嫁様は魔女

嫁様は魔女

硝子窓(キース)



まだまだ明るい。

「ただいまーあ。」と抑え目に声をかけて家に入ると
玄関先で奏人を抱いた貴信がニヤニヤ笑って立っていた。

「お帰りー、ママ。」

奏の右手を取ってフリフリする。

「それってバイバイやんー。
ようウチの帰ってくるんわかったなぁ。」

「あぁ、ガレージの柵を開ける音でね。」

「そっか、最後のとこ磁石でガチャンて言うもんなぁ。
それより見てぇー。ボーナスもろてん。」

ウチはト音記号が描かれたペーパーバッグを開いて貴信に見せた。

「お!タンブラー。スクルドのじゃん。」
これ、欲しかったんだと、
コーヒー豆の上に置いてたタンブラーを見て貴信は嬉しそうに言う。

「ちゃうちゃう。
それはショールームでもういらんようになったサンプルやねん。
その下がボーナス。」

「へぇ、まだ何回かバイトに出ただけなのに。親切だね。」

「冬には金一封を目指そうって言われた。」

「ふーん、で?なんでコレいらなくなったの?」

片手でタンブラーを持って言う。
こうやって軽々片手で奏人を抱けるあたりが、やっぱりパパやなぁ。

9キロを超えた奏人を片腕抱っこするのはウチにはツライ。

オムツと牛乳と奏人を乗せた買い物帰りのベビーカーを
真夏に押して歩くのなんては、地獄の修行かって位の重労働や。

奏人がタンブラーに興味を示して手を伸ばしてきても
ひょいっと抱きかえて、その手が届かないようにしてしまう・・・いいなぁ、便利そう。

「赤か黒って言うんでサンプル作りはってんけど、なんでか金色になったらしいわ。」

「きんー?派っ手ぇ!。
あぁ、でもあそこって成金の客も多そうだからウケるかもな。」

「そやけどそんな下品な感じちゃうかったで。
セピアトーンって言うか。」

「ふーん。セピアで金って・・・黄土色っぽい感じ?
そしたらこの車のライトのとこさ、ドグー神みたいになりそうだよなぁ。」

「ぷぷっ!言われてみたら。」

「似てない?」

「似てる似てる!!ほんまや、ドグー神の目のところみたいー。」

赤の彩色の時にはまったくそんな風に思わへんかった。

けど、デフォルメされたその高級車の絵を茶系で想像してみたら
奏人もお気に入りのヒーロー番組のキャラクターの顔にそっくり。

「ドグーカップ?」

「やめてぇー!今度バイトの時に笑ってまうやん。」

「店長にも言ってみ?絶対ウケるから。」

「そうやなぁ、須賀ちゃん、めっちゃドグー神好きやし。」

まだヒーロー物を見る様な年でもない奏人の親であるウチらが
こんなにドグー神に詳しいのは、あのカタブツの須賀店長の影響や。

ウチにあるDVDも全部、カレが焼いてくれてる。

「でもさ、打ち切りらしいよ、あれ。」

「え?なんで。普通2月までやないの?」

えらい変なタイミングで。
普通この時期には切れへんやろ、と考えた。

クリスマスにお年玉、年末年始に向けてクライマックスを持ってきてがっつり稼いで2月に番組改編。
4月には新番組の新キャラクターで新学期をお迎え下さい、って言うのが常套手段やのに。

リビングはエアコンつけてあるからそっちに行こうと、貴信が歩きながら言う。

「なんかさー。鬱金がよくなかったみたいだよ。」

「なんで?あの子めっちゃかっこいいやん。なんか問題起こしたん?」

「いや、どっかの府下の子供たちがウコンをウ○コって言い出して。」

「・・・・そんなん言うんって、絶対京都じゃないほうの府やんな。」

「間違いないね。
そんでさぁーカレーとウコンの会社がイメージダウンになるからって
スポンサー降りるらしいよ。」

「なんでー?」

「だって番組の頭でカレールーのCMするじゃん?
その後、鬱金が出てきて・・・。」

「はぁ、そう言う発想ね。
言い出す子供も子供やけど、そんで降りるほうも大人げないなぁ。」

「その辺はネットのウワサだけどね。
でも打ち切りはほんとみたい。内容が難しすぎたんじゃないか?」

「視聴率の問題かぁ。
あ、それより。奏人ご飯食べた?」

「うん。よく食うよ。足りなさそうな感じだったから味噌汁お代わりさせた。」

「そうやろー?なんか指導されてる量やったら足れへんみたいやねん。
なぁ、ちょっと太りすぎてると思わへん?」

「そうか?」

「発育曲線いっぱいいっぱいやねんで。他の子まだ9キロ行ってないって言うし。」

「でも身長もあるんだろ?」

「うーん、母乳があかんのかなぁ。
どんなけ飲んでるかわからんし、飲みたいだけ飲ましてまうし。」

「いいじゃん、食わなくてガリガリで悩むより。」

「そうかも知れんけど。」

「それよかオレたちの晩飯。」

「あ、早かったら食べに行くって言うてたやんな。どこ行く?」

ウチはウキウキして聞いた。
外食って食べるんおいしいのもあるけど、片付けせんでいいのがサイコーやんね。

「へっへっへ。」

貴信は薄気味悪いニヤニヤ笑いを浮かべて、奏人をウチに渡しちょっと待ってて、とキッチンに行った。

なんやろ?

