ほぼ日刊三浦タカヒロ。

「風土とともに。」



いま、私の傍らには、祖父が丹精を注いで編み込んだ「えんつこ(嬰児籠)」があり、もうそろそろ2ヶ月になろうとしている長男がその中で寝ています。ベビーベッドよりも、どうもこちらのほうが落ち着くようです。
田んぼを見てまわると、寒風をうけながらも芹がじわじわと生育していて、すぐ近くの畑の土中では茗荷と浅葱が、根っこという根っこを力ませて春を待っています。
昨年は、農の営みの持つ生活技術、地域と年代世代のつながりを強く意識した年でした。つとめて農村習俗というと、閉鎖的と十把一絡にされてしまいがちですが、結婚出産という節目で、立ち止まって考えてみる機会に恵まれたんだと、相方と私は捉えることにしていました。
一例として、地区に伝わっていた「謡曲」というものがあることを知り、それがきっかけで「しかいなみ」などの曲を式で謡っていただくことができました。そのときの場内の一体感には、えもいえぬ感動があったことが思い出されます。
最近周りの農家でよく聞く言葉で、「百姓の来年」という言葉があります。
“よし来年があるさ”と、いつも前向きに考えていこうという意味の言葉です。
曾孫へのえんつこづくりで藁細工に目覚めてしまった祖父は、その勢いで蓑まで編みあげてしまいました。私の曾孫のためにも、今年は藁細工用の品種の作付けを考えてしまってもいいのかもしれません。
農業はビジネス傾倒の性格だけのものではなく、農地や作物、そして生態系という農村環境の四季の恵みを媒介して「世代を越えて地域資源を保全管理する生涯の学びの場」というものじゃないのかなぁと、最近やっと確信を持ちはじめています。


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