時の旅人

時の旅人

その24


 その後、街を歩いていて彼らと会うことがあったが、その時も僕は『先生』なのだった。もう悪いことなど出来やしない。
 夏期スクーリングで、不安のあった「西洋史」で不合格をだしてしまい、落ち込んでいた時も、彼らの屈託のない笑顔に救われた。
「先生、頑張って下さいよ!」
 そう、行く道は行くしかないのである。三十過ぎて夢を追いかけたとして何が悪い、そんな人間が少しくらい存在してもいいではないか。味気もそっけもない生活が全てではない。かつて僕の生き方を批判した人間もいる。しかし笑いたい奴は勝手に笑えばいい。薄暗いホテルの部屋で、僕はこれからも夢を実現させるために前進しようと誓った。 
 五時起きだったうえ、一日中歩き回ってしまったので強い眠気が襲ってきた。僕はスタンドの明かりを消した。



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