FXトレーディング Arts&Logic

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●バッハ・コードの謎

バッハ・コードの謎:(ヨハン・セバスチャン・バッハの音楽作品に隠された謎の数値コード、ないしは市場価格変動の対称性について)


bach
連載第1回「市場取引のマジックナンバー」

市場取引者の中でかなり多くの人たちが自分の取引手法にマジック・ナンバーを取り入れていることが知られている。そのなかで、もっとも信仰者が多いのが黄金分割とフィボナッチ級数であろう。黄金分割は自然界の成長と増殖を司る基本的比率である。市場分析で広く使われているもう一つの幻惑的な魔法:フィボナッチ級数と根源を共有している。エリオット波動相場理論は数値的にはこの二つの理論の上に築かれている。

「バッハと数値」と称するオランダ語の本が、プリンス・ベルンハルト芸術財団の援助を受けてワルブルク社より出版されたのは一九八五年の事である。この大作の著者はティルブルク音楽院の楽理科教授マリヌス・カスベルゲンと、ユトレヒト音楽院のオルガン科教授、及び聖ランベルトゥス教会のオルガン奏者を兼任するケイス・フアン・ハウテンである。

千件は下らないと思われる例題を縦横に分析して、驚愕的な結論を読者に納得させようとしている。その結論とは次のようなものである。

バッハは生涯の大部分の期間を通じて自分が死ぬ日を知っていた(もしくは決めていたのかもしれない)。彼はその日を、自分の名前の数値変換から割り出していた。バッハは死ぬ日の数値を自分の宗教的音楽作品の中に秘密のコードとして予言的に書き込んだ。そして事実、その日に生涯を閉じた。

筆者は、この本をオランダ放送協会の音楽図書館で発見した。あまりの過激な結論に読む手が震えたのを覚えている。

連載第2回「数象徴、ないしは文字列の時系列変動について」

著者の主張によると、バッハの人生と作品に、ある種の数象徴が基本的な役割を果たしたことが確実だとする。繰り返して、同じ数象徴的秘密のコードが多数の作品に発見できるからである。

著者の研究方法は、まずバッハの名前とある種の概念のアルファベット綴りを数値に変換することに始まる。次に、その数値と、作品の小節群数と音符数との数構成的な一致を調べる。

音楽家の間で一般に知られている音程における数象徴はむしろ二次的に取り扱われているのがすこし意外であった。

「バッハと数値」第一章においては、Bachという名前から導き出せる数象徴とバッハ作品との関係を取り扱う。Bachをアルファベット綴りの順位番号で置き換えると2138となる。その合計は14である。

バッハのフルネームはご存知のようにヨハン・セバスチャン・バッハと称した。そこでJ.S.BachやJohan Sebastian Bachから導き出される数値象徴が、バッハの各主要作品に超人的とも言える統合力を伴って繰り返し現れることが多数の例証によって示される。

それが作曲者の高度な遊びであったのではなく、こういうアプローチがバッハの作曲行為の基本的手法であったと主張される。

続く第二章においては、我々には聞きなれないローゼン・クロイツァー、すなわちバラ十字結社(ドイツ17世紀の神秘的秘密結社)と、バッハの関係が語られる。 

連載第3回「音楽の設計図:数列」 (第3回)

第二章においては、我々には聞きなれないローゼンクロイツァー、即ち薔薇十字結社とバッハとの関係が語られる。

クリスティアン・ローゼンクロイツの名前のスペリングと、この結社の主要概念を表す用語が、バッハの作品中に数象徴として隠されていることがゴールドベルク変奏曲などの例を使って示される。ローゼンとはドイツ語で薔薇を指し、クロイツとは十字を指す。

名前を数象徴に使うとはどういうことなのか?前節でも述べたように、名前のアルファベットを、アルファベット順位数に置き換えて、その数値を、小節や音符を配列する際、制御の鍵とする作業を指す。

ローゼンクロイツの墓石に刻まれた碑文の数値合計と各単語の数値が「3声のシンフォニア」の総小説数と各部分の小説数に一致しているという仮説を詳説している部分は特に印象深い。

バッハは何故そこまで数にこだわったのか?実は音楽作品とは、ある意味で本質的には数そのものなのである。音楽の設計図である楽譜とは、音程の時系列変動を記述した制御コードなのである。

これは今から40年程前のハーモニカの楽譜は、子供でもすぐに分かるように(?)、音符ではなく数値で表記されていたことを思い浮かべてみよう。音符とは数そのものの表象なのだ。

