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9月の連休を利用して東京に遊びにいきました。今年のお目当ては、去年に引き続きフェルメールの絵でした。その展覧会とは「フェルメール展~光の天才画家とデルフトの巨匠たち~」。前回の展覧会では、「牛乳を注ぐ女」の1点だけだったのですが、今回はなんと史上最多の7点を一気に観ることができました。世界にたった30数点しか帰属していないフェルメールの作品群ですが、その内の約5分の1が一カ所に集結するのは滅多にないことなのです。ですから実物を間近に観ることができてとても興奮しました。何しろ去年は三重四重の行列でしたので、ただでさえ大きくないフェルメールの作品は豆粒のようでした。でも今回は朝早くから東京都美術館に足を運んだこともあって、すべて目の前でじっくり味わうことができました。庶民の生活をスナップ写真のように切り取ったその絵は、まるで時間が止まっているような透明感と生命感に溢れていました。また独自の構図と光の表現は深い謎と物語性も漂わせ、思わず引き込まれました。近年もっとも注目度の高いオランダの画家フェルメール。なぜそういわれているのかを、十分に感じ取ることができる展覧会でした。ということで・・・久しぶりにアップの絵は、恥ずかしながらフェルメール作品の模写です。作品の題名は「真珠の耳飾りの少女」(もしくは「青いターバンの少女」)。今回の展覧会には来なかったのですが、過去2回ほど来日したことがあり、もっとも世界中で親しまれているフェルメール作品の一つです。一応下描きなので、これから色を付けたいと思います。
Oct 8, 2008
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昨日旅から帰ってきました。いやぁ~疲れました。でも充実した芸術色満点の旅でした。一晩休んで、今日からゆっくりレポートです。実は、11月には毎年東京までアート鑑賞旅行をしています。今年は例年になく展覧会が充実していて、展覧会、常設合わせて6つという強行軍なスケジュールで観てきました。まずは東京都美術館の日展から。僕が毎年旅に出るきっかけになったのも、この日本最大級の公募展を観たのがきっかけでした。百号以上の作品がものすごい数展示されている日本画・洋画をはじめ、彫刻や書、工芸美術までが一堂に会しています。とはいっても観賞には丸1日以上かかるんじゃないかと思うくらいで、いつも途中で疲れちゃうんですよね。だから最近は、日本画と洋画しかちゃんと観てません。でもそれだけでも十分な刺激になるし満足できます。企画展や特別展と違って、一般の人から一流の画家までが揃うので、幅が広くて、いろんな世界を観ることができるのが魅力です。東京会場は11月24日で終了。これから主要会場を巡回する予定です。詳細はhttp://www.nitten.or.jp/をどうぞ。同じ東京都美術館で開催されていたのは、大エルミタージュ美術館展です。15世紀から20世紀にかけてのヨーロッパ絵画を俯瞰できる内容でした。中世の宗教画にはじまってピカソの抽象絵画に至るまで、各テーマでまとめあげられた展示は観やすかったと思います。日本初公開となる絵もあって、興味深かったんですけど、僕としては、いい作品はたくさんある半面、どうも浅く広くの印象でした。でも人物画の良品がいくつかあったので、それは収穫でした。詳細はhttp://www.tobikan.jp/をどうぞ。上野公園にはたくさん美術館がありますが、一番有名な美術館は国立西洋美術館でしょう。ここで開催されていたのは、ベルギー王立美術館展でした。ベルギーといえば、ルーベンスやヴァン・ダイクが思い浮かびますが、まさにその人たちの絵が威風堂々と展示されていました。それにブリューゲル親子の楽しい絵や、フランドル絵画の華やかな絵、そして独特な展開をみせたベルギー印象派の絵も観ることができました。僕はなんといってもヴァン・ダイクの思慮深さ漂う肖像画に一番感動しました。ルーベンスのもあったんですけど、見比べると人間の内面を表現する力は、ヴァン・ダイクの方が上だと感じました。生意気ですけど。