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2023.02.10
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マッティ・ゲショネック「ヒトラーのための虐殺会議」シネ・リーブル神戸 ​​ 今年になって、この映画が上映されていることは知っていました、 ナチス映画 ホロ・コースト映画 といえば、なんとなく観に行ってしまうのですが、題が ​「ヒトラーのための虐殺会議」​ とあって、
「ヒットラー暗殺とかの陰謀映画かな?」
と、勝手に勘違いして 「まあ、どうでもいいか。」 とか思っていたのですが、題名を読み返して、どうもそうではないらしいことに気づいて、 「まあ、観てみましょう。」 と思い直してやって来た シネ・リーブル でしたが、 あたり! でした。​​
​​ 観たのは ​マッティ・ゲショネック監督​ ​「ヒトラーのための虐殺会議」​ です。​​
​​​  原題 を確認すると ​「Die Wannseekonferenz」​ で、そのまま日本語にすれば ​「ヴァンゼー会議」​ です。これなら、勘違いは起こりません。 ​1942年​ 、ヨーロッパのユダヤ人1100万人の絶滅計画を立案・決定した歴史に残る会議です。​​​
​​​​​​​ 出席者は ゲシュタポ 長官ハイドリヒ親衛隊大将 に召集された 13人 と、資料及び計画の実質的提案者であり、 ゲシュタポ ユダヤ人担当課長 だった アドルフ・アイヒマン親衛隊中佐 、そして、 書記 インゲブルク・ヴェーレマン女史 16名 です。​​​​​​​
​  ​ゲシュタポ​ と通称で書いていますが、 ​国家保安本部、保安警察​ のことです。まあ、 ​秘密警察​ というほうがわかりがいいですかね。​
 映画は、会議の朝から会議終了までの、まあ、いわばドキュメンタリー仕立ての作品でした。もちろん BGM など使われません。 ナチス映画 に挿入されることが多い歴史的なフィルムも一切使われていません。良質の室内劇の趣で、会議の進行と出席者の発言がくっきりと刻印されていきます。
 少し調べて驚きましたが、この会議の 議事録 は残されているらしく、その歴史的な 議事録 が忠実に再現されていた印象です。
​​​ 会議が終わり、議場であった ヴァンゼー湖畔 の別荘を去っていく人々や、今晩、どこかのキャバレーで気晴らしをすることを呼びかける若い将校が映し出され、最後に アイヒマン を労い満足げに任地に帰る ハイドリヒ長官 の車が出たところで映画は終わりました。​​​
​ 映画学校の歴史好きな学生が、まじめに作り上げた歴史映画といった印象でしたが、唸りました。決定された内容に今更驚いたわけではありません。映像に映し出されている80年前の人びと振る舞いが、現代の高級官僚社会を彷彿とさせたことが驚きでした。​
​​​​ 会議を主催した ハイドリヒ長官 は、この半年後に死亡しますが、有能な事務官僚であった アイヒマン は戦後まで生き残り、 ​アルゼンチン​ での逃亡生活中に ​モサド(イスラエルの秘密警察)​ に捕えられエルサレムでの裁判の結果、 ​絞首刑​ になりました。 ​1962年​ のことです。​​​​
​​ 「一人の死は悲劇だが、集団の死は統計上の数字に過ぎない」 ​​
​ 一人だったか、百人だったか忘れましたが、こういう言葉を残したと言われている人です。そのあたりについて 哲学者 ​ハンナ・アーレント​ ​「エルサレムのアイヒマン」(大久保和郎訳・みすず書房)​ の中だったかで​
「彼は愚かではなかった。完全な無思想性―これは愚かさとは決して同じではない、それが彼をあの時代の最大の犯罪者の一人にした素因だったのだ。」​​
​と評して、いろいろ話題になりました。​
​​​​​ 絶対的権力者に媚びることで出世や保身を目指している ハイドリヒ という人物やほかの官僚たちをどう考えるかということにもまして、有能な官僚であることの 無思想性 こそが 「時代の最大の犯罪者」 を生み出すと アーレント が言ったのは50年以上前のことですが、映画を観終えて、 コロナ騒動の顛末 や、 オリンピック汚職 の記事が新聞紙上をにぎわしている様子に、 マッティ・ゲショネック監督 の意図というか狙いがここにあると感じたのは穿ちすぎなのでしょうか。​​​​​
 何はともあれ、 ​マッティ・ゲショネック監督​ 拍手! でした。
​​​​ 余談ですが、映画の中に時代を映すものは、まあ、親衛隊の制服とかは別にして、ほとんどありません。ただ、官僚たちが公用車で乗り付ける、今の目で見ればクラッシク・カーですが、そのロゴが ​ベンツ​ なのですね。 ​メルセデス・ベンツ​ が正式名で、 メルセデス というのは ユダヤ系の女性の名前 だと思いますが、戦時は 国策会社化 していて、この映画では 公用車 として出てくるんですね。で、戦後も、まあ、ご存知の通り ​世界のベンツ​ なのですね。そのあたりが、ちょっと、面白いと思いましたね(笑)。​​​​
監督 マッティ・ゲショネック
製作 ラインホルト・エルショット フリードリヒ・ウトカー
製作総指揮 オリバー・ベルビン
脚本 マグヌス・ファットロット パウル・モンメルツ
撮影 テオ・ビールケンズ
美術 ベルント・レペル
衣装 エスター・バルツ
編集 ディルク・グラウ
キャスト
フィリップ・ホフマイヤー(ラインハルト・ハイドリヒ ゲシュタポ長官・親衛隊大将)
マキシミリアン・ブリュックナー(カール・エバーハルト・シェーンガルト ポーランド保安警察およびSD司令官、親衛隊上級大佐)
マティアス・ブントシュー(エーリッヒ・ノイマン 四ヵ年計画省次官)
ファビアン・ブッシュ(ゲルハルト・クロップ ナチ党官房法務局長)
ジェイコブ・ディール(ハインリヒ・ミュラー ゲシュタポ局長、親衛隊中将)
ペーター・ヨルダン(アルフレート・マイヤー 東部占領地省次官・北ヴェストファーレン大管区指導者)
アルント・クラビッター(ローラント・フライスラー 司法省次官)
フレデリック・リンケマン(ルドルフ・ランゲトヴィア 保安警察及びSD司令官代理、親衛隊少佐)
トーマス・ロイブル(フリードリヒ・ヴィルヘルム・クリツィンガー 首相官房局長)
サッシャ・ネイサン(ヨーゼフ・ビューラー ポーランド総督府次官)
マルクス・シュラインツアー(オットー・ホーフマン 親衛隊人種及び移住本部本部長、親衛隊中将)
ジーモン・シュバルツ(マルティン・ルター 外務省次官補)
ラファエル・シュタホビアク(ゲオルク・ライプブラント 東部占領地省局長)
ゴーデハート・ギーズ(ヴィルヘルム・シュトゥッカート 内務省次官)
ヨハネス・アルマイヤー(アドルフ・アイヒマン ゲシュタポユダヤ人担当課長、親衛隊中佐)
リリー・フィクナー(インゲブルク・ヴェーレマン 書記)
2022年・112分・G・ドイツ
原題「Die Wannseekonferenz」
2023・02・09-no016・シネ・リーブル神戸no173
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最終更新日  2024.11.09 20:58:05
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