この観点から、バッハ音楽と相場価格変動の思いがけない交差点についても触れてみることにしよう。

連載第4回「未来の予測」

第三章では、この本に好意的な読者でさえも躊躇ってしまうような、推論が提示される。著者カスベルゲン/ファン・ハウテン両教授によると、バッハは自分の誕生日を数象徴として使用したが、それだけでは無く死ぬ日付までも作品の中に数象徴として組み込んだと言うのである。しかも、それは西暦ではなく、バラ十字結社の党首ローゼンクロイツの誕生年を元年とする結社独自の暦によった。

バッハが自分の死ぬ日付を書き込んだ作品は、両著者によると22歳の当時までさかのぼって発見することが出来、それは死の直前まで意識的に続いたとする。つまりバッハは生涯の大半を通じて自分の最後の日付を何らかの方法で予知(もしくは自由意志による「予定」?)していたということになる。

第四章は「23869」と題されている。バッハは1685年3月21日に生誕し、1750年7月28日に没した。この間のバッハの生涯の全日数が23869である。両著者は「二声のインベンション」を例に取り、この局の小説数の全体構成に23869が隠されていることを示し、その部分構成に没年月日までもが刻印されていることを明らかにしてみせる。

いったい、バッハは自分が死ぬ日、つまり生涯の生存総日数をどのようにして知ることが出来たのだろうか?それが当時広範に利用されていた名前の数値コード変換の技法だった。

連載第5回「文字コードの数値変換による入滅日予測」

<バッハが自分の入滅日をどのように認識していたのか、真実は知られていない。彼はそのことについて何か証拠となる手記や手紙を残さなかったからだ。しかしいくつかの確かな事実が研究者によって指摘されてきた。それはバッハの名前が数象徴の観点からは稀有で完璧とも言える特別な内部構造を持っていたことである。

当時のドイツの教会では聖書の数値変換と言う研究が広く行われていたらしい。それはゲマトリアと呼ばれる手法で、アルファベットの各文字に固有の順序数を割り当てて、その総数を計算し、古代の欧州文明から延々と蓄積されてきた数象徴の知識に関連付けをする作業だった。

これを名前に適用したものがいまだに欧州の姓名判断の根拠となっている。もっとも有名なものは映画「オーメン」で有名になった数値で666だった。その出典はヨハネの黙示録13:17,18にあり、皇帝ネロの名前をヘブライ文字ゲマトリア変換したものとされる(映画に出てくるオーメンは従って架空の人物である)。

今、Aに1を割り当て、順次Bを2、Cを3という具合に振り当てていく。IとJはラテン語では同じなので両方を9とする。同じくUとVも同じなので20を振り当て、全てのアルファベットに24の数値を当てる(当時のドイツではまだラテン・アルファベットを使用していた。現代アルファベットの26文字ではない)。

Bachは2+1+3+8が割り当てられ、その総数は14となる。この14と言う数値がBachの数象徴のキーワード(=キーナンバー)である。

Johann Sebastian Bachを同じ手法で数値変換すると:
Johann:9+14+8+1+13+13=58、Sebastian:18+5+2+1+18+19+9+1+13=86、
Bach:2+1+3+8=14。

彼のフルスペルの総数は、従って58+86+14=158。ゲマトリアでは、この158をさらに分解してその総数を次のように求める。
1+5+8=14。つまりJohann Sebastian Bachの全体をゲマトリア変換すると、その部分であるBachと等しい14となる。
やはりバッハのキーワードである「14」がここに隠されている。

つぎに、イニシャルによる標準的省略表示形はJ. S. Bachであるが、ここにも14という数象徴が鏡に映ったような形で隠されている。
J=9、S=18、Bach=14。全体の総数は9+18+14=41。
この41は14の逆行形である。 対称形とも呼ばれる。

この「逆行ないしは対称」は、Bachの作曲技法の中心的技法のひとつであり、けっして無理なコジ付け等ではなかった。
対称とは美的構造の基本でもあることを考えると、41と14は図形的に等価であるとも見なせる。鏡を通じて映し出した同じ姿とも考えられるからだ。

つまりヨハン・セバスティアン・バッハという名前には14をキーワードとして何重にもリンクが張られているのだ。
それを感嘆するか、ナンセンスと捉えるかは自由である。しかしこの研究だけでもインターネットには無数の引用があることから見ても、この事実に見せられ、自分のライフワークにした研究者や音楽家が多数いるらしいことも疑えない。

これは偶然だったのだろうか?それともバッハの両親は考え抜かれた数象徴をバッハの名前に組み込んで命名したのだろうか?
これに関しても証拠となる文献は全く残っていない。ただヒントとして、バッハ家は代々非常に知能が高い音楽家を輩出しており、当時の著名な音楽家の家計だった。教会との関係も深く(J.S.バッハ自身も教会で高等教育を受けた)、数象徴ゲマトリアに精通していたのではないかと想像することは出来る。あるいは数象徴に詳しい専門家に依頼して、そのような名前を付けてもらったのかもしれない。

