紅蓮’s日記

紅蓮’s日記

第2話




有然町からちょっと離れたところにある港。
そこの敷地のそばに白い大型のワンボックスカーが止まっている。
その中で大吾、ほのか、柊の三人が突入のために準備をしていた。
大吾は車の中にある機材をいじっている。
ほのかはいつも着ているスーツではなく、迷彩のズボンに軍用ベスト、
腰にはハンドガン、手にはスナイパーライフルといういでたちである。
柊は黒いズボンに黒いコートを着ていた。
脇には自動小銃が見えている。
大吾が二人を見て

「二人とも、簡単に作戦を話すから聞いてくれ。
まず、ほのかちゃんは倉庫のまわりにいる敵の排除、
シュウは現場に突っ込んで制圧しろ。
俺は二人をナビゲートする。危なくなったら無線で報せろ、
俺が助けに行く。」

「「はい」」

二人はうなずいた。
柊がグローブをはめていると大吾が

「シュウ、これ持っていけ。」

と渡したのはフェイスガード付きのマスクゴーグルだ。

「これは?」

「これは、ただのマスクじゃないぞ。
無線もついてて暗視装置もあってそれに望遠機能もついてる優れものだ。
顔を隠すのにもいいだろ。」

と得意げに言った。

「ありがとうございます。」

柊はマスクを受け取った。

「よし、じゃあ作戦開始!」

『ザー・・・二人ともきこえるか?
倉庫の入口に二人監視がいるから注意しろ。』

と無線で大吾が報せてくれる。
柊はそれを聞いて

『ほのかさん、なんとかできるか?』

『まかせて、ちゃちゃっと片付けるから。』

そう言ってほのかはライフルを構えてスコープをのぞく。
そして
パシュッ、パシュッ
とサイレンサーの音が鳴った。
柊はマスクの望遠機能を使うと
そこには頭を撃ち抜かれた死体が転がっていた。
三百メートルはあろうという距離から頭を撃ちぬいたほのかはすごいものだ。

『じゃあ、行ってくる。』

柊は倉庫へとむかった。

倉庫の扉の前に立つと、柊は銃のスライドを引いて弱から中にした。
そして、右足に霊力を込めて扉を蹴破った。
ドカン!!
扉はひしゃげて吹き飛んだ。
ちょうど扉の前に人がいたらしく、
一人の男が扉の下敷きになってのびていた。

「だれだ!!!」

と倉庫の中にいた男達が銃を構えて振り返った。
その数十人強

「・・・」

柊は黙ったまま男達を見回して写真に載っていた男を見つけた。

「牧角 修二だな?貴様を捕まえに来た。」

牧角は

「なんだと?さては、警察の差し金だな!おいお前ら、
取引の邪魔だからさっさとソイツを殺せ。」

そう言うと男達は柊に狙いをさだめ、撃とうとした。
だが、柊は既に動き出していた。
体に霊力を纏わせて一気に横へ跳んだ。
ズガン!ズガン!と柊の銃から紫電がほとばしった。
前のほうにいた男二人は胸や頭に正確に撃ち抜かれた。
銃創の周りは焼け焦げていて、死体は少し痙攣していた。
そして間をおかず、柊は左手を腰にまわしてナイフを取り出し、
後ろにいる男達に向かって駆け出した。
柊は一歩の跳躍で男達に近づき、首の頚動脈を切りつけた。
男達は首から大量の血を噴きだし、絶命した。

一分もしないうちに男達は全員地面に倒れていた。
ただ一人、牧角を除いて、
牧角は倒れた男達を見て軽くこう言った。

「すごいな、この人数をあっという間に殺すとは、お前はグリマーか?」

「・・・」

柊は黙って牧角を捕らえようと近づいた時
パァン!パァン!パァン!
と三回銃声が鳴った。
それは、さっきまで扉の下でのびていた男が放ったものだった。
柊は背中に弾丸を喰らって倒れた。
男は立ち上がり

