瑠璃の石話・つれづれ

◆インカローズ


◆インカローズ◆

インカ1


最初に身に着けた石、ラピスラズリに一番合わせたいと感じたのがインカローズという石でした。鉱物名は「ロードクロサイト」と言いますが、私は敢えて「インカローズ」と呼んでいます。

ラピスラズリの非常に直線的な、時には痛みを生じるほどの突き抜け感、甘えを許さない確固とした方向性を、和らげるのではなく、より滑らかに進むことを促す石として、このインカローズがありました。

先へ進むことを阻む内的な深いトラウマや、喪失感といったものを、その光が満ちることによって生命の尊厳、生きることというこの上なく力強い想いを実感させるのがこのインカローズです。

ShopLapisを立ち上げて、一番仕入れで気を遣ったのが、ラピスラズリ・ルチルクオーツに並んで、このインカローズでした。

初めて私が手にしたインカローズは、縞の入ったピンク色の、恐らく一般的にインカローズのビーズとして出回っていたものでした。

当時出回っていたインカローズにも様々な質のものがあり、美しい薔薇色と白のコントラストが見られるものから、原石によく見られるグレーの部分が混ざるものまでいろいろありました。

美しい薔薇色の石は相応に価格も高く、それでも質を重視してより良いものをと求めていました。

ある日、仕入れ先から「綺麗な縞のないインカローズが入荷しました」との連絡をもらい、価格を聞いてみたところ、当時ちょっと腰の退ける金額を提示されました。

それでもその価格であればさぞや美しい石だろうと相方に相談したところ、相方曰く「でももうもらうって決めてるんでしょ?」・・・図星でした。

その時に入荷した石が、今私の店で「AAA」としてご紹介しているグレードの、8mm球のビーズでした。



初めて眼にする紅色に輝くインカローズ・・・これは私にとって「インカローズ」という石に対する概念を大きく塗り替えるものとなりました。

愛らしく、ハートへ働きかけるふんわりとした暖かな石として向き合っていたインカローズが、生命力に満ち溢れる紅色の光を放つ豊かなキャパシティを顕現している・・・私はますますインカローズという石に魅せられることとなりました。

その後、仕入れ先の人に更に高グレードのインカローズが存在するという話を聞き、ぜひにとお願いすることになりました。

それが、現在までに扱ったインカローズという石の中でも最もハイグレード、ビーズとしては恐らく最高の品質を誇るSpecial-Aグレードのインカローズ・10mm、そして12mm、14mmです。

これらの、もはや自然の生み出した芸術作品とも言える素晴らしいインカローズは、その殆どが望まれてお嫁に行きました。

過去に一度きりの入荷という稀少な石でしたので、手元にはもうサンプルとして置いてある上の画像のブレスレットのみとなっていますが、また今後チャンスがあればぜひ扱いたい石のひとつです。

これらSpecial-Aグレードのインカローズの少し後に入荷した石もまた見事なものでした。
縞入りのSpecial-Aグレードと銘打っていますが、その紅色部分の発色は先のSAグレードに勝るとも劣らない美しさで、それに白い縞模様がさらに味わいを加えています。

「縞入りの方が好き」という方も多くおられますが、その方々はこの石の何とも言えない優しさ、柔らかさといった部分を感じ取っておられるのかもしれません。


そしてインカローズという石を語る上ではずせないのが、グレードは提示していませんが、大変に稀少なペルー産のインカローズです。

このペルー産のインカローズ・・・クラックのないまろやかな質感、暗赤色の独特の風合いを手にする度に、日本の北海道産のインカローズを思い起こさせます。

通常インカローズの原石は、ノジュール(塊)、或いは立方体の結晶で産出するものですが、このペルー産のインカローズは犬牙状の結晶で産出することが知られています。

ペルーという土地への憧憬・・・日本人に何か近しさを感じさせる、非常に繊細な、かつ安定感に溢れる石でもあり、個人的にとても親近感を感じさせるインカローズでもあります。



さて、「奇跡のインカローズ」として、ギャラリーなどでご紹介してきた石があります。これは、アメリカ・コロラド州の「Sweet Home Mine」という鉱山で採れるインカローズです。(Sweet Home Mineは、最近閉山してしまったそうで、今後は現在流通しているもののみ入手可能となるそうです)

そのインカローズらしからぬ透明感・発色・・・「奇跡」としての表現以外を思いつかないほどの感動を与えてくれる石。

このSweet Home Mineのインカローズを初めて仕入れ先の方に見せていただいた時、何も言わずに手渡され「・・・これは?」と尋ねると、その方が「水晶を赤く染めてみました」と言い、「へぇ」と不思議な気持ちで眺めていると、「嘘です(笑)インカローズですよ」と。

着色した水晶と言われ、納得した私も私ですが、それほど「透明感のあるインカローズ」というのがピンと来なかったのだとも言えます。(お茶目な担当さん、いつもどうもありがとうございます)

過去に数度エッグが入荷し、そのうち幾つかは望まれてエッグのまま、或いは金線でペンダントとして、お嫁に行きました。

何度手にしても、いつも変わらぬ感動を伝えるSweet Home Mine。
この石は、私がインカローズという石に惹かれ、こだわり続けて来たこれまでの課程に於ける最大の歓びであり、感動であり、そしてインカローズが与え得る最高の光を実感させてくれたものでもあります。

インカ2
Sweet Home Mine






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