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他界のお気楽アナザーワールド
劇台本でござ~い1
劇の台本でございます。
「三軒長屋」という古典落語をモチーフに考えました。
では登場人物の紹介のあと。はじまりはじまり~。
幕引き2 (拍子木・口上)
落語家2(まくらの話)
名人(最後の落語)
けちべい(長屋のオーナー)
ぼっちゃん(けちべいのむこ)
けちべいのかみさん
お花(けちべいのところの奉公人)
熊(大工、けちべいの右となり)
熊のかみさん
長屋の金ちゃん(熊の子ども、とんち小僧)
銀ちゃん(熊の子ども、幼い)
赤ちゃん(熊の子ども)
浪人さん(武、けちべいの左となり)
八(熊の友達)
定吉(つぼやの丁稚どん)
番頭(つぼやの番頭さん)
場面一(幕前)
(上手からまくひき登場、ざぶとんを4まいならべて、かんばんの紙をめく る。)
ま1「今から劇が始まりますが、古典落語劇も今回でパート2ということに なります。」
ま2「古典落語は江戸時代に始まり、明治に完成された日本独特の話芸、お 話をする芸のことです。」
ま1「今日の劇はいくつかの落語のなかから特に長屋ものといわれるものを 集めて作ったものです。」
ま2「それでは、どうなりますか。ごゆっくりごらんください。」
(上手へさる。)
(上手よりおはやしにのって落語家12がでてくる。)
落1「えーっ、まいどばかばかしいお笑いを一席。」
落2「えーっ、世の中にはいろいろな人がおりますが、落語の中にはとんでもない人も登 場します。」
落1「特に、長屋の住人はたのしい人が、多いようですね。」
落2「長屋と申しますのは、今でいうアパートみたいなものです。」
落1「なーんて言いましても、今のアパートというほどりっぱなものではありません。」
落2「江戸の昔は、火事も多く、しっかり家をたてるより、燃えてしまってもあとくされ のない、長屋がこのまれたようです。」
落1「さあて、私どもがいつまでも説明していても話はすすみません。」
落2「まずは、いつもの定吉どんの登場で。それでは」
落全「おあとがよろしいようで。」
(落語家、下手へさる。)
(まくひき、かんばんの紙をめくる。)
ま1「それでは、はじまりはじまりー。」(ひょうしぎをならす。)(まくがあく。)
場面二(セットA)
(まくがあく。)
(舞台上手、定吉が店の前でそうじをしている。)
定「あーあ。やんなっちゃうな。そうじばっかりさせられて。」
(そこへ下手から、銀が登場する。)
定「あれ、熊さんとこの銀ちゃんじゃないですか。」
銀「あー。定吉さん。ぼくね。いいもの持ってんだ。」
定「なんです。そのいいものって。」
銀「これこれ。」(一メートルのものさしをだす。)
定「なんですか。それー。」
銀「これはねえ。ものさしっていうものだよ。」
定「えーっ。こんなちっぽけなものが、ものほし。これじゃあせいぜいパン ツ一枚しか干せませんねえ。」
銀「ものほしじゃないよ。も の さ し。」 2
定「あーあ。ものさしね。それなら知ってますよ。かしてごらんなさい。」
定「であーっ。ものさしーっ。」(銀のわきを刺す。)
銀「わーっ。やられたーっ。」
銀「もう定吉さんたら。これはね。長さをはかる道具なんだよ。」
定「ははん。さては熊さんの大工道具から持ち出してきたね。」
銀「へへへへへっ。とうちゃんにはないしょだよ。そうだこれを使って定吉さんのせたけをはかってやるよ。」
定「そりゃうれしいね。おいら生まれてこのかたいっぺんもせたけなんかはかったことないからね。」
(銀、定吉のせたけをはかろうとする。)
銀「定吉さん。おおき過ぎてとどかないや、ちょっとかがんでおくれ。」
定「へいへい。」
銀「えーっと。六十三センチ。」
(下手から、ぼっちゃん登場。)
定「へーっ。わたしってずいぶん小さいんですねえ。」
