トリプルの悲劇~前兆~



レストランの味もサービスの質も
洗練されてるとは言いがたいけど、

そう、お値段だけは一丁前なのだ。

うちの夫の好きなジャパーニーズ
ステーキハウスに行った金曜の夜、

のこと、

こんな展開になろうとは、
ああ、全くもって誰が一体予想だに
出来ただろうか。

その店は、うちの近所に乱立して
しのぎを削る同種の商売敵の中でも、

わりとヒイキにしていた店である。

他のジャパニーズステーキハウスと
同じく、日本人じゃないアジア人の
経営なのだが、

ベ〇ハナやショ〇グン等といった
チェーン店とは一味違った雰囲気が
ヨロシイと思っていた、

のだが・・・・・。

金曜の夜7時半というだけあって、
比較的その店は込んでいた。

スシバー辺りにたむろする他の客
同様に、

「少しお待ちください」と、

白いポロシャツに黒い前掛け姿の
一見オバサン風なひっつめ髪女性に
案内される。

私は、カウンターはあれども一向に
姿の見えないホステス(案内係)を
探そうと目をグルグルさせていた。

込んでいる時は、入ってきた順に
リストに名前を載せてもらわないと、

テーブルが空いても後からきた客が
先に案内されてしまうことがある。

しかーし、

ホステスは現れる気配すらなく、
代わりにそのオバサン風の女性が、

スシバー辺りをいそいそと、
しつこいようだが「前掛け姿」で
動き回っている。

私は本気で、彼女をバスボーイ※
だと思っていた。

※客が帰った後にテーブル上の
 片付けをする人

だって、そういう格好だったし、

第一、案内係を置くぐらいの店
だったら、

大抵カワイイ子がやってるもの
なんだけど。

案の定、
私たちのすぐ後に入ってきた、
子連れファミリーが案内された。

こっちも同じ2人の子連れである。

うちの夫は温和でこういう時は、
ひたすら待ち続けるタイプなので、

いつも悪役を買って出る妻が、
あのオバちゃんに交渉しに行く。

そして、
オバちゃんはハッとした顔をし、

さっきのファミリーとおんなじ
テーブルに私たちを押し込んだ。

はあ、

何はともあれ、座れたんだから
いいじゃないの。

そんな仏心を出したのが
そもそもの間違いだったのか、

はたまた運命のイタズラなのか、

悲劇は、第2・第3と手を変え
品を変え、

私たちとその同席のファミリーを
襲うのだった。


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