殺風の風~さっぷうのかぜ~


尾張の国に住む一人の少女・殺風は
幼い頃に母と父が謀反人として処刑された。
なにもかも失った殺風は
ただ街を彷徨うだけだった。
ある日・・。
卯月の半ば頃だった。
大名の姫君が
花見に行く途中だった。
道に迷ってしまったのだ。
それを見た殺風は
家来に道を教えた。
「ありがとう。」
姫君は輿から降りてお礼した。
殺風は
ただ頭を下げて帰ろうとしたとたん、
「あなた、もしかしていつぞやの・・。」
姫君は殺風を追いかけた。
「何よ!?」
殺風は手を払おうとしたが姫君は
「いつぞやの・・殺風姫・・?」
「え・・?」
「こんなぼろぼろな姿になって・・お父上とお母上が
謀反人だったものですものね。
つらかったでしょう?
私のお屋敷に迎えるわ。」
「いいわよ!」
「でも・・。」
と殺風はいったん止まってから
「やっぱ行かせてもらうわ。」
「やっぱりそうだと思ったわ。」

つづく


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