ぼ「あらあら、またばかなことをやっちゃって。」
定「あっ。これはこれは、けちべいさんとこのぼっちゃん。」
(上手から番頭さんが)
番「定吉、何を子供相手に油をうってんだい。うらからかびんを出して店に ならべときなさい。」
定「へーい。」
ぼ「ねえ。銀ちゃん。」
銀「なんだよ。またぼくをいじめるつもりか。おにいちゃんに言い付けるぞ。」
ぼ「今、六十三センチとかなまいきなことをいってたけど、数をかぞえれるのかい。」
銀「あったりまえだい。」
ぼ「それなら、ひとーつ、ふたーつとかぞえて、十までのあいだにつはいくつつくのか、知ってるかい。」
銀「しってらい。十個にきまってらい。」
ぼ「ぷぷぷぷぷぷぷぷ。」
ぼ「いやだね。単細胞は。一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つ八つ九つと数えて十にはつがつかないから九個だよ。」
ぼ「うーっぷぷぷぷぷぷぷぷ。」
銀「えーん。くやしいよーっ。」
ぼ「わたしの勝ちだね。うーぷぷぷぷぷぷぷ。」
(下手より金登場。)
金「ちょっとまったー。」
銀「あっ、おにいちゃん。」
ぼ「あっ。金ちゃん」
金「おうおうさっきからきいてりゃ、この長屋の金ちゃんのかわいい弟をずいぶんいじめてくれるね。」
ぼ「いやあ、それほどでも。」
金「でも、嘘を教えてもらっちゃあ、困るなあ。」
ぼ「うそ。だれがうそいったんだ。つは九つですよ。」
金「長屋の金ちゃんの目はふしあなじゃないよ。ひとつふたつと数えて。いつつにはちゃーんとつが二つついてるよ。い つ つ。だから、銀ちゃんの言った。つは十個がただしいんだよ。」
ぼ「がーん。・・・・くやしいーっ。 おぼえてろ、パパにいいつけてやる。」
(ぼ、下手に去る。)
(入れ替わりに、熊と八が下手より登場。)
八「なんだい。けちべいさんとこのぼっちゃんがないてたねえ。」
熊「さあ、はらでもこわしたんじゃないか。」
銀「あっ、とうちゃん。」
熊「おっ、金、銀じゃねえか。母ちゃんがさがしてたぞ。はやく家にかえんな。」
金「はーい。」
八「熊さんとこの子は元気があっていいね。」
熊「まあな。あれ、おれたち何しにきたんだっけ。はっさん。」
八「あれ、なにか、頼まれものを買いにきたんだったけど、・・・・・・思い出せないや・・・かんびんしてくれ。」
熊「おお、そうそうそのかびんを買いにきたんだ。」
(熊、店に近付き)
熊「ちょっくらごめんよ。」
定「はーい。」
八「ちょいと、たのまれもんがあってね。かびんをみしてくんな。」
定「かびん、かびん。ちょっとまってね。番頭さん、番頭さん。」
番「なんでか。そうぞうしい。」
(番頭、上手より。)
(定、番頭のわきをつっつく。)
番「いやーん。だめーっ。わおっ。」
定「ねっ。かびんでしょ。」
番「なにをするんですか。」
定「いや、熊さんとはっつぁんがかびんをみたいって・・。」
番「ばか言ってないで。おくのかたづけでもしてなさい。」
(定上手へ)
番「まいどありがとうございます。このへんにならんでいますので、どうぞ手にとってご らんください。」
八「これなんか、いいんじゃないの。」
熊「なかなかいいねえ。・・・・うんっ。こりゃだめだ。口がない。」
八「あれっ。ほんとだ。こっちのも口がない。これじゃ、花が入れられないよ。」
熊「おい、見ろよこれ、口がないだけじゃない、おまけにそこまで抜けてるぜ。」
八「こりゃあひどい。」
番「どうかしましたか。」
熊「はっさん。かえろかえろ。」
八「またにするわ。」
(熊、八下手へ)
番「なんなんだろうね、あの二人は。」
番「おや、かびんが全部さかさまにおいてあるよ。定吉ー。定吉ーっ。」
(番、上手へ)
(幕閉まる)
場面三(幕前)
ま2「さあて、場面はかびん屋さんからねいよいよ長屋にうつります。」
