『ミカ!』


伊藤たかみ著

小学6年生であるユウスケとミカの兄弟を中心にわりと普通の小学生の日常がいきいきと描かれている。
よく、思春期の少年少女を扱った小説は多いが、これはその一歩手前、思春期の入口にいる少年達の物語だ。
その日常が、ユウスケが語り部となって語られている。
だからわからない気持ちはわからない。ヘタに解説などしていない。
そこに好感が持てる。

この物語で面白いのは、「オトトイ」と言う名前の、モグラのような不思議な動物が出てくることだ。
これが結構、少年ユウスケと特に少女ミカの成長を暗喩していて面白い。
失っていくものへのかなしみの涙で「オトトイ」は成長し、オトナへと成長していくうちに「オトトイ」は「アサッテ」になる。
この本を読むと、郷愁は子どもにこそ強く現れるのではないかと思わされる。

全体的にほんわかとして、小学生の時に感じた異性への思いと言うものも思い出されて、くすぐったい。
とても面白いと思うのだけど、唯一気になったのはユウスケがオトナすぎたこと。
これは作者が語り部としてユウスケを選んでしまったからしょうがないのであるが、ぼくは徹底して「わからない」とした方がよかったのではないかと思う。


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