アキハバラ的散財生活

「終わりに見た街」

「終わりに見た街」~戦時中の「世間」に受け入れられた青年の行方は?


昨日に引き続いて、NHKドラマの登場です。
これも私の脳裏にこびりついていたドラマで、最近まで内容は克明に覚えているのに、タイトルすら忘れていたため、登場させられませんでした。偉大ですね、インターネットは。

20年前に放送されたこの番組は、脚本・原作共に山田太一、主演は細川俊之、なべおさみです。この当時、まだなべやかんはデビューなんかしていませんが、この役にあるような父親になるとは、予想もしていなかったに違いありません。

細川となべはおさななじみという設定です。冒頭、戦時中に類焼を防ぐために路地の家を間引く作業があり、2人の家はあっさりと間引かれ、戦災に遭ったわけでもないのに「家無し」になってしまったトラウマを引きずっています。
そんなある日、細川が朝起きると新興住宅地であるはずの家の周辺が雑木林に囲まれていることに気付きます。そして憲兵の格好をした若者の来訪...ラジオからは大本営の放送が...悪趣味なイタズラにしては??と思いつつ、細川一家は逃げ出します。その道中、偶然なべと出会います。なべも同じ時刻、沖に息子と舟釣りに出かけており、帰ってきてその異変に気付いたのでした。こうして細川一家となべ親子は戦時中の日本を彷徨うことになります。

なべの息子は「不良少年」で、その日も息子に「親子のふれあい」を味あわせてやろうと、ムリムリ釣りに付き合わせていたのでした。まだ小さな細川の子供達に比べて、なべの息子は目立ちます。長髪で染めた髪を短く切って誤魔化してはいますが、当時は徴兵に取られるまでもなく、勤労奉仕で工場に行っているのが普通でした。いつの間にか、細川となべの前からその息子だけが姿を消していました。

細川は放送作家だったこともあり、逃げるときに戦時中の生活を書いた本を持ち出していました。当時の住民票を偽造し、とにかく住まいを空襲のない街に定め、「世間」に溶け込もうとします。

しかし、自分たちを受け入れたまま、時代の軸が狂い始めていることを知ります。空襲の無いはずの街に、空襲警報が発令されました。その最中、件の息子が戻ってきました。
「オレはオレの過去を問わずに、オレを使ってくれる処(勤労奉仕先の工場)へ戻る」
そういって、戦火の街へ消えていきました。

細川達も逃げまどいますが、ついに爆風で吹き飛ばされて意識を失います。やがて朝が来て目覚めた細川は片腕がないことに気付きますが、それでも家族はどこか探そうと辺りを見回します...しかし、そこは戦時中の日本でありませんでした。幸い、近くに倒れていた男に大声で尋ねました。
「いまは、いったい何年なんですかぁ...」

ここでドラマは終わりです。

興味深いのはなべの息子「やかん」の豹変ぶりです。当時の若者の「非行」の原因として、個性を認めていない...など言われていましたが、しかし実際は個性ではなく「役割」を提示していないからだ、という点をズバリと指し示しています。

この「やかん」が親の世代になったのが現在の21世紀の日本です。
そして再びキナ臭い動きが取り沙汰されるような「世間」がそこにあります。20年前よりもある意味「怖い」世の中になってしまったかもしれません。

細川が自分の子供達がウォークマンとかを持ち出そうとしているのを見て叱ります。持っていっても使えないガラクタになることは目に見えていますからね。今ならさしずめ、ゲームボーイとかなんでしょうか?かえって今の子供達の方が耐えられないかもしれませんね。

2002年5月20日(月)




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