ま1「真ん中が、大家さんのけちべいさんの家、そして両隣が流行らない剣術道場の浪人さん。大工の熊さん一家です。」
ま2「さあ、したくはできたでしょうか。」
ま1「もういいかい。」 舞台うら「まーだだよ。」
ま1「もういいかい。」 舞台うら「まーだだよ。」
(準備できしだい。) 舞台うら「もーいいよ。」
場面四(セットB)
(舞台中央にけちべいとかみさん、お花がいる。)
(さらに上手に熊のかみさんと赤ちゃん。下手に浪人がいる。)
赤「あんぎゃーっ。いんぎゃーっ。うんぎゃーっ。」
熊か「これこれ、なくんじゃないよ。」
赤「えんぎゃーっ。おんぎゃーっ。」
熊か「あーっ。よしよし。」
(上手より金と銀が走りでてくる。)
銀「かあちゃん、ただいま。ごはんまだーっ。」
金「ただいまーっ。」
赤「あんぎゃーっ。いんぎゃーっ。うんぎゃーっ。」
銀「かあちゃん、めしめし。はらへっためしくわせ。」
け「ええーい。うるさい。」
けか「ほんとそうざます。」
浪「めーん、こてーっ。どうーっ。」
(浪人竹刀をふる。けちべいそっちを見る。)
浪「めーん、こてこてこてこてこてこてこて、めーん。」
け「ええーい。うるさい。」
けか「ほんとそうざます。」
け「お花っ、両隣へいってだまらしてきなさい。」
花「はっはい。旦那さま。」
(上手へむかって、)
花「だんな様のけちべいがおこっています。静かになさってください。」
(下手へむかって、)
花「だんな様のけちべいがおこっています。静かになさってください。」
け「ふん。やっと静かになったか。バブルもほうかいしてアパート経営も楽じゃなくなった。」
けか「ほんとそうざます。」
け「おまけに、右どなりの浪人のへたな剣術のけいこもやかましいし、左どなりの熊のところも年がら年中騒々しいし、」
けか「ほんとそうざます。」
(ぼっちゃんが下手から)
ぼ「パパーっ。となりの金ちゃんにいじめられたーっ。」
け「なっなにーっ。」
ぼ「ぼくがなーんにもしてないのに、ばかだばかだっていじめるんだよーっ。」
け「まったくなんてやつだ。ちびっとばかり頭がいいからって・・・。」
けか「ほんとそうざます。」
け「ええーい。なんとかして、両隣を追い出してやる。」
ぼ「わーい。ぼくのへやにするーっ。」
け「よしよし・・・。」
(上手より熊と八、上手がわで)
八「それじゃ、熊さん。」
熊「おう、ごめんよ。」
(八、下手へ向かう)
八「それにしても、あのかびんはひどいなあ、うんっ。まてよ、さかさにすればつかえるかも・・。」
(八、ころぶ。)
八「いててててっ。・・・・なんなんでえ。こんなところに石なんかでてやがって」
(歩きだし八、ころぶ。)
八「いててててっ。・・・・またころんじまった。こんなことなら、さっき起きなければ良かった。」
(八、下手へさる。)
(下手より浪人登場)
浪「めーん。どう。」リフレイン
(浪人舞台中央へ。)
(お花も舞台中央へ。)
浪「めーん。どう。あれ。お花ちゃん。」
花「あっ。浪人さん。ごめんなさい。だいじなおけいこのじゃまして。」
浪「いやいや、めーん、どう、も面倒になっていたところでござる。」
花「まーっ。浪人さんて洒落がお上手なのね。」
浪「いやー、それほどでも。」
花「あっ、そんなことより、たいへんなんです。」
浪「どうしました。」
花「うちのだんなさんが、浪人さんと熊さんたちを長屋からおいだすって。」
浪「なっなに、それは一大事。せっしゃ浪人中ゆえ、ここをでればほかにいくところなど ござらん。どうしよう。」
浪「さしあたって、むこうどなりの熊どのと相談してみるでござる。」
(花は奥へ。浪人は上手がわで)
浪「熊どのー。熊どのはおられるかー。」
(浪人上手に入る。しばらくして、熊、金、銀と一緒に上手から出てくる。)
熊「そいつは弱った。家賃もたまっているから、でてけっていわれたら文句も言えやしな い。」
浪「せっしゃとて同じ、お金さえあれば、たまった家賃をはらって、出てくものかといえ るのでござるが。」
