君?俺やけど、零落(れいらく)ちゃんなんて?
――――――うん。へぇ、ふん。わかった。ほな」
そして傍らの妹―――日暮に告げる。
「零落ちゃん、なんも問題無いて。要するに――全員集合や」
それを聞いて、日暮はシニカルに微笑む。
「All right」
そしておもむろにマイクつきヘッドフォンを取り出し、
インターネット電話回線を全開、指定の番号(9桁×6)に対しての通話が
一時的可能に。
そして、突然電話回線がオンになった携帯を耳にあてがう彼らに、
彼女は一言だけ宣告した。
「よぉ。可愛い同胞(Worthless fellow)共。…バカ騒ぎ(BACCANO)の開幕だ」
《To Be Continue...》
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