しろねこの足跡

しろねこの足跡

ブレスレットにこめられた意味


同年代の女性として、ちょっとなぁと思うこともある。

たまにプラチナのリングや18金のクロスペンダントをつけたりするが、これらは単にしょっちゅう磨かなくてもいいからという理由で購入された。

ピアスはあけていないので、耳朶をかざるものは持っていない。

私には、一生日常では着けないであろうアクセサリーはピアスのほかにもうひとつある。
ブレスレットである。

表向きの理由は、何か作業を行うときの邪魔になるからと至極もっともなものである。
だが、本当の理由は違う。

なんとなく恐いのである。手錠のような拘束感を感じずにはいられないのである。おそらく、この感覚は昔のある出来事に起因していると思う。

もうだいぶ、だいぶ前のこと。
当時、親しくしていた男性との間に埋めようのない溝ができ、ふたりともそれを悟ってあとはどちらが先に言い出すか、という雰囲気だった。

突如として、その男性は普段は乗らない車で私の実家まで連絡もなしにやってきて私を呼び出した。
そして、ブレスレットをプレゼントしたのである。
よく考えれば、そのデザインはブレスレットという語感に似つかわしい繊細なチェーンや細工物ではなく、バングルに近い感じのものだった。

私はその男性から、アクセサリー関連のプレゼントというものをもらったことがなかった。誕生日やクリスマスにどんなにお願いしても、である。

強引に「これプレゼント」と左手につけられたそれは、恐怖以外の何者でもなかった。

ブレスレットのそもそもの由来も、愛する人をつなぎとめておく手錠のような意味合いがあったと聞いたことがある。
おそらくその男性は、そんなことは知らなかったと思う。

なのに、とっさに選び取ったものがそうだった、というのは感情というものについては人間は昔から根本は変わっていないのだろうか。

私にとっては、生生しい感情をかきたてる存在である。


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