ぽれぽれ

3ケ月目のある日


3ケ月目のある日

1~2ケ月は、一日中、おっぱいをあげているような気分だった。
それに切れるような乳首の痛さ。
『赤ちゃんの吸いやすい形になるし、その痛さを超えたら楽よ』
助産婦さんは言う。
しかし、簡単に言い表せる痛さじゃない。
試したことはないが、洗濯バサミを
はさんだような痛さである。

『ちょん、ちょん、パク!!!』が授乳中の掛け声であった。
うまく瑞喜の下に乳首をのせなくてはいけないが、
お互い初心者。授乳もうまくいかない。

『私がこっちで支えるから』実母の手伝いをお願いする。
『タイミングが早いかも~イテテテ』
出産前のあの聖母マリア像のようなイメージとは
ほど遠い…現実は厳しいものである。

あまりの痛さに軟膏を塗って、サランラップで保湿したりして
保護したものである。
乳首には水疱ができ、つぶれる。それを繰り返す。
そうやって強くなり、赤ちゃんのベストな形になるらしい。
夜中、うまく吸えない瑞喜は泣く事もあった。
ミルクになるとゴクゴク飲む瑞喜。
瑞喜は吸う力は強かったため、とにかく痛かったし、
ミルクと出方が違うためグズる。

いつまでこんなことが続くのか。
母乳育児とはこんなものだったのか。
こんな痛みをしてまであげなくてはいけないのか。
こんなに瑞喜に汗かかせてまで飲ませなくてはいけないのか。

涙が出そうだった。

瑞喜の成長を綴る100日日記には
授乳したおっぱいの時間とミルクの量の記録が残るようになる。
私の苛立ちと比例するかのようにその記載は
細かくなってきていたような気がする。

自宅に戻ってからである。
友達の話で聞いた『添い乳』を実行することにした。
『目と目をあわせてのませましょう』
そう言われたけれど、そういえば今まで
そんな余裕なかった。

添い寝してあげた。
気づいたら私も寝ていた。

そんなこんなで一日過ぎた…
パパが帰宅して聞かれて気づく。
『今日、ミルクいらんかった!』

瑞喜の満腹中枢も発達してきたからか?
4ケ月目を迎えようとした頃、母乳が足りてきたのだ。
気づくと、『ちょんちょん、パクッ』の
気合もいらなくなった。
乳首も全く痛くない。

壁を越えた。

4ケ月目にして母乳をあげる幸せを感じてきた。
夜中の添い乳で、暗闇でもおっぱいが
すぐわかる瑞喜を見て感激した。

やめようと何度もくじけそうになったことが
懐かしく感じた。
『母』になれた実感をあらためてかみしめる。

母乳だと夜中もいまだに数回起きる。
でも長い育児生活でこんなにかわいい寝顔を
見られる時期は今だけだ。

おっぱいをあげられるのは母親の特権である。
今、フムフム笑って飲んでいる我が子の
笑顔をみるたびに頑張ってよかったを思う。


いっぱい飲んで、大きくなるんだよ。


© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: