ずっとついててやらな あかん


お母さんは泣いていた。長女は「里奈ー!しんじゃだめだよ!」って、泣いていた。下の二人は、まだ小さく、わかっていない。
私がずっと働いていたから、お母さんは子供たちの面倒をずっとみていてくれて、特に里奈は、おばあちゃん子だから、随分かわいがってくれている。
その子のこんな姿を見るなんて・・・。

みんなが帰った後、旦那が「里奈は、今日はお父さんとお母さん、独り占めやなぁ・・・。」「三人だけでこんなに長い時間いたことないもんなぁ」って言った。・・・うん、そうやな・・・初めてやな。
モニターの血圧の数字ばかりが目に入る。点滴を入れてはいるが、血圧は30くらい。全然上がらない。
里奈の目から涙が流れた。自然現象とはわかってるけど、しんどいんかなー・・・。
状態は悪くなるばかり。

先生は、「もし、このまま助かっても、意識は戻らないと思います」と、おっしゃった。それって、植物人間ってこと??
旦那は、この言葉で覚悟したらしく、「このままずっとそばについといたらなあかんで」と。
旦那は、朝刊の配達があるので、仕事へ・・・。「里奈、待っとけよ」と、声をかけてる。
一人残され、心細くなった。里奈の好きなブドウジュースを、枕元に置いてやった。「はよ起きて 冷たいうちに飲みや」
いろいろ話しかけた。

もうすぐ入学式やのになにしてんのよ、里奈。

今日はお花見に行こうと思ってたのに。

お姉ちゃん待ってるよ。

ごめんな・・・。いつも怒ってばっかりして。

ランドセル買うたとこやのに。

あきらめと、望みと入り混じる。助かって!って思いと、しんどいなら、楽になっていいよって思い。
楽になっていいよって思ったから、死んじゃったのかな・・・。


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