熊「なんかいい知恵はないもんかね。」
(金、熊のそでをひっぱる。)
金「とうちゃん。とうちゃん。」
熊「なんでえ。金、子どもは関係ないからすっこんでろ。」
浪「いやいや、金ちゃんならなんかいい知恵があるかもしれない。」
銀「そうだよ。うちは頭のいい順に、金ちゃん、銀ちゃん、とうちゃんってきまっている んだ。」
浪「なるほど、金、銀、どうでござるか。赤ちゃんって。」
熊「でっ、金なんなんでえ。」
金「うん、こうすればいいんだよ。・・ぶつぶつぶつ。」
浪「なるほど、なるほど。」
熊「ふんふん。」
浪「それは、よい考えでござる。」
熊「へえーっ。よくわかんねえがたいしたもんだ。」
浪「ではさっそくしたくをしてくるでござる。」
(浪人下手へ、熊たち上手へ。)
(けちべい、ぼっちゃん中央へ。)
け「あーっ。ここでこうしていてもしかたがないわい。たまった家賃をとりにいって、は らえないって言ったら、それをネタにおいだしてやるか。」
ぼ「パパ、ぼくもいくよ。」
(浪人下手より。)
浪「たのもーっ。」(耳元で)
け「わっ。・なにするんだい。あっ。浪人さんちょうどいい、あんたに話があってね。」
浪「やっ、それはちょうどよかったでござる。せっしゃもけちべいどのにおりいって、話 があるでござる。」
け「なんなんだい。」
浪「せっしゃ、今のすまいをひっこそうと思うのでござる。」
け「なっなにーっ。それはほんとうか。」
浪「はい。しかし、ひっこすためにはなにかと物入で、五十万円ほどござらんと、」
け「ご、五十万。うーん。」
浪「いやいや、せっしゃすぐには無理ですが、道場で千にんぎりをしてお金をかせぎしだ いすぐに出ていきますから。」
け「どれくらいかかるんだね。」
浪「そうですなあ。ざっと半年ほどは、」
け「は、半年も。」
浪「人死にもでるかと。」
け「し、死人が・・・。」
(けちべい、前へ出て。)
け「あと、半年もいられちゃたまらない。きょうび立退料といえば、五百万や六百万は当 たり前、五十万なら安いもんだ。」
け「浪人さん。その金。わたしがだそう。」
浪「えっ。本当でござるか。」
け「その代りすぐにでもひっこしのしたくをしてくださいよ。」
浪「あっ、それならもうできているでござる。」
け「えっ。そりゃまたはや手まわしな。」
浪「それではごめん。」
(浪人下手へ)
(上手から熊と金。)
熊「けちべいさん。」(耳元で。)
け「わっ。なんだい、こんどは熊さんか。」
熊「ええっ、そんでもって、大家さんに話があって、」
け「なんなんだい。」
熊「えー。よくわかんないんですがね。ひっこしをしようとおもいまして。くわしくは、金のやつが・・・。」
け「また、ひっこしの話かい。」
金「うん、うちはおいらの通ってる学校にずいぶんとおいもんだから、少しでも近くへ。 ひっこそうっていったんだよ。」
ぼ「ああ。おまえんとこの学校は、ずーっとあっちのほうだからな。」
金「で、すぐにでもひっこしたいんだけど・・。こどものおいらが言うのもなんだけど、 うちは家族が多いし、・・その、お金がね。ねっ、とうちゃん。」
熊「へっ、へい。そうなんで。」
け「でっ、いくら必要なんだい。」
(金、指を五本たてる。)
熊「えっと、ご、五百(金、もっと上とハンドサイン)・・五万・・(金、もっと上と) ええーい、五兆円。」
け「ごごごごごごご五兆円。」
ぼ「パパ、地震みたいだよ。」
金「じょうだんですよ。五十万円。」
け「五十万どっかできいたような。・・・・えーい。その金わしがだそう。すぐお花にも っていかすから、ひっこしのしたくをしてくれ。」
熊「それならもうできてます。」
(熊たち上手へ)
け「なんだか、わかんないけど、両隣がまとめてひっこしてくれるとは、ありがたい。」ぼ「やったね。パパ。」