と、思ってるとすぐに貴信が丼を2つ持って

「じゃじゃーん。」とやってきた。

「鰻処・清水の並丼2丁です。」

「えー、すごいやん。でも並って何よぉ?」

「ははは、スーパーのだからさー。」

「スーパー?貴信が行ったん?」

ウチと一緒ならともかく、自分一人でスーパー?しかも食料品の買い物?

ものすごい珍しい。
こないだ帰りにサラダオイル買ってきて言うたら、恥ずかしいからイヤって断ったくせに。

「ベビーカー押して行ってみたんだけど。
キっついなぁ、びっくりしたよ。あんなに歩きにくいって思わなかった。

帰りなんかさ、荷物持ってだろ?
買い物したもののどうしようかと思ったよ。」

「荷物入れる網ついてるやん。ベビーカー。」

「それがよくわかんなくて。
でもそんで泡食っててらオバサン達が同情してくれたみたいでさ。

レジのオバサンは袋に荷物つめてくれるし、
その後袋ブラ下げたままベビーカー押してたら、違うオバサンが
ここに入れたらいいってやってくれたし。」

「そうなんや、よ!さすがババ殺し。」

「それを言うならせめてマダムキラーと言ってくれ。」

箸も渡してくれる。

どうしてんやろ?どう言う風の吹き回しやろ?
言えば手伝ってはくれるけど、基本的に家の事は縦の物を横にするような事もない。

はっきり言って『オレは外、嫁は家』と思ってる時代錯誤なヤツやのに。

「なぁ・・・なんか隠してない?」

「は?なんだよ。」

「すっごいマズイことしたとか。
それともどうしても何か買って欲しいとか。」

「なんだよー、そんなのないって。」

「ウソやん、なんか後ろめたい事でもあるんちゃうん?」

「あるわけないだろ。」

「うっかり陽菜ちゃんの事を山梨に話したとか。」

「言うなって言われたから電話してないよ。」

「ほんなら何?あやしいなぁ。」

「なんだよ、人の好意を。たまにはちょっと家庭的な夫ってのをやってみたかったんだよ。」

「なんでまた?」

「だって・・・・陽菜ちゃんの彼氏ってアメリカ人なんだろ?
レディファーストが当たり前でさー。
なんかオレ、バカにされそうかと思って。」

「あははは、そんな事考えてたんー?」

「笑うなよ。比べられる身にもなってみろよ。」

「ふはは、ごめーん。でもそんなん誰も比べへんって。」

「いや。オレもこうフェミニズムって言うの?
本格的に身につけてダンディなナイスミドルを目指そうかなーって。」

「なんか今日やたら横文字多いけど?」

「そうか?」

「意識しすぎちゃうん?
でも、うん。嬉しいわ。今日はいい事いっぱいで嬉しい。
食べてもいい?」

「おう!一緒に食おう。」

わざわざ蓋付きの丼で用意してくれた鰻丼を一口・・・・・?

「マズっ!」

「うわ、なんだ。硬い!」

「これ、ぬくめた?」

「・・・・え、温めるの?」

「何言うてんのー、当たり前やん。
買うてきたんそのままやったら冷たいし硬いに決まってるやろ、もう。」

せっかくの好意やけどこのままじゃ、却ってもったいない。
ウチは焼きなおすべく立ち上がった。

「ちょっと待って。今日はオレがするから。」

「できるん?」

「簡単だよ。チンすりゃいいんだろ?」

「あかんって、そんなんしたらペッタリすんで。焼かな。」

「んじゃあ炙ってくる。」

「ちっちっち。」

ウチは人差し指を3回振って見せた。

「困るわねぇー、素人は。ほーっほっほ。」

「なんだよー、お前は老舗鰻屋の人間か。」

「まぁ、見とき。」

ウチは鰻を丼から取り出して軽く日本酒をまぶし、ホイルに包んでフライパンで蒸し焼きにした。

待つ事5分。

「これでどない?」

「うっおー、すげぇ。これがさっきの鰻?
ふっくらしてやわらかいよ。旨い。」

「そやろー?ちょっと工夫でこの旨さって言うねん。
スーパーのんにしてはいい感じになるやろ?」

「いや、オレ黙って出されたらどっかから取り寄せたいいヤツだって思って食いそう。
・・・・え、もしかして今まで騙されてる?オレ。」

「別に騙しはしてへんけど。」

「いやぁー。お見それしました。付け焼刃なんてこんなもんだな。」

「そやなー、ふふふ。
でもありがとう。買い物行ってご飯作ってくれて。
めっちゃ嬉しかった、一番のボーナスやわ。」

「そうか?」

「うん。また頼むわな。」

「えー。ちょっとムリかも。失敗だらけじゃん、オレ。」

「教えるし。」

「・・・・この場合、やっぱお願いしますって言うほうがグローバル?」

「グローバル。」

嬉しくて楽しくて、そんでメチャクチャおいしい夕飯やった。
お店の上天丼より、もっと気持ちを満たしてくれた。

まだ顔も見た事のない陽菜ちゃんのカレシが意外なところに作用する。

このままうまく作用して、貴信の殿様ダンナぶりが改善したらいいなぁ。

8月20日

わざわざ大安の日を選んだんやろうか?

今日奈良の高城家に、陽菜ちゃんの彼氏のキースと言うアメリカ人が来る。

なんとすでに陽菜ちゃんはご懐妊。
おまけにキースは再来月にはニューヨーク本社に戻る事になってて、
それまでに結婚して陽菜ちゃんを向こうに連れて行きたいと望んでいる。

おとうちゃんだけがその事実を知らされてなくって、今日の会合の波乱は必至や。

ちょっとブっとんだ姉の陽菜ちゃんがよもや結婚する気になるとは思ってなかった。
陽菜ちゃんをその気にさせただけでもスゴイのに、
それがまた外人さんっていうのも驚かされる。

ウチだけじゃなく、貴信も好奇心の塊になって顔を出すことになった。

「休み代わってもろてまで来んでええのに。」

貴信が来たいのを知っててわざとイケズを言うたった。

「いやいや、大事なお姉さんの大事な話だからね。
オレも家族の一員として、よく見極めないと。
それにおれがいないと奏人も困るだろ?」

そうや。
奏人はこの頃、えらくパパに懐いてて
貴信がおる限りくっついて抱っこしてもらってる。

朝、奏人が寝てる間に会社に行けばパパの事は忘れてるんやけど
目の前で貴信が出かけたりしたら大騒ぎや。

泣いて泣いて、手ぇつけられへん。

今日も奏人だけ連れて行くって言うのは状況的に難しかった。

「じゃあ、あんたは奏人の子守係な。客間には来んでええから。」

「妬くなよ、なぁ奏人。」

アホらし。オアツイのは日差しだけで充分や。
今日も死にそうに暑い。
炎天下の車の中は50度や60度になるって言う。

あらかじめエアコンをブンブン回して気温を下げておいた車に乗り込んだ。

貴信はスカイラインを運転したそうやったけど
ヒッツキムシ奏人の大音量の泣き声を聞きながらの安全運転は厳しい。

そんな奏人をあやすんもゴメンやし。

運転はウチがする事になった。
皮のハンドルはまだ熱を持ってる、運転しにくいなぁ。

奏人は乗車しても相変わらず抱っこされてる。

「チャイルドシートに乗せてぇや。」

「だめ、乗せようとしたらしがみつくし泣くし、ムリだよ。」

・・・ウチと二人の時はおとなしくシートに乗るのに。
ほんまにちょっと妬ける。

「じゃあゆっくり走るけど、ちゃんと抱っこしとってよ。
タッチさしたらイヤやで。」

油断すると車のシートを頼りにつかまり立ちしそうやから釘を刺しといた。

「大丈夫、寝るんじゃないか?」

「はぁ、とにかく行こか。」

加速は快適、でも近頃ガソリン代の価格上昇はもっとハイスピード。

ガソリン、レギュラーにしたらあかんのかなぁ。

この車はハイオクじゃないとエンジンに余分な負担がかかって
後から出費するハメになるって貴信は言うけど、なーんかだまされてる気がする。

車に詳しい人に聞いて見たいわ。

*

高層ビルが少ないせいやろか?

奈良は大阪市内よりちょっと涼しいような感じがする。

門の所でおかあちゃんが落ち着かない様子で行ったりきたりしてるのが見えた。
軽くクラクションを鳴らして合図して、それから車を停めると
おかあちゃんが寄って来て、窓をコンコンと叩いた。

「なに?」

「あんたらココやなくって、あっちの角のコンビニに向こうにタイムズあるからそっちへ車置いといで。」

「あぁそっか、取り締まり厳しいもんね。」

高城の家のガレージは2台車が置けるようになってるけど
おとうちゃんと、陽菜ちゃんの車が常時あるから、ウチらは外に停めてる。

すぐ済む用事なら、路駐やけど。
そやな、今日はそんなすぐ終わるはずないもんね。

「どうしよ、奏連れて歩くんしんどいよね?」

「じゃあお前、奏と先に降りてれば?オレが車置いてくるからさ。」

「・・・ええわ。泣くやろし。」

「ほんならおばあちゃん抱っこしたろ、ほら奏ちゃん、ばぁばおいでー。」

おかあちゃんがそう言って手を伸ばすと、
意外にもすんなり奏は手を出して抱っこを受け入れた。

「じゃあ代わるよ。」

運転を代わってもらい、ウチは先に降ろしてもらう。

「ウチ抱こか?重いやろ?」

「うん、重いなぁー。うん。ええ子やええ子や。
いっぱい食べていっぱい寝て、元気で育つんが一番ええ子。」

「ええ事言うやん。」

「孫やからな。
自分の子ぉやったらこうは行かんで。
初めは五体満足でありがたいと思うてても、段々体裁とか競争とか見栄とか。
余計な期待をしてまうもんよ?」

「そうなんかな。」

言われてみたら、体重が重い=よその子よりデブって。

奏が食べる事に喜ばんと、他人から見たかわいさを先に考えてる。

「気ぃつけるわ。」

「何言うてんの。何の期待もされん子も気の毒やで。

体だけ大きぃ役立たずの税金の上前はねるようなガキに、
あんたはそのままで充分やとか言うアホな親なら、親になるだけ無駄やろ。

育てられたほうも迷惑やわな。」

「厳しいなぁ。」

「まぁなんでもほどほど言うこっちゃ。」

「そんで?もう来てはるん?」

「いや、まだやねん。陽菜が迎えに行ってんねんけどなぁ。

なぁ由香子。お昼ごはんお寿司でよかったと思う?
陽菜は日本食OKやからて言うんやけど。」

「陽菜ちゃんがええって言うんやったら大丈夫ちゃう?
お刺身も納豆も平気って外人さん多いで。」

「そうかなぁ。」

「・・・・なぁ。おとうちゃんは。」

「今は機嫌ええ。」

「言うたん?」

「言うかいな。
報告した人間が怒られるって、なんやらの手紙言うんあったやろ。
あないなるん目に見えてるからな。」

「ほんなら。」

「うん。種まかはったんやもん。自分でどないかしてもらわな。」

まさに種やな、と思った。

奏人は戻ってきた貴信とおとうちゃんに任せて、ウチらは客間やお膳の用意をする。

出前のお寿司やからそんなに準備するような事もなかったけど
どうにも落ち着かんでキッチンをウロウロしてた。

「あ、そや。コーヒー持って来てん。
ボーナス代わりにって店長さんがくれたから。」

「いや、ほんま?助かるわ。
そしたらコーヒー入れて休憩しよか。」

「言うてる間に来はるんちゃう?
・・・あ、ほら、ガレージ開いた。」

電動シャッターの上がる音と、陽菜ちゃんのレガシィの音がした。

「来た!」

「来た来たっ!」

「ちょっと、由香子。あんたおとうちゃん呼んできて。」

「うん。」

いい大人が2人、正装して所在なげに乳児と遊んでる和室にウチは飛んで行った。

*

「ただいまぁー。」

「まいどおおきに。キース・ブラッドリーです。」

まいどおおきに?

「本日は突然お伺いしましてホンマニホンマニスンマヘン。」

ホンマニホンマニ、スンマヘン?

180以上ある貴信より、もっと高い体を折り曲げたまま
その金髪のアメリカ人は、なぜか古きよき浪花商人みたいな喋り方をした。

横で陽菜ちゃんは緊張どころかニコニコ笑ってそんなキースを眺めてる。

キースが背中を伸ばし、その顔を上げたとたん
玄関先でコメツキ大会をしてたウチら全員がそれぞれに驚きの声を上げた。

「エ!ウソぉ・・・・。」

「これはまた。」

「マジ?すげぇ。」

「きゃあ!オチた!落ちたよ!」

金色の髪、190はある長身。テニスプレーヤーみたいな体つき。
そしてその顔はハリウッドの撮影から抜けてきましたって言われても納得するほどの美形やった。

2組の夫婦はその予想以上?予想に反した?・・・とにかく
あまりのカッコよさに感嘆の声を上げた。

そんななか、場違いに

「落としたよ!」っと言ってるのは・・・・陽菜ちゃんや。

キースの足元には一枚のメモ。

そこには

『I'm glad to see you=マイドオオキニ
VeryVery=ホンマニホンマニ
Sorry=スンマヘン・・・・』

あやしい英語とさらにあやしい大阪弁がきっちり陽菜ちゃんの字で書かれていた。

「もう。あかんやんー。」

「申し訳ない。僕の不注意だ。」

キースはごくまともな日本語で陽菜ちゃんに詫びの言葉を言った・・・。

*

「だってー、普通に挨拶したっておもんないやろ?」

キッチンでウチと陽菜ちゃんはコーヒーの用意をした。

「いや、普通以上にインパクト抜群やし。
って言うかそもそもおもしろくなくてええし。」

どうやらキースは陽菜ちゃんに、ビジネスとファミリーの会話は別や。
ファミリーの間でのフォーマルな喋り方はこれやとメモを渡されていたらしい。

「でもよく覚えたよな。普通の日本語でも難しいのに。」

下手なドラマの俳優よりよっぽどイントネーションが近かったのにびっくりした。

「もともと日本語はできるねん。
それに大学の頃は演劇やってたから、あれくらい覚えるんは簡単なんやろ。」

「演劇?」

似合いそう。

スターです、って言われたら絶対真に受ける。

それくらいとんでもない美形やった。

「ベスって言うお姉さんいてんねんけどな。
その人はプロになって舞台10年くらいやって、でも結婚で引退したって言うてた。」

「すっごー・・・い。
なんでそんな人が証券会社おったん?
って言うかなんで日本?なんで大阪?なんで陽菜ちゃん知りあったん?」

「そんなんまとめて聞かれても。
向こうでみんなで喋ろうや、どうせ話題なくてみんな石になってんで。」

陽菜ちゃんの言うとおり、美形過ぎるキースを前に
奏人以外は石のように固まっていた。

「Oh!ゴージャス、ソウト。」

コーヒーを出すと、ちょうどキースが奏人を褒めてくれているところやった。

「ごーじゃすぅ?」

豪華とか壮大って言うか、なんかバブルなギラギラした感じやんな。
ゴージャスって。

赤ちゃん褒めるのにへんな感じ。

「あぁ、アメリカ人ってオーバーなんよ。
それが礼儀みたい。
ゴージャスってのはめちゃくちゃかわいい!って位のニュアンスやで。」

と、陽菜ちゃんが解説してくれる。

「全員揃うたね。」と言うおかあちゃんの声を合図に
陽菜ちゃんはキースの隣に並んで座った。

「改めてご挨拶申し上げます。
キース・ブラッドリーです。
まず突然お伺いした無礼をお詫びいたします。」

「はい。ご丁寧なご挨拶いたみいります。」

さすがになれた様子でおとうちゃんはこの堅苦しい会話をこなしてる。

「この度は陽菜子さんとの結婚を承諾いただきたくお願いに上がりました。
こちらをとりあえずお納め下さい。」

と、キースは一枚の書類をおとうちゃんとおかあちゃんに渡した。

「独身証明書?」

「日本の方と結婚する際に、本国での婚姻関係がないかを証明する書類です。」

「へぇ。そんなものがあるんだ。重婚しないようにか。」

「そうです、ミスタ清水。貴信、と呼んで差し支えないですか?」

「はい、OK。オッケーです。」

ぷぷ、何を緊張してんねんな。

「真剣に陽菜子との結婚を考えてくださっているのはわかりました。
ブラッドリーさん。
お仕事は、ずっと日本でされるんですか?」

おっと。
核心に迫ってきたよー、おとうちゃん。

どきどきして、おもわず手を握りしめてしまう。

「それが。実は来月末には本国に戻る事になっています。」

「それじゃあ・・・。」

「もう、まどろっこしぃなぁ。」突然、陽菜ちゃんがそう言って手を上げた。

「陽菜子っ!」
おかあちゃんが待ったをかけようとしたけど、もう遅い。

「はぁーい。
なんと!
アタシのお腹にはキースとの愛の結晶が宿っていまーす。
手続きしたら一緒にアメリカ行って、立派なママンになってくるわ。」

その後。

和室が阿鼻叫喚の騒ぎになったのはご想像どおり。

とりあえず怒るおとうちゃん。

平謝りのキース。

おかあちゃんは陽菜ちゃんに説教をはじめ
貴信は必死でおとうちゃんをなだめてる。

急に怒り出したじぃじの姿に驚いた奏人は当然泣き出すし。

奏人をあやしながら、
一人で大笑いしてる陽菜ちゃんを見て真剣に考えた。

・・・キースさん。

なんでこんなオンナと結婚したいんだろう。

涙を浮かべて謝っていても絵になるくらいチャーミングやのに。

貴信と替えて欲しい、と少しくらい思っても罰はあたらんやろう。

*

おとうちゃんの拳が一発、キースのキレイな顔に決まり
それをきっかけに、なんとかみんなは落ちつこうと思い始めた。

「まぁ、みんな。座れや・・・。」

もしかして初めて人をグーでなぐったんちゃうやろか?
悲しそうに下をむいておとうちゃんがそう言った。

「本当にこのたびの事は、お詫びのしようもありません。
ただいい加減な気持ちでは。」

「もうええよ、キースさん。
・・・・すまんなぁ。痛いやろ?」

「いえ、ご両親のお気持ちを思えば。」

「はーぁ。歴史は繰り返すっちゅうけど・・・・。」

小さい声で言いながら、おとうちゃんはおかあちゃんを一瞥した。

・・・ぶ。

ぶぶ・・っ。


ぶわぁーっはっはっは!!

今度は急に大きな声で笑い出したおとうちゃん。

ショックで頭でもおかしなったんかと思うたら。

「ワシもな、こいつのおとーちゃんにやられてん、ボカーンと。」

「ええ!?」

「結局そん時は間違いやってんけどな。
妊娠した思うておんなじ様に結婚申し込みに行ってやられたんや。」

「知らんかった。」

ウチと陽菜ちゃんは顔を見合わせた。

「後から妊娠してへんのわかってエライ損したと思うたわ。
もちろん結婚はする気やったけど、なんや早まったような気になってなぁ。

すまんかった。

キースさん、ワシより責任感あってしっかりしとるわ。
アメリカ行く言われてなんでそんな遠いとこへ娘やらなあかんねんって
思うたらカーッとなってもうて・・・・すまん。」

おとうちゃんはペコリとキースに頭を下げた。

「とんでもない。私はご両親のお気持ちを傷つけてしまった・・・です。
遠くに連れて行ってしまうのも事実です。
いくらお詫びしても言葉が足りません。

ですがお約束します。必ず幸せなファミリーを築きます。
生涯陽菜子さんを大切にします。」

おかあちゃんもウチも、なんでか貴信まで感動して涙が出てる。

感動するなら見習えー!と思うけど今は言える空気じゃない。

「感動するんやったら見習いーや。」

「ひ・・・ひなちゃん。
ここは陽菜ちゃんが一番感動して泣くとこやんかぁ!」

「なんやのんな。由香チンがよう言わんと思うて言うたったのに。」

ひとしきり騒ぎが収まった頃、出前のお寿司が届いた。

キースはお寿司はダイスキだと言い、おかあちゃんは胸をなでおろしていた。

言葉どおり一人前半の盛りの握りを平らげたあと
陽菜ちゃんの残した分も食べてしまった。

「食欲ないん?そう言うたら何週目なん?」

もう陽菜ちゃんの赤ちゃんの話題もおおっぴらに話せる。

「15週やった。」

「え?もうそんなん?わからんかったん?」

「うん。ウチあんまりセーリないし。」

男性陣はなんとも言えない困った顔を見合わせる。

「そんな生々しい話するんやないの。」
とおかあちゃんが陽菜ちゃんをたしなめて、
「由香子、もう一回コーヒー入れといで。」と言うた。

お寿司を食べた後、日本茶には手をつけていないキースの様子を見て
ウチも入れに行こうと思うてたとこや。

「ありがとうございます。こちらのコーヒーはすごく香りがいい。
今まで飲んだ中で一番おいしいです。」

「あら、アメリカの人やのにお世辞言いはるんですね。」と笑うと

「いえ、本当に。
アメリカで普通に出るコーヒーはもっと質が低いです。
日本に来てどこでも当たり前に出るコーヒーのレベルが高いのに驚きました。
その中でも、本当に、こちらのコーヒーはおいしいと思います。」

「ふふ。一応カフェでパートタイムの仕事をしてるんです。
これはそこの豆で。」

とそこからショールームの店の話になり、キースはかなり興味を持って聞きたがった。

ただ興味をそそったのはカフェでなく、ヨーロッパ系高級カーディーラーの
店舗展開やったみたいやけど。

どうせ長くなるからと、コーヒーは陽菜ちゃんが入れに行ってくれた。

車が好きで聞いてる訳じゃなくて、立地とか売れ行きとか。
ウチはその中に入ってるカフェの人間やからようわからんと答える。

「おもんないやろ、キースって。」

コーヒーを持って戻ってきた陽菜ちゃんがまぜっかえす。

「なんでもビジネスのネタやと思うてんねんから。
そんな話よりベスの話したってよ。
な、由香チン聞きたいって言うてたやん。」

「そうそう、お姉さんブロードウェイの女優さんだったんですよね。
キースも俳優の卵やったって聞いたけど。」

「レッドカーペットもブロンズも縁のない普通の女優ですよ。
私も学生時代の趣味で終わってしまいました。」

「そんなことないでしょ?それだけセクシーでチャーミングなら。」
と、貴信がまたまた横文字をいっぱい使って話題に入ってくる。

「才能がある、とか美しいとか。
ショービズの世界の頂点に立つ者は多分それだけではないと思います。」

「スター性って言う事?」

「ジェシー・ミラーをご存知ですか?」

「『イーストヴィレッジ』とか『コール』の?」

「ええ、大学時代彼女のパートナーとして舞台に立っていました。」

「それってものすごいんじゃ・・・・。」

洋画に詳しい貴信が半分あきれたように言う。

ううん、貴信やなくても・・・。
ジェシー・ミラー。

セレブとして、女優として、アカデミー賞の常連として
映画館に行かない人間でも一般常識として知っている、そんな人と?