「お頭、大丈夫ですか!?」

と牧角に近づこうと柊をまたごうとした時、
柊は突然、男の足をとって倒した。

「うわぁ!?」

と男は倒れ、柊はすぐに立ち上がり男に銃をむけて撃った。

「どうして銃弾を喰らって立っていられる!?」

牧角は驚愕の顔で柊を見た。
柊の黒いコートは、実は古重の店で買ったコートだった。
霊力を込めることによってコートに防弾性能を持たせることができる。
柊は銃の威力を弱にして銃口を牧角にむけた。
引き金を引こうとしたが、

「ッ?!」

突然、柊の横から衝撃が襲った。
柊はコンクリートの壁に激突し。
衝突の勢いで壁にヒビがはいった。
柊はふらふらと立ち上がってさっきまで立っていた場所を見た。
そこには、二人の男が立っていた。
右の男は大柄でがっちりした体格でスーツが盛り上がっている。
左の男は小柄で背もそんなに高くない。
牧角は二人を見たとたん安堵の様子をうかべた。

「どこに行っていた?危うく捕まるところだったじゃないか。」

「すみません、ちょっと用事がありまして。」

と大柄の男が笑いながら言った。

「いいからさっさとソイツを片付けろ!!」

牧角は、男の笑みが癇に障ったらしく男にむかって怒鳴った。

「わかりました。」

怒鳴られたことも気にせず、男二人は柊の前に出た。
大柄の男は両手にナックルを付け、
小柄の男は両手にサバイバルナイフを持っていた。
柊は二人を視た。
二人とも霊力の流れが速い、
もう全身に霊力を纏って戦闘準備万端というかんじだ。
柊もすぐに銃の威力を中に戻した。
すると小柄な男が常人では考えられない速さで突っ込んできた。
男は、ナイフを次々と突き出してくる。
柊は軽々とそれを避ける。

「避けているだけでは俺に勝てないゾ?」

男はさらに攻撃を繰り出してくる。
すると柊は、攻撃してくる男の右腕を掴んだ。

「遅すぎる。」

そう言って柊は、銃を相手の腹めがけて撃ちだした。
男は腹を撃ちぬかれて吹き飛んだ。
吹き飛ばされた男はまともに霊力弾を受けたため、
ピクリとも動かなくなった。
すると

「貴様ッッッ!!」

今度は大柄の男が突っ込んできた。
大柄のクセに小柄の男よりも断然速かった。
柊は両腕をクロスして、防御した。
しかし、男の力は強く、柊を簡単に殴り飛ばした。
(チッ!!)
柊はすぐに受身を取り、銃を構えて撃った。

「ハッ!!」

男も霊力波を撃ちだして、柊の撃った霊力弾を相殺した。

「まだまだ!!」

さらに男はこちらに向かってきて、殴りかかってきた。
柊は反応できず、男の拳が腹に直撃した。

「グッ!!」

あまりにも強い衝撃を受けた柊は起き上がれなかった。
男はこちらに近づいて

「終わりだ、小僧!」

男の右腕に霊力が集まり、柊の頭めがけて振り下ろされた。
しかし、いつまで経っても柊の頭に拳が振り下ろされてか無かった。
柊は男を見上げるとそこには男はいなく、男は地面に倒れていた。
その時

『シュウくん、大丈夫?』

と無線からほのかの声が聞こえてきた。
どうやらほのかが助けてくれたようだ。

「大丈夫、助かった。」

柊はお礼を述べた。

「くそっ!!」

牧角は悪態をつき、逃げようとした。
しかし、柊は素早く銃の威力を弱にして牧角を撃った。

「ぎゃああああ!!」

牧角は、悲鳴を上げて気絶した。

「所長、任務完了しました。」

『わかった、今そっちに行く。』

柊は立ち上がると、脇腹に鋭い痛みがはしった。
(チッ!折れたか?明日も学校なのに最悪だ。)
そう思っているうちに大吾が乗った車が到着した。


気絶した牧角を待機していた警察に引き渡し、今回の任務は終了した。

「シュウくん、脇腹大丈夫?」

帰りの車の中でほのかが心配そうに柊を見ている。

「多分大丈夫、帰ったら治療する。」

「明日ぐらい、学校休んだらどうだ?」

大吾が運転しながら柊に言った。

「いや、明日も学校に行くよ。」

そして、柊は家の前に着くまで眠りについた。


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