しろねこの足跡

しろねこの足跡

転校



教室は残酷でした。
いつの時代も男子は、かわいい顔の女子を無条件に人気者にしてしまいます。彼らが、かわいいと判断しない女子は明らかに違う態度です。

ミカちゃんはとてもかわいい女の子でした。
かわいい女の子は男子にもてはやされて、自信をつけますます快活にふるまい、教室の自分の領域を広げていきます。

リエコちゃんは強引なまでの自己主張ができる強さをもっていました。

おじょうさんは・・・・
おじょうさんは、きっと大人になればお化粧がよく映えるであろうシックな顔立ちでしたが、それは小学生にわかるようなよさではありませんでした。

性格もおとなしく、顔も地味なおじょうさんにとってもはや教室は窒息しそうなほど息苦しい場所になっていました。

でも具体的に、「いじめ」られていたのわけではないので、おじょうさんはこの息苦しさを誰かに証明することはできなかったのです。

無論、そんなことはおじょうさんの小さな誇り高いプライドが許さなかったでしょうが。

そんなとき、おじょうさん一家に一大転機がおとずれました。
おとうさんがいまいる北方の地方都市から、大都会に転勤になったのです。
それは、まだ小学生のおじょうさんにとっては転校を意味しました。
おじょうさんは少し、ほっとしました。
だって、もう教室にはおじょうさんの呼吸する場所はなくなりかけていたのですから。

もしかしたら、おじょうさんも転校生になればミカちゃんのようにみんなから受け入れられるかもという、甘い期待をもったりもしていたのです。



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