「アル中」と「アルコール依存症」の違い

【「アル中」と「アルコール依存症」の違いについて】


アルコール中毒と云う言葉はスエーデンの医者が医学用語として最初に使われたそうです。
その医者は急性と慢性のアルコール中毒を区別したのです。
日本でも1980年位前までは、依存症と云う言葉は使いませんでした。
「慢性酒精中毒」と呼んでいたそうです。
しかし、1980年以後位からは「アルコール依存症」と云う言葉が使われるようになったそうです。
何故、「アルコール依存症」とカルテにも記載されるようになったのかと云いますと、非常に話が永くなりますが、簡単に云えば「アル中」とは駅の片隅で酔っぱらって、うずくまっている光景が浮かびますね。
つまり、社会的に除外された者の言葉なのです。
所謂、蔑視の言葉です。
多くのアルコールに問題がある人が治療しなかった理由には「アル中」と云う言葉が使われていた為なのです。
「アル中」とは社会の落伍者で、四六時中アルコールを手放せない人を云います。
「自分はチャンと仕事もしているし、やめ様と思えばいつでもやめられる、だからアル中ではない!治療なんか必要ない!」と云う人々でした。
しかし、中毒と依存症は全く違うものなのです。

中毒とは、ある物を摂取した結果、その人の身体に生じるさまざまな不快な反応のことですね。
例えば食中毒を例に云えば、あの激しい苦痛と症状が中毒なのです。
アルコールでも飲んで心臓がドキドキしたり、吐き気をしたりすれば、それは急性のアルコール中毒なのです。
しかし、依存症は自らすすんで飲む気分の良さで、その気分の良さを忘れられずに繰り返し飲む行為を云います。
腐った食べ物を、すすんで食べる者はいないのです。
アルコール依存症は吐いたり、記憶を失ったりしても繰り返して飲むのです。
そこが、アル中と依存症の違いなのです。
そして、365日酒を飲んでいても依存症とは云いません。
家族で楽しく晩酌をしながら会話して疲れが取れて良く寝られるのなら、それはアルコールに依存していても依存症と云う病気ではないのです。
それよりも、週に1度休肝日と称して飲まなくても飲んで電車を乗り過ごしたり家族と諍いをおこしたり、社会的に問題行動をおこす人、家族関係を破壊する飲酒を「アルコール依存症」と云われています。
現在、医学的には依存症は、精神的依存と身体的依存の両方からなる病気と診断されます。
「精神依存」とは、人がある物の効果で快楽を味わう為に自らすすんで繰り返し行う行為であり、特にその物が無いと探し求めてでも手に入れなければ、そして目の前に無ければ我慢できない行動を「薬物探索行動」(精神依存)と云います。
タバコでもそうですね。
タバコを吸おうと思ったら無い!そうすると深夜であっても自販機まで買いに行こうとする行動も「精神依存」と云うそうです。
「身体依存」とは繰り返して摂取されていた物が、身体から抜けていく時に不愉快な反応がみられる場合に身体的に異常をきたすことが「身体依存」と云います。
例をあげれば手や指の振るえが良く知られています。
しかし、この様な症状があれば判りやすいのですが、むしろ知らず知らずのうちに通りすぎることの方が怖いのです。
体調が悪いので酒を飲まずに寝ていても寝付かず朝まで悶々としていたり、アルコールを飲まないと食欲が出なかったりすることが依存症なのです。
只、日常的にはアルコールと関連しないで過ぎていく。
そして、段々と症状が酷くなり苦痛や不眠・けいれん・意識障害・幻覚・幻聴等が生じて死んでいくのです。

アルコール依存症患者は意思が弱いと云う方が多くいますが決して意思が弱い者が罹るものではありません。
これは、病気なのです。
風邪をひいた時のように寝て薬を飲み安静にしていれば治るのとは違い、断酒をすれば精神的依存は完治はしませんが、ある程度の身体的症状は回復するのです。
判って頂けましたか?「アル中」と「依存症」の違いを…。
きっと、多くの方には理解して頂けないと思いますが…。


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