連載第6回「文字コードの逆行が未来を予定する鍵となった」

さて「バッハと数値」両著者の研究によると、バッハの入滅日は、姓名の数象徴(ゲマトリア)から導き出され、次のようにして計算された。

事実の提示:
Johan Sebastian Bach = [58] [86] [14] であることは既に述べた。 この和を辿って14というキーナンバーにたどり着いた。
今、この積を辿っていくと何になるのだろうか? 58*86*14=69832。
[69832]と言う数が得られた。
これはヨハン・セバスチャン・バッハという名前を数で表した表向きの象徴である。
ここから裏向きの隠された象徴を探り出す。

推測:
この数字の中に含まれる69に注目してみよう。
つまり69とは二つ巴(ふたつどもえ)という図形で、その意味するところは古今東西共通の認識があるようだ。
つまり、6と9が図形的に二次対称になっていることから対称形を形作るさまざまな連想を呼び起こす特別な数である。
この69は、数象徴を「ふたつどもえ」にせよ、そうすれば新たな意味が生まれるかもしれないと言う示唆であると解釈する。

ためしに、その暗示に従い、この69を中心点として69832の対称形を作ってみると、23869832となる。
23869と69832が69を支点として引っくり返されている。
69832は表のバッハそのもの。そして23869は裏のバッハ、この世の対称であるはずのあの世に渡った死せるバッハという意味合いだったのだろうか?

この逆行対称操作で得られた「23869」という数がバッハには啓示となって彼は1750年7月28日に死んだというのが、この著作の結論である。

連載第7回「生涯日数の計算」 2005年6月14日更新

事実:
既に述べたようにバッハは1685年3月21日に生誕し、1750年7月28日に没した。この間の総日数が23869日である。この数はバッハの名前の積から導いたゲマトリア数象徴の対称形である。偶然かそれとも何かの啓示か、意図的な生涯計画だったのか、ともかくバッハが23869日間きっかり生きたのは紛れも無い事実である。バッハは23869という数を自分の音楽作品にも刻印していたと両著者は例をあげて主張している。だとするとバッハはこの数値を意識していたに違いない。

疑問:
誰かが生まれた日と死んだ日は記録されたり記憶に残ったりする。しかし何日間生きたと言うような面倒な計算を普通はしない。バッハの当時にそれが出来たのだろうか?そもそも現代でさえ、当時のうるう年とかをどうやって知り、正確な暦を入手してバッハの生存日数の検証ができるのか?

推測:
バッハは幼少の時から教会のラテン語クラスで教育を受け、生涯の大部分を教会の音楽家として過ごした。教会は当時、暦の計算と管理と運用をおこなう最高機関だった。主としてうるう年を決定し、復活祭をいつにするかの正しい計算をする為に暦の宗教科学的そして宗教政治学的な管理と全国的運用が必要だった。そこでバッハにとっては自分が何日生きているかと言う事を教会の知識を得て知るのはさほど難しいことではなかった。

補足:
では、私たちはどうだろうか?このブログをPCで読んでいる方のほとんどが、即座に今日自分は何日間生きているかと言うことを知ることが出来る。PCの多くに標準装備となっているマイクロソフト・エクセルにはそのような計算機能が備わっているからだ。それはエクセル内蔵の日付計算機能で、ジュリアン・デート計算機が使われている。これは紀元前から今日に至る日付を、うるう年および「うるううるう」年を計算した上で、特定のセリアル・ナンバーに置き換えて四則計算が出来るようにした計算機である。ためしにやってみたが、私は執筆時何日間生きたかをたちどころに知ることが出来た。

そこでこのジュリアン・デート計算機能を使って、今度はバッハ死亡日マイナス誕生日を計算すると確かに23869日になった。残念ながらエクセルのジュリアン・デートは大昔の日付では機能しないように限定されている。そこで、インターネット検索によりジュリアン・デート計算機付のホームページが日本語で簡単にいくつか見つかるので試してみると計算することが出来る。ちなみにジュリアン・デートとジュリアン暦とは全く別物なので、検索するときに留意したい。

連載第8回「バッハの死」 2005年6月16日更新

疑問:
そもそも自分の死ぬ日を予知していたとしても、実際にその日に神の意思により召された、と言うことは受け入れがたい気がする。バッハは作曲家であって、決して聖人では無かったからだ。とすると、ここまで述べてきた前提が全て事実だったとしても、バッハは神の啓示ではなく、自分の自由意志で予定日に死んだに違いない。本当にそういう死に方が当時出来たのだろうか?がんじがらめの不自由状況で他人任せ(例えば病院)の死を受け入れることも多い現代の我々には想像しがたい。