それからシュール・レアリスムの代表的な画家であるマグリットや、独特の静謐な世界を表現するデルヴォーの作品などがあり、興味をそそられました。特にマグリットの「光の帝国」という絵には圧倒されます。昼と夜が混在する画面には静けさと暖かみがあり、吸い込まれそうな魅力のある、不思議な美しさのある絵でした。全体を通して感じたことは、ベルギーの画家は、人間に真摯に向き合っていたんだな、ということでした。いくつもの展覧会の中でも、一番充実していたのではないかと思います。また国立西洋美術館では、教科書に載ってるような代表的な洋画や、印刷物でよく使われたりする超有名な絵のホンモノにお目にかかれます。僕は何回くらいこの常設展を観たか覚えていませんが、ロダンやモネ、ルノアールの作品の、いつも変わらない美しさに会えたり、新しい発見や、今まで気付いていなかった作家を再認識するなど、いつ来ても気持ちよく鑑賞が出来るすばらしい美術館だと思います。ちなみに、僕が大好きな少女の絵もまだしっかり展示されていて、いつになっても変わらない永遠の美少女に、再び会える悦びを感じた次第です。詳細はhttp://www.nmwa.go.jp/index-j.htmlをどうぞ。上野公園でもっとも賑わっていた展覧会は、ダリ回顧展でした。何しろ人が多くって、平日の朝一番にもかかわらず300人以上の人が列を作っていました。ダリの絵は、日本人にとってどんな意味を持っているのかよくわかりませんが、シュール・レアリスムという言葉を知らなくても、あの独特な世界を知らない人はいないくらい、あまりにも有名で、奇怪な画家であることには違いありません。珍しいもの観たさという心理も働いているでしょうが、非日常を経験したい願望も少なからずあるから、ダリを観に来るんじゃないのかなぁ・・・なんて思いました。実は僕もそんな気分だったもので。といっても会場は人・ヒト・ひと!ゆっくり眺めることが出来ないくらいの熱気でした。ダリの絵は、小さい画面にしては緻密で、情報量が多い作品が多いんですが、その不思議さに魅入ってしまう人が多くって、黒山の人だかりがたくさん出来てました。特に意味の二重性を追求している絵は作品としてすばらしいし、謎解きの楽しさもあって、ついつい時間をかけてじっくり観てしまいます。常に実験的な絵を描き続けたダリでしたが、なんといっても本人の顔や奇行が一番のインパクト。この展覧会の看板が彼のアップの顔というのが、それをよく表現しています。過去にいろんなダリを観てきましたが、今回の展覧会では今までにない若い頃の作品や、ドローイングの展示、映画「アンダルシアの犬」の上映など多彩で、総合的なダリの芸術に触れることが出来る貴重な展覧会だったと思います。詳細はhttp://www.ueno-mori.org/special/dali/index.htmlをどうぞ。最後は渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中の、スーパーエッシャー展です。オランダの版画家である彼の作品は、実に奇妙で不可解なものですけど、観れば観るほど頭がねじれるような不思議が、いっぱい詰まっています。彼の作品は、たぶんいろんなところで観ることがあると思いますが、図と地が反転する、あるいは図も地もそれぞれの意味を持って、隙間なく平面を埋め尽くしていく世界は、何故か不完全な完全性というか、パラドキシカルな快感を観る者に与えてくれます。表現するのが難しいんですけど、絵を観た時は何がどうなっているのかわからないものが、観続けるとだんだんわかってくる。でもその瞬間に実感がすり抜けてまた不思議に観えてしまう。そんな心地よいもどかしさというか、快感のようなものが彼の絵にはあります。きっとそんな不思議な快感が、彼を創作に突き動かしたのではないでしょうか。シュール・レアリスムではない、計算しつくされた究極の緻密さを不思議に置き換えた、エッシャーのそんな世界に触れることが出来たのは、貴重な体験だったと思います。詳しくはhttp://www.bunkamura.co.jp/shokai/museum/index.htmlをどうぞ。というわけで、最後は上野公園です。この3日間でいったい何枚の絵を観たのかよくわかりませんが、これだけの情報は、はっきりいって一度には処理できませんね。でもその時に感じたものは、これからの僕の創作の基礎的な部分になっていくと信じています。”いい絵を描こうと思ったら、まずはすばらしい絵を、それもホンモノを間近で観なさい”何かの本でそんな言葉をみつけ、それからなるべくたくさんの絵を観ることにしています。これからもそんなことをずっと続けると思います。とりあえず今回はここまでということで。
Nov 26, 2006
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先日のブログで、高鍋町美術館を紹介しましたが、僕が初めてこの美術館を訪れるきっかけになったのが、児島虎次郎の回顧展でした。ここで児島の画業のすばらしさを知ることができました。2000年5月、高鍋町美術館で児島虎次郎展が開かれました。没後70年を記念した展覧会で、姉妹関係にある大原美術館などの協力で、地方の町立美術館としては異例の規模でした。児島の学童時代の作品から、画壇に登場するきっかけとなった代表作、ヨーロッパ留学中の瑞々しい作品群、帰国後の作品群、そして余技として楽しんでいた日本画や水彩画、陶芸作品などの数々が展示され、児島の画業がバランスよく網羅された有意義な展覧会でした(左の写真はプログラム)。児島は、彼を画壇に引き上げたパトロンである大原孫三郎の命を受けて、日本で初めて西洋絵画を紹介した大原美術館の設立のために、ヨーロッパの名立たる画家達の作品の買い付けに奔走し、大きな貢献を果たしました。当時のヨーロッパは印象派が全盛の時代で、モネを筆頭にルノワールやマネなど数多くの名作を、限られた予算をやりくりしながら買い付けました。モネなどは「睡蓮」の連作に没頭していた時期で、児島はアトリエにあしげく通いつめて、頑固に渋るモネを懐柔したという逸話があります。また有名なエル・グレコのマスターピースである「受胎告知」を、全く評価されていなかった当時にその先見の明で買い付けました。この作品は、現在では大原美術館所蔵品のもっとも代表的なものの1つとなっています。児島の美術に関する優れた審美眼を養ったのは、ヨーロッパ留学であったといわれています。ベルギー印象派に師事した児島は、乾いたスポンジのようにその理論と技術を吸収し、彼独自の美しい作品を生み出しています。僕が特に惹き付けられた作品は「和服を着たベルギーの少女」(左の作品)でした。恐らくヨーロッパ渡航時にもっていったものだろうと思われる花柄の振袖を着た地元の少女を、きらびやかな色彩と複数のタッチを組み合わせて描いています。まだ幼い少女ときれいな振袖のコントラストがこの作品のアクセントになっていて、観るなり眼が留まってしまいます。この作品を、僕は後に本家の大原美術館の本館入口で再び眼にしました。歴史ある建物に鎮座するその姿には、日本の西洋美術黎明期の情熱と、大原や児島の絵に対する想いが伝わってきます。児島は美術品買い付けにたびたびヨーロッパを訪れましたが、その合間に日本画や水彩画を手がけました。絵がうまい人は何をやってもすばらしいもので、ほとんど本業といっていいくらいの大作や、力が抜けていい味を出している作品が数々残っています。特に日本画は、技巧にこだわらず軽妙でカラフルな作品が多い印象でした。またスケッチとして描いた水彩画は、構図や色彩が冴え、彼の優れたテクニックを垣間見ることができます。児島の作品の多くは、岡山県倉敷市の大原美術館や、成羽町美術館に所蔵されています。特に大原美術館では、児島が買い付けた作品をはじめ、多くの著名な画家の作品群、日本の美術品、現代美術の作品群など、広い範囲で膨大な所蔵品があり、1日かけてゆっくり観て回ることができます。倉敷の美観地区に行った折には、ぜひ入館することをお勧めします。その時には児島が集めた名品と、彼が残した作品をゆっくりご覧ください。
Feb 21, 2006
