ウソのつけない男


根がマジメだし、気持ちが素直だし、
普段やりなれていないから余計だろう。

大抵は、お弁当持たせたのに外食して、
でも「食べたよ」とシラを切るものや、
寄り道して帰りが遅くなったくせに、
「ラッシュで渋滞だったから」と、本当に 
些細なことなので、いちいち目くじらを
立てる必要もないなと聞き流している。

念のために言っておくけど、けっして私、
寄り道しちゃダメ、買い食いしちゃダメ
とか言ったことはないんだよ。
(小学生じゃあるまいし)
お弁当だって本人が持っていくって言う
から、パックしてるだけなのに。

だいたい、夫はウソをつく前からすでに
ヘンな間合いや微妙な表情で、
「ぼっ僕は今からウソをつかせて頂きます」
と、言わんばかりの弱腰ビームを発する。

しかも、夫の場合はおマヌケな「証拠」を
残していることが多い。

例えば、レストランやブックストアの
レシートを、見てくださいとばかりに
その辺に置いたままにする。

だから、「あれっ、昨日は確かお弁当
食べたって言ってなかったっけ?」
などと、私の知るところとなる。

考えてみれば、片道30分の通勤で
どんなに渋滞だったとしても3時間以上
かかるなんてオーバーだよと気付く。

やっぱりおマヌケな夫、笑えるぅ~。
せっかくだから、ご丁寧にとっといて
なにかの時の「切り札」に使おうかなと
よからぬことを考える妻なのだけど、

ランチのレシート($7.50也)じゃあねぇ。

浮気の証拠には、逆立ちしても及ばない。
っていうか、極めて迫力なし。
何を問い詰めたらいいのかも分かんないし。

「ああっ、私の大好きなトルティーヤセット、
自分だけ食べてズルい、私はお昼、みそ汁
ぶっかけゴハン食べたんだからね!」とでも
怒ればいいのだろうか。

第一、夫は私に怒られるのが怖いのか?
私って、そんなに恐い妻なんだろうか?
自称「愛妻」の妻は、「恐妻」かもしれない夫を
勝手に思いやり、自問自答する。

これじゃ、まるで私が高校生のときの、
オールナイトでディスコ(死語?)に行きたいが
ためについた、「友達の家で勉強する」という
みえみえのウソと一緒じゃないか。

(すごい具体的な例えすぎて、自爆)

とにかく、そんな小さなウソをつくのにも
夫の心臓バクバクしてんだろうなぁと思えば、
かわいいもんだ。

レシートをびりびりと破り、ゴミ箱にポイッ。
こんなことくらいで、妻は根が超単純だから
自分を世界一寛大だとうぬぼれてしまう。

そして、
せめてもの罪ほろぼしに、今夜は夫の好きな
ビーフシチューを作ることにするか。
そんでもって、食後は肩でも揉んであげよう。
特別出血大サービス夫デイだ。

今頃、夫は会社でくしゃみか寒気でもしてるに
違いない。

妻の密かな夫サービス大作戦は続く、イヒヒ・・・。


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