野の花・野の豚の自己研究に根ざす、社会的な共生の道を探求する発言・2015年7月1日から

野の花・野の豚の自己研究に根ざす、社会的な共生の道を探求する発言・2015年7月1日から

厚い雲の裏は銀色(1993・8月作)



始業直前、工場の窓際の役席に座って私は
鉄格子の窓の向こうに広がり
ひきりなしに雨を降らせている
厚い雲に蔽い尽くされた梅雨空を見上げた

そして私は思い出した
今日の朝食の前に英和辞典をめくっていて
<cloud>という単語を引いたときのことを
Every cloud has a silver lining
(どんな雲も裏は銀色に光っている>
(どんな悪いことにもよい面がある)
とその単語の例文に書いてあったのを


私は一瞬空を見上げながら幻視した
絶え間なく雨を降らせている暗いこの空の
反対側のはるかかなたから
太陽光線がさんさんと降り注いでいる雲の上を
まばゆく輝き広がっている雲の海を
その上にあくまで深い青空があるのを

私は視線を暗い工場に戻して想った
始業直前の緊張した空気を感じながら
この重苦しく感じられる労役生活の背後にも
深く見とおせばまばゆいひかりの世界があるに違いないと
急にあふれてきた暖かいものとともに
強く想った




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