青藍(せいらん)な日々

青藍(せいらん)な日々

第81話 マリーホルム33



さて、これから解る事は船体は重いですね。確かに、かなりの積載貨物を積む余裕があると言えるでしょう。船体の頑丈さも充分にある。ロングキール、バラストは2tでバラスト比は39.2%です。このヨットの船体デザインの重心の低さを含めて、復元性を見ますと、復元性消失角度は180度となっています。つまり、180度まで転覆するまでプラスの起きあがろうとする力があるという事です。こういうヨットは初めてです。重い排水量は微風にはスピードが出ない。しかし、強風時には強い。波あたりも 柔らかで、まさしく外洋向きのヨットです。排水量に対するセールエリアが16.9というのは、クルージングヨットとしては中程度、セールエリアが小さ過ぎず、大き過ぎずというところで、性格的にはCEカテゴリーの通りAというのはうなずける数値だと思います。ショートクルージングというコンセプトよりロングクルージングを意識したヨットですね。

艤装的にはフラクショナルリグ(9/10)、マストコントロールをやや意識しており、セルフタッキングジブが標準というコンセプトはロングクルージングだけども、シングルハンドによる容易な操船という事を加味し、ややショートクルージングでもこなせるような、そういう造船所の意識が見えます。ただ、ジブをジェノアに変えてやれば、セールエリアを稼げる。重い船体に広いセールエリアとする事も考えられる。

こういう風に見ていきますと、ヨットのコンセプトが大まか見えてくると思います。それで、このヨットの性格が把握できますので、だいたい乗ってみるとどのような感じなのかも想像つくでしょう。それで自分のコンセプトと照らし合わせてどうかを検討されると良いでしょう。

これまで取り上げました3艇はいずれもコンセプトを明確に打ち出したヨットです。モデル数も少なく、造船所のカラーを色濃く出した小規模生産の造船所、ある一定のコンセプトに特化した造船所です。こういうヨットはコンセプトさえ合えば、最高のヨットとなるでしょう。

一方で、モデル数も多く、大規模な生産をしている造船所もあります。そういう造船所はどういうコンセプトを持って建造しているでしょうか。次から取り上げていきたいと思います。



© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: