めしやら釣りやら

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旅のおわり






5月6日 その34

温泉を出て外をぶらつく。天気が下り坂で雲が空を覆いはじめている。風も少し吹き始め、もしかしたら家に辿り着く前に雨が降り出しそうである。
風呂から上がりこれからバイクに乗ると言った気分ではなくなってしまっているのだが、
ここでキャンプする訳にもいかないのでメットを被りやまゆり温泉を後にした。

国道361号線を北上し長野と岐阜の県境、長峰峠を超える。
すぐに361号線を外れ濁河温泉へ続く県道に入った。
こんな山の中にしては立派な道路である。どんどん先へ行くと道の両端に雪が現れ始めた。

5月になったというのに、溶けきれずぐったりと横たわっている。
道の先には、去年オープンしたばかりのチャオ御岳スノーリゾートがあった。
ここから見えるのはゲレンデの下の方だが、雪がまだたっぷりとある。
この季節にあの雪の量はちと驚いた。
明日1日休みが残っており、今日無事に家に辿り着けたら明日ここへ来ようかなと気違いの虫が騒ぐ。

広々とした道路はこのスキー場を過ぎると律儀すぎるくらいに “さっ”と本来の道幅となった。上り坂が続いており先へ進むごとに季節が逆戻りする。
2005-11-02 19:58:19







5月6日 その35

道端にうずくまっている位だった雪の量も峠付近では30センチの厚さで一面に残っている。
道の両端には熊笹が生い茂り、今すぐにでもその辺りから
のそのそと熊さんが出てきそうな雰囲気。
アスファルト舗装がそこら中ひび割れだらけで荒れ荒れの山道。
車がとおるよりも熊や狸の方がこの道を良く使っているのでは? 
熊さんの出現に怯えながら峠を下ると濁河温泉スキー場に出た。

昔懐かしのシングルリフトが建っており、先ほどのチャオより趣があってよろし。
なんともこじんまりとしたスキー場である。
雪が解けたばかりなので、たんぽぽやすいせんの花などは咲いておらず、笹の緑だけが目につく。
突き当たりの道を左に折れると濁河温泉へ行くのだが、ここは涙を呑んで右に折れる。

さて、後は国道41号線に出て帰るだけだなとタカをくくっていたら地図を見てまだ先が長い事に愕然とする。
見ると峠を越えて走るかなりやる気に満ちた道路である。
温泉に入り気分は極楽。
この旅が始まってから3日目だけど、いくつも峠をこえて、ヨレヨレという言葉がぴったりの僕には何かとどめを刺された気分である。
時計を見れば4時すぎ。
あまりとどめを刺されていても仕方ないので、 “ヨッコラショ”とバイクに跨り出発した。
2005-11-04 22:20:20







