ホテルのケーキはなぜ違う?元パティシエ助手が語る真相

ホテルのパティシエ(前)

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"パティシエ"と聞くと何を思い浮かべるだろうか。
またその単語から持つイメージはどんなものだろう。

 私が最初に思い出すのは、数年前に放映されていた「アンティーク」というドラマである。
出演していた滝沢くんとケーキが大好きだった私は、毎週欠かさず観ていた。
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 主演の藤木直人は現在のカリスマパティシエたちの人気向上に大きく貢献したという。
当時からパティシエをしていた私の師匠が言うには、彼を見るために女のお客さんが増えたそうだ。
社長から髪の毛を銀色にするようにも言われたらしい(笑

 今では普通に聞かれるようになり、パティシエ志望のたくさんの若い人が東京やフランスへ行くそうだ。
東京に有名なブランドケーキ店が集まっているのは言うまでもない。
自由が丘にはおしゃれでセレブな雰囲気のケーキ屋さんや、カフェが軒を連ねている。
ついにスイーツのテーマパークまでできてしまった。
中は甘い香りが漂い、静かでゆったりとした時間が流れていて、まさに夢のような空間ができあがっている。

 なるほど、パティシエに憧れを抱く気持ちもわかる。私もしばらく働いた今でも彼らには憧れや羨望という感情を持っている。
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しかし、なる前にある程度の知識が必要だと思う。
今回は私が見てきたパティシエの仕事やその裏側を紹介しようと思う。
とはいってもあくまでホテルのパティシエなので、
個人経営のケーキ店には当てはまらないことも多々あることは承知していただきたい。

 まず、基本的に朝はわりと早く、夜はわりと遅いと、言っておこう。

 ホテルでもホテル内のティーラウンジでは常時ケーキを販売していたので、
少なくとも喫茶タイムが始まる1時間前にはその日に売り出す分のケーキを仕上げなければいけない。
私の師匠はその作業を一人でやっていたが、10種類以上のケーキを毎日出していた。

 季節によってケーキの種類も変えていた。
季節だけでなく、その土地の需要に見合った種類のものを考えなければならず、なかなか難しかった。

 私のホテルは中都市にあり、庶民的な客が多かった。客層は40台~50台ぐらいの主婦層が多かったため、
モンブランやショートケーキといったいわゆる昔なじみのケーキが好まれる傾向にあった。

 私の師匠は若く、向上心が強かったので、流行の素材を使ったものや、アート的な形の新作を次々に生み出したが、
それでもオーソドックスなケーキも負けず劣らず人気であった。

 それらの商品のアイディアを考えることも試作するのも、もちろん試食することも(笑 仕事の一部である。
どれも楽しく飽きることがなかった。よく、私に
「今どんなケーキが食べたい?」
と聞いては、新作の参考にしてくれた。

 さて、ホテルのパティシエの仕事はまだまだある。
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ホテルの厨房では主に
・パーティー/宴会 ・婚礼 ・イベント/ショー ・会食 ・レストラン/ティーラウンジ ・出張先でのサービス
というように業務が分かれていたが、ケーキ担当の部署はそのすべてに関わっていた。
 パーティー/宴会ではたいていビュッフェ形式で料理が提供されるが、
締めくくりとして最後に銀盆にのせたプチデザートを出している。
私のホテルではこのデザートがありがたいことに評判が高く、お客さんも期待していることが多かったので
(特に女性客が多い場合)いつも気合を入れて用意していた。
だいたい100人のパーティーでは10種類以上のケーキを人数の2倍近く出していた。
プチデザートといっても1つ1つ生クリームとフルーツで色とりどりデコレーションしていたので、立派なケーキだ。
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 婚礼では、コース料理の一部であるデザートとウェディングケーキを作る。
婚礼メニューはそれなりに高額のものなので、それなりのものを提供しなければいけない。
 お皿にケーキをのせ、ソース、フルーツ、ハーブ、飾りチョコなどで美しく盛りつける。
 ウェディングケーキも値段はともかく、新郎新婦にとっては一生に一度の結婚式のシンボルでもある。
やはり責任は軽くない。
大きなケーキのデコレーションをするのは難しく、経験と技術が求められる。
すばやく、美しく仕上げなければいけない。
 しかもお客さんによって要望は異なり、中には消防車のケーキを作ってほしいということもあった。
どんなに技術があっても、見たこともないものを作るのはかなり大変である。

 私にとっては、良い経験のひとつとさせていただいた。

 さらに、婚礼メニューの中にはデザートをお客さんの前でサービスしなければいけないものもある。
フライパンの上でソースをフランベして、炎の演出をするのだ。
私はさんざん教えてもらって練習して本番に臨んだのに、
炎がゴォーっと向かってきて、髪の毛とかまつげとか燃やしてしまったこともあった(笑

 婚礼一つとってもたくさんの仕事があり、すべてを覚えるには時間がかかる。
でもその一つ一つにエピソードがあり、いい思い出になったのも事実。

 ということで、今回はここまでにして次回、そのほかの仕事について紹介したいと思う。                              


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