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一つ目 が 「ふかくさいなりおんまえちょう」 で、 伏見稲荷 の 門前町 です。 二つ目 が 「よしだいずみどのちょう」 で、 京都大学 の 医学部 のあたりの町名です。ついでなので、残りの二つを説明すると、 三つ目 が 「きっしょういん、くぜばし」 です。 南区 の 桂川沿い の住宅地です。 四つ目 は JR京都駅 の 東 、 河原町通り を南に下ってきた市電、今なら市バスが大きく右にカーブするあたりから南に広がっている町です。 で、 目次 にはその 四つの町の名 が並んでいるというわけです。「深草稲荷御前町」、「吉田泉殿町の蓮池」「吉祥院、久世橋付近」「旧柳原町ドンツキ前」
細身の銅製のカップを水滴が包んで、垂れていく。アイスコーヒーが、ストローでそこから飲み干される。二人連れ、ともに三〇前後の女性客の片方が、顔を上げ、「石峰寺には、ここからどうやって行けばいいのでしょう?」と尋ねた。「あ、若冲さんのお寺やね」 「・・・・ランプ小屋って、どこですか?」
こちらが忙しい時間帯にかぎって、観光客らは通りがかりに、店の入り口の扉から頭だけ突き入れたりして、いろいろ訊いていく。この喫茶店でコーヒー一杯飲んでいく時間も金も惜しいらしい。
「ランプ小屋?」
常連客のベビーカステラ露天商、辻さんが、カウンター席から塩辛声で観光客に訊き返す。
「なんやねん、それ」
明治から大正ごろまで、東海道本線の鉄道は、京都から東へ、今のように東山トンネルを抜けるのではなく、ここ、稲荷駅を通って山越えで山科方面に向かっていた。当時、客車内や駅の照明、夜間の保線の作業などには、ランプを使った。だから、駅には、大量のランプを保管、管理しておく、堅牢な小屋があった。それが「ランプ小屋」で、現存するものでは、この稲荷山駅構内にあるレンガ造りのの小さな小屋が、日本で一番古いのだそうだ。
「ランプ小屋はね、すぐ、そこですわ」伸びあがって、道沿いの駅の方向をトオルは指さす。 「ただ、なかを見学するには、あらかじめ頼んでおかんと」
辻さんが笑う。
「 なんぼ観光やいうたかて、そないなもん見て、おもろいんかいな。稲荷さんの千本鳥居、山上まで歩いてみたほうが、よっぽどええがな。ここをどこやと思たはるん?伏見稲荷大社の社頭、深草稲荷御前町(ふかくさいなりおんまえちょう)どっせ」
「観光名所の京都を見たい人たち」 の視線から、少しずれたところにある 京都 という町で暮らしている普通の人びとの暮らしを描こうとしている作品です。もう少し言えば、忘れられ、失われていく町の名とともに、そこで暮らした少年を作家に育てたある時代の姿を作品として残そうという意図を感じさせる作品でした。
「地名」が失われていくということの意味 について考えさせられた作品群でした。ただの観光小説ではありません(笑)。
追記
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