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* 5月6日 その36 *
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* 道は山肌を縫うように大小のカーブを繰り返し先へ伸びている。 *
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* 所々はガードレールも無く、足を踏み外したら何十メートルも下の谷底行きで大変スリルがあって面白い。 *
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* 延々と続く道が向こうに見える。 *
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* 緩やかな上り坂のまま小さなカーブを繰り返す。 *
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* 最後のカーブを抜けると、その先端は右カーブをしていて、ここからはそれがそのまま空に続いているように見える。 *
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* 実際走っているとそのまま飛んでいけそうな気分になるのだが *
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* “狐にばかされる”というのはこういう気分のまま本当に飛ぼうとして谷底に落っこちてしまう事を言うのではないかと感じてしまう。 *
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* それにしても山深い。 *
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* 見えるのは山々そしてまた山。 *
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* 向かいの山裾が穏やかに広がり、眼下に小さく谷が有る。 *
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* 木々を揺らす風の音がはっきりと聞こえバイクのエンジンを止めると深い孤立感に包まれた。 *
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* こういう感覚を “恐れ”というのだろうか。 *
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* こんな気分はここしばらく忘れていたが、この凛とした雰囲気は悪くない。 *
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* 5月6日 その37 *
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* 先を急がないといけないのだがそんな気分ではなかった。 *
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* それにここを通り過ぎれば交通量の多い国道41号線を走り、 *
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* 後は良く知った道順で家に帰るだけの道中である。 *
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* 旅気分でいられるのはもうこの辺りまで。 *
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* 谷を見下ろしながら緩々とつづく山道はしばらく行くと、すずらん高原から来た道と合流した。 *
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* 今来た道は以前通った事が有るような気がするが、いつそんな事があったのか思い出せない。 *
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* 道は幅が増え谷に沿って緩やかに下っている。 *
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* ギアをトップに入れてスロットルも開かないままステップに立って坂を下る。 *
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* カーブが緩いので立ったまま体の下でバイクを傾けるだけで回ってゆける。 *
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* 標高が下がり、 *
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* 緑がだんだん濃くなり、 *
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* さっきまで雪の中に居たのが嘘の様だ。 *
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* 両側に迫っていた山がだんだんと遠のいてゆく。 *
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* 道に沿って流れていた谷もその幅を広げてきた。 *
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* 5月6日 その38 *
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* 谷のすぐ向かいに林に囲まれたキャンプ場がある。 *
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* 休みも終わりと言う事も有るのか、テントはまばらで落ち着いたキャンプが出来そう。 *
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* すぐ近くにはひめしゃがの湯という温泉施設があり、ゆっくりとくつろぐには絶好のシュチュエーションである。 *
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* 後1日休みがあればなぁ、とくやし涙をのんで遠くからそれらを眺める。 *
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* そういえば、この文章の始めにキャンプ場は使わないとかっこいいことを書いてしまったが、 *
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* この場合思うだけなので、それでいいのである。 *
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* 5時10分、国道41号線に出る。 *
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* 交差点のすぐ脇にあるガソリンスタンドで給油。 *
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* 県内ナンバーのためかここでは何事も聞かれずバイバイとなった。 *
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* 41号線を南下。 *
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* いっぺんに交通量が多くなったので、少しビビリながら馬瀬村に向かう国道257号線との交差点まで来る。 *
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* いつもならば旅のライダーとよくすれ違う季節なのだけれど、どういう訳か今回の旅ではそういうライダーは少なかった。 *
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* 出かけた場所がそういう所だったのか、それともライダーが少なかっただけなのか? *
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5月6日 その39

41号線を右折し飛騨川を越え夕暮れの山越え。
トンネルを抜けると馬瀬村である。
いつの旅の終わりでもこの村だけは必ず通って帰っている。

別にこだわっている訳ではないのだがこうなるので仕方ない。
いつもはもう少し早い時間に通るので、この村の温泉に入って行くのだが、今回はもうすでに開田高原で温泉は入っているし、
時間も遅くなるので素通りとなってしまった。

この村の小学校前から明宝村小川に抜ける。
広域農道があるのでそこを通って小川へ。
こんなに近くで、しかもこの小川の辺りはよく来ていたのにも関わらず、
今走っている広域農道は一度も通った事が無い。

先ほどの馬瀬村もそうだったが、随分あちこち道が良くなって以前の面影が感じられなくなっている。
便利になる事はいい事かもしれないがやりすぎだ。
道路とは関係の無い谷や田んぼまで変えてしまって、景色にぜんぜん色彩が感じられない。
工事関係者は良いに決まってる。
住んでいる人たちは本当にこれでいいのか?

陽も大分暮れてきて杉林に囲まれたこの辺りは薄暗い。
民家が無くなると道幅が急に狭くなり、やがてきついカーブと上り坂となった。
高度を稼ぎながら登ってゆくと林の切れ目から御岳山が霞んで見える。
最後のカーブを曲がると小川の峠に出た。

(完) 2005/11/13
2005-11-13 21:37:01

この商品説明はオークション プレート メーカーで作成しました
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