トリプルの悲劇3~迷走~



ワインとビールの飛沫のかかった
顔を拭いて顔を上げたところで、

気分的にゼンゼン浮き上がれそう、

・・・も無い8人の客。

そう、それは我が家とお隣の家族。
子供の誕生日どころの話ではない。

ここまで、ぶきっちょなサーバーは
お目にかかったことはないが、

この手の「粗相」はレストランには
付きものである。

しかしだ、

起こしてしまった「粗相」をいかに
うまく取り成すかが店の責任者の、

腕の見せ所でもある。

お隣ファミリーが、3度サーバーに
頼んで、やっとこさ現われたのは、

そう、あの前掛けオバちゃんだった。
もう、ひっつめ髪がほどけかけてて、

山姥(ヤマンバ)みたいな感じ?

良い子にしないと食っちゃうぞ~、
って、それはナマハゲか。

目の前の肉焼きシェフにちょこっと
聞いてみれば、

オバちゃんは、「オーナー」だと言う。

いいかげんにせいよ、
てっきりバスボーイだと思ってたから
声かけなかったけど、

アンタ、ずっとそこに居たっしょお!
出番遅いっていうかなんていうか、

それじゃ、
越後のちり緬問屋の隠居とか言って
実は天下の副将軍だったっていう、

水戸のご老公みたいなことすんな!
(って、説明長いわね)

そんでもって、
そのヤマンバ風オーナーが出した、
究極の腕の見せ所と言うのは、

なんと「10%ディスカウント」、

・・・いきなり、値段交渉かよ。

これが上品そうな奥さんの闘志に
火をつけた。

「アナタ、すみませんの一言も
なしになんなのかしら」

「そんなちっぽけなディスカウントの
ために怒っているんじゃないのよ」

「私たちのこんな姿をみて謝ろうと
いう気持ちはおきないの?」

・・・もう一気にまくし立てている。

それを聞いたオバちゃんは、

「だからこそ、ディスカウントを
差し上げんです」

この言葉に、今度は私がブチキレた。

たかだか、1割引きをさも偉そうに
言いやがり、

そんなはした金をどうのこうのって、
貰わないほうがずっといい。

吼える妻たちに、夫どもは傍観の構え。
これだからいざという時、役に立たない。

(でも、うちの夫の目は私に「行け!」
と言っていた)

この時、
すでにテーブルに着いてからゴハンに
ありつけぬまま30分以上が経過し、

寝る子あり、かくれんぼする子ありの
動物園のサル状態の我がテーブル。

こんな私に誰がしたぁぁぁって感じの
お手上げモードである。


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