答え:
音楽史の教えによるとバッハは緑内障で死亡する約1年前から完全な盲目になっていた。これはベートーベンが聴覚を失ったほどの悲劇では無かったにせよ、音楽家にとっては致命的な障害だった。死亡の数ヶ月前にイギリス人眼科医テイラーの手術を受けたがそのときの投薬の副作用で体調が悪化し、しばらく生死の境をさまよった状態を続けたあげく死んだと伝えられている。緑内障を自己意思で発病させることは不可能だったとしても、当時の病状では自由意志による尊厳死を(秘かに)選んだとしてもおかしくない状況だったと推測することは出来る。ルネッサンスに続くバロック時代は宗教改革の直後であり、人間の尊厳が高らかに謳歌された時代だった。宗教改革で古い規制が取り払われ、人類史上最大級の天才が何人も出現した時代だった。天才とは人間が完全に自分で有り得る稀有の自己実現現象だった違いない。自由意志による尊厳死の選択は可能だったにちがいない。

バッハ生誕日の数列に秘められた謎:
ここでバッハの生誕日に注目し、そこに秘められた不思議な偶然について語ってみたい。これは私が発見した。友人と手分けして調査してみたが、いまのところ日本語と英語とのGoogle検索ではこのことに言及した記事は一つも見つかっていない。

バッハは1685年3月21日に生誕した。この数値を単純に並べると1685321となる。これは私にはとても覚えやすく忘れることも無い特別な数列である。
バッハは17世紀に生まれた。だから最初の数字は16となる。その次の数列は「85321」である。この数列をご存知だろうか?
金融市場相場変動のテクニカル分析を少し勉強した人ならほとんどの人が知っているはずである。もし逆行ないしは対称という概念さえ知っていれば。

連載第9回「バッハのゴールドベルク変奏曲」 2005年6月21日更新

そう1685321の逆行は1235861であり、この12358はフィボナッチ数列である。神の比率といわれる黄金比率はフィボナッチ数列を比率の概念で言い換えたものである。黄金分割比は、私たち市場関係者のコメントには日常茶飯事として現れる。相場変動を根本的に司るとされる最も基本的な比率。

バッハの生誕日に、この地球上に現れた最も完璧な美の象徴が刻印されているのである。

西洋音楽史上、神に触れることすら出来たに違いないと言われるほどの天才が少なくとも二人いた。バッハとモーツアルトである。バッハは自らの努力と才能と霊感で神の高みにまで上り詰め、それこそ神に指を触れることさえ出来ただろうといわれている。それ無しに、どうしてあのように素晴らしい作品が書けたのか、誰にもうまく説明できないからだ。そしてモーツアルトには神を仰ぎ見る必要すら無かった。たぶん、神の方から降りてきて彼に触ったに違いないからだ。

私の長男がギムナジウムに通い始めた頃だった。私は、4時頃になると近所のトレーディングオフィスから家に舞い戻り、気もそぞろにリビングのソファで本を読んでいるフリをしながら、息子が学校から帰ってくるのを待ち受けるのを日課としていた。

長男は学校から帰ってくると、チラリと父親を一瞥し、学校カバンをポーンとリビングルームに放り投げ、すぐに廊下においてあるピアノに向かった。毎日毎日、ゴールドベルク変奏曲の最初のアリアから始まって、変奏曲の最初の十番くらいまで引き続けるのだ。そしてある箇所まで来ると、ぱたりと演奏が止まる。

彼は独学で誰にも習わずにピアノを習得し、グレン・グールドのカセットと、読解法すら習っていない楽譜を頼りにこの曲を一人でマスターしている最中だった。

しばらくの間、息子はまだ弾けない部分をぽろぽろと練習する。そして、突然、バタンと蓋を閉めて、外に飛び出していく。友達と遊ぶためである。私はしばらく茫然自失のままで過ごしてから、夕闇の迫るトレーディング・オフィスに舞い戻るのだった。そこではプライス・チッカーの瞬きや、モデムのコントロールランプのせわしない点灯までが、突然生き物のように意味を持ち始めたように、まるで星座が輝き語りかけているように、なにもかも変わってしまったように、確かに息づいていた。

そう、ブラームスもバッハの作品に関してこんなことをクララ・シューマンに書き送っている。

「もし私自身が霊感を得ることができてこの曲を作曲したと想像すると、その途方もない興奮と感動で気が狂ってしまったことでしょう。」
(続く) トップ・ページに戻る。

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