「なんでプロにならなかったんですか?」

その質問が自然に口からこぼれた。

「ジェシーと共演するたびに思った。

まさに、神か悪魔に愛されている。
そう言う人間だけに許された玉座があるんだって。」

「それで舞台を降りたのかい?」

「そう、彼女と台詞を交わすたびに自分の才能のなさを呪い
いつも喪失感にさいなまれてきた。
彼女が命を落としかけた舞台、あれから会ってない。」

「なんてことだ。」

貴信ががっくりとうなだれる。

夢に敗れた男の辛さ、貴信にもわかるんやね?

「サインもらえるかと思ったのに。」

「あほかぁー!!」

黙って聞いてた陽菜ちゃんはゲラゲラ笑って
キースも一緒に笑い出した。

こんなに切ない思い出でいいのかな、と思ったけどキースは気にもしていないように話し続けた。

「太秦映画村、大覚寺、姫路城、いろいろ行きました。
太秦の仕事はすばらしい。
もっと寺社仏閣や城で時代劇を作るべきです。
鬼平犯科帳、イケナミの美意識の集大成です。
CGに頼らない技術と感性。」

「お。時代劇好きなんか?」

「おとうさん。おとうさんも?」

「白虎隊はしってるか?」

「ええ。たくさんのリメイクを観ました。ただ最近の作品は・・・。」

「薄っぺらいだろ!?」

「イエース!!」

・・・・へんな人。

やっぱり陽菜ちゃんのチョイスやわぁ、と安心した。

「あ。ひょっとしてニャンマゲも見に行ったりしましたか?」

「ニャンマゲ!!行きました。ちょっとコンセプトがわかりにくかったです。」

「でも好きなんですよね?ニャンマゲ。」

「?」

「中に入ったんでしょ?」

さっきから笑いっぱなしの妊婦がさらに大声で笑い出した。

「由香チン!!あれマジにしてたん!?
貸してくれるワケないやんー!!
って言うかキースじゃ入れへんやんー、あーはっは。

あかん、笑いすぎて流産するぅ!!」

「いやぁ、やめてー!!」

「ヒナコ!」

ウチは後にも先にもこんな大騒ぎの結婚申し込み&妊娠フライングお詫び会談の話を聞いた事がなかった。

陽菜ちゃんってどこまでもいい感じで壊れてるよな、
帰りの車でそう言った貴信と気が合うな、と笑いあって長い一日が終わった。

汗とよだれと。

その他、よくわからないもんでベトベトの奏人は
玄関からそのままお風呂に連行されて行く。

とりあえず、湯上りセットをバスルームに置いて、ウチは奈良に電話した。

「あ、陽菜ちゃん。うん、今着いた。
今日はお疲れ様・・・・そう、めっちゃオトコマエやん!びっくりした。」

陽菜ちゃんの婚約者・キース。
この世の人とは思えない、あんなキレイな男の人は初めて見た。

日本人の金髪コンプレックスとは違う。
あれは別物、絶品やわ。

その人がこれから身内になるやなんて。

実際に喋って、一緒にご飯食べて、笑い合ってきたばっかりやって言うのに
全然リアリティがなかった。

「ミテクレはええやろ?せやから写真とかイヤやねん。」

「なんで?自慢できるやん。」

「写真見せたらな、ウチが見栄張ってるとかウソついてるんやろって言われる。
相手がアメリカ人って言うだけでも遊ばれてるって言うんもおるし。」

「えー・・・、そんなん思うかな?」

「モテへん女は百発百中で言うで。
なんでも疑うような性根やから幸せつかめんねんって思うけど。」

「はは、でも現実離れしてかっこええんはホンマやし。
そう言う気持ちもわからん事はないかなぁ。」

そこからウチらは陽菜ちゃんがキースと知り合ったなれそめとか
結婚の予定の事、赤ちゃんの話なんかで盛り上がって長電話をした。

こう言う話するんって、顔合わすより電話の方がホンネが見えてオモシロイ。

「なんで陽菜ちゃんと結婚する気になってんやろ?」

「ほっとかれへんねんて。」

「いやーぁん、アツいわぁ!!」

「ちょっとちゃうねん、それが。自分がほっておいたら良心が痛むって。」

「なにそれ?」

「そのうちウチが途方もない事しでかしそうやねんて。

それを事前に想定して対処する事が自分にはできたはずやって
死ぬまで後悔し続けるのは、耐えがたいとか言うてた。」

「はぁ?なんかすっごいトラブルメーカー扱いぃ?」

「今んとこは、オマワリサンにお世話になる予定はないねんけどなぁ。
多分アレやろ。
謙虚なテレ隠しって言うヤツ。
単にウチの美貌と魅力にメロメロやけど、それを素直に言えんのよー。」

「もうええわ。」

幸せの絶頂って声だけで伝わってくる。
おノロケはいつまでも止まりそうにない。

「そや!由香チン。貴信さんは?」

「え、貴信やったら今はシャワー。
キースに約束してた本は後でまとめるって言うてたけど。」

「そんなんどうでもええねんって。なぁなぁ、山梨に電話したかなぁ?」

「陽菜ちゃんの事?」

「うん。」

そうやん、いくら陽菜ちゃんでも心配やんな。

どんなに幸せな事でもあのお義母さんにかかったら、ボロクソにけなされるに決まってる。

でも心なし電話の声が何かを期待して
うずうずしているように聞こえるんはなんでやろ・・・。

「貴信には絶対言うたらアカンって言うてあるし、大丈夫やと思うで。
理恵さんとかにも言わんように、今日もう一回釘刺しとくし。」

「なんでぇー?」

「なんでって、こっちこそなんでよ?」

「遠慮せんとバンバン言うてもぉてよー。
せっかくのお祝い事やねんし、しかもダブルで2倍!
貴信さんの実家にヒミツやなんて水臭いやんかぁ。」

「あかんって。結婚はまだしも赤ちゃんおるなんて言うたら・・・あ!」

「そう! ・・・・んふふふふ。
きっとあのオシュートメ様の事やからさぁ、
ウチらが今まで聞いた事もないような日本語で罵ってくれると思うねんー。
鬼畜米英とか言うんかなぁ。
絶対普通に予想でけへん事言うと思うねんやん。

すっごい楽しみにしてんねん。」

「もしかして・・・・って言うかやっぱりブログネタ?」

「だってもうサイコーやん!ゾクゾクするわぁ。
おかあちゃんにも電話かかってくるかなぁ?
絶縁かな、どっちやと思う?
あんたもムチャクチャ言われんでぇ、メモっといてよ?」

「浮かれすぎて脳みそウニになったんちゃう?
そんなんありえへんし!
考えただけでも怖いわ!カンベンしてよ。」

「なんでよー。どうせ嫌われついでやん。
とことん行って楽しんだる位の根性見せようや。お祝いもがっちりせしめたいし。」

「陽菜ちゃんとウチは立場ちゃうわ、そんなオキラクな事言わんとって。」

「そうやって文句言われそうな事はフタしてやり過ごすん?」

「したくないよ。
でも話してどうにかなる人ちゃうもん。」

「そらどうにかなるはずないやん。
あの年になるまでずーっと熟成さしてあの根性ワルになってんやろ?
死ぬまでにもっとヘンコになって。
ボケてモノわからんようになっても、本能で嫁イビリしそうなタイプやん。」

「それがわかってるから、あんまり関わりなりたくないの。」

「そう?いい反面教師やで。
『奏は貴信みたいなマザコンにはしないわ』ってさー。」

「貴信ってマザコン?」

「そうちゃうの?」

「わからーん。アレからは結構変わったと思うし。」

「どっちにしても、なんでも楽しまな損やって。
自分を客観的に見て面白がる位の気持ちって由香チンに一番必要なもんとちゃうかなぁ。

・・・・あ、おとうちゃん。」

「・・・。」

陽菜ちゃんに言われた事がずんと響く。
黙りこんだウチをよそに、陽菜ちゃんは電話の向こうのおとうちゃんと喋りだした。

「うん、由香ちん、そうもう切るよ。
今日ごめんなー・・・え、うんうん。
あはは、そんでも謝らしてよ、心配さしてごめんな。おやすみ。

あ、ごめん由香子、おとうちゃん。もう寝るって。」

「そっかぁ。疲れたんかなぁ。」

「キースが帰った後もずっとハイテンションやったからなぁ。」

陽菜ちゃんもどうこう言いながら、おとうちゃんへの気遣いはしてる。

ウチは・・・気遣いって言われてもなぁ。

もうあの人にはしたくない。

わざわざ歩み寄って、暴発間違いない火中の栗で
アメ食い競争するような命懸けの根性なんかいらんわ。

きゃあきゃあ言う奏人の声がして、貴信がウチを呼ぶ。

「おーい由香子。そっちへ行った。」

「ゴメン、陽菜ちゃん。」

「うん。わかった。
こないだいっぱい喋ったけどな、なんか言い足りんような気ぃしとってんやん。
スッキリした、おやすみ。」

オムツ姿の奏人がハイハイで逃げ回っていた。
貴信と2人がかりで捕まえてパジャマを着せる。

お休み前のおっぱいをやってると、ケータイが光ってるのに気がついた。

片手で開いて見ると陽菜ちゃんからのメールが入ってる。

『貴信さんにもありがとうって言うといて。

山梨に電話してもらってな♪』

イヤやって言うてんのに、もう!























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