け「あいたとちを利用して、ディズニーランド以上の一大レジャーランドを作ってひとも うけしようかの。」
(ぼっちゃん、両手広げ)
(けちべいたち奥へ)
(少しして、花が)
花「あーっ、このお金をもっていったら、本当に浪人さんたち引っ越しちゃうのかな。」(下手へ)
花「浪人さん、浪人さん。」
(出てきて)
花「あー、本当に引っ越しのしたくがしてある。」
(上手へ)
花「熊さん、熊さん。」
(出てきて)
花「熊さんまで・・。」
(奥へ)
(上手から、熊たち)
熊か「おまえさん、本当にだいじょうぶかい。」
熊「よくわかんねえが、金のやつにまかしておけば、だいじょうぶだろ。」
銀「にいちゃんなら、だいじょうぶ。だいじょうぶ。」
赤「おんぎゃーんぎゃ、おんぎゃーぎゃ、おんぎゃーぎゃ。」
銀「赤ちゃんもそういってるよ。」
(下手から、浪人)
浪「おーっ熊どのしたくができましたなでござる。」
熊「それじゃあ、けちべいさんとこに」
浪「あいさつにいきますか。」
熊「こんにちは」
浪「けちべいどのーっ。」
け「なんだい、そうぞうしい。」
熊「えーっ。ひっこしのあいさつにきました。」
熊か「いろいろおせわになりました。」
赤「おぎゃおぎゃおぎゃーおぎゃおぎゃおぎゃーおぎゃー。」
け「おぎゃおぎゃうるさいね。」
け「で、さっさとでてってくれるのはありがたいがいったいどこへ、ひっこすんだい。」
金「はい、うちは少しでもがっこうに近いように、浪人さんのところへ。」
浪「せっしゃは、熊どののところへ。」
け「なっなっなっなにーっ。なにーっ。・・・・そっそれじゃあ、両隣が入れ替わるだけ じゃないか。」
け「そんなことはゆるさないよ。二人ともたまりにたまった家賃をはらってないんだからね。それをはらえなきゃー、でてってもらうからね。」
金「家賃はいかほどたまっているんですか。」
け「きいておどろけ。両方とも五十万円もたまっているんだ・・・。五、五十万円。どっ かできいたような・・・。」
(けちべい、ひろげたじぶんの手を見る。)
金「とうちゃん。」(熊から金のつつみをうけとる。)
金「浪人さん。」(浪人から金のつつみをうけとる。)
金「はい、けちべいさん。」(けちべいに、金のつつみをわたす。)
け「こっこれは。」
熊「それじゃあ、けちべいさん。」
浪「それでは、けちべいどの。」
(それぞれ、上手、下手へ。)
け「なんでこうなるの。」
(幕閉まる)
(上手よりまくひき2がさぶとんをもってでてくる。かんばんをめくって上手へさる。)(上手から名人登場。)
名人「(間)えー、今日のお話は、まっ大家さんと店子、けちべいさんと熊さんたちのけんかのお話とも言えるわけですが・・・。そういえば、以前、えー夫婦げんかでねずみがチュウなんて落語もございました。けんかなんてものは、まっどちら様でもなさるわけですが、なかには、おかしなものどうしのけんかもございます。
えーっ。あるとき、人の手と足が小さなことでけんかをいたしました。
はじめに手がもうしました。「足よりおいらは上にある。おいらがあにきだまいったか。」それを聞いた足はおこりまして、「どこかへ行くとき、はしるとき、おれがいなけり ゃこまるだろ。」とこちらも負けてはおりません。「仕事をするのも、食べるのもおいらがいるからできるのさ」手がこうもうしますと、足はくやしい顔をして「ようし、それならいまにみろ。うんこふむからおまえふけ。」手足のけんかはやむことがこさいません。しょ うしょうきたないおちがつきましたが、みなさまには、良いほうの運がつきますように・ ・・。(おじぎ)」
(名人下手へ)
(上手からまくひきが出てくる。)
まく1「おしまい、おしまいー。」
まく2(拍子木を打つ)
(登場人物、舞台裏に整列し、まくが開くとさいごのあいさつ)
作 他界でございます。
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