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高鍋町美術館は、宮崎県の高鍋町というところにあって、自治体が経営する高鍋町民のための美術館です。高鍋町は住民の文化的意識が高いせいか、美術や工芸に造形が高い人が多いらしく、所蔵品の多くは町民からの寄贈です。また高鍋町にゆかりの深い偉人として記憶されている石井十次の石碑なども置かれ、十次の長女と結婚した児島虎次郎との縁から、日本で初めて西洋美術を本格的に紹介した大原美術館とも深いつながりを持っています。美術館は町の中心にある舞鶴公園の近くにあり、外観は武家屋敷をモチーフにした白壁と瓦葺の端正な日本家屋風に作られています。展示室は大きく4室に分かれていて、一般・企画展示室と、常設展示室の構成になっています。美術館の周辺は庭園が広がり、その周囲を運河風の川が流れています。静かな雰囲気で、開かれた美術館の印象を受けます。僕が遊びにいった時には、高鍋町美術展覧会が催されていました。これはアンデパンダン形式(無審査性)で、多くの美術愛好家に開かれた展覧会ということでしたが、絵画や写真、書など、レベルの高い作品が並んでいました。常設展示は、冨岡鉄斎の日本画や写楽の浮世絵、ミロのリトグラフなど、バラエティーに富み充実した内容です。また児島虎次郎の代表的作品も観ることができ、小さいながら満足のいく美術鑑賞ができると思います。宮崎市内から30~40分で行けるという手頃さもあって、ドライブがてらによってみるのもいいんじゃないかと思います。宮崎にお寄りの際はぜひ、足を運んでみてください。
Feb 15, 2006
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昨日のブログで理想的な和服美人画家として紹介した上村松園さん。皆さんご存知ですか?「バカにするな!」とお叱りを受けそうですが、あまり知らない(僕も最近までそうでした)人のために、ちょっと紹介します。上村松園さんは明治8年生まれの日本画家で、女性として初めて文化勲章を受けた人です。美人画、というより市井の女性のありのままの姿を、美しい日本画として結実させました。松園さんはほとんどの作品で女性を描きましたが、ただ女性の美しさだけを表現したのではないと手記でいっています。”一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである。”つまり、観る者に邪念を起こさせない、そして邪心を持つ者の心を、清く感化する絵こそ自分の願うところのものだといいました。彼女が表現する女性の姿は、まさに気品と優雅さ、そして清らかさが同居して、観る者の心を魅了し、そしてさわやかな感動を起こさせます。無駄のない線と色の美しさ、巧みな構図、そしてドラマティックなモチーフ。日本画は敷居が高いと思っている人でも、松園さんの作品世界には素直に引き込まれるはずです。そんな松園さんの作品を観ることができるのが山種美術館。東京半蔵門側の千鳥ヶ淵緑道沿いにある小さな美術館です。ここには代表作である「砧」や「牡丹雪」が所蔵されています。初めて僕がここを訪れたのは「牡丹雪」を観るためでしたが、最晩年の作品「庭の雪」(下のパンフの絵)に強く惹かれました。若い頃の作品は、まだ艶やかさが強い印象でしたが、晩年に向かうにつれ、徐々に純化が進み、最晩年で、松園さんが目指した珠玉の絵に到達した感があります。その他の作品もすばらしいものがたくさんあるので、美人画、日本画に興味がある方にはぜひお勧めです。最後に山種美術館のホームページを紹介しておきます。主要な作品が参考としてみることができますので、覗いてみてくださいね。URL:http://www.yamatane-museum.or.jp/
Feb 8, 2006
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先日のブログの続きです。上の写真は宮崎県立美術館裏の看板。”知られざるルノアールの物語”という副題が付けられたこの絵画展ですが、中学生の頃からルノアールと印象派が大好きな僕は、今まで知らなかった作品に出会えるという期待でいっぱい。いざ覗いてみると・・・印象派の前身であるバルビゾン派に始まる作品群は、素描が多かったです。特にドガの素描は、縦のハッチが特徴なんだという発見がありました。またお目当てのルノアールは、晩年の丸いフォルムで赤が基調の女性像や、1号くらいの小さな作品など、スタンダードなものから珍しいものまで、確かに”知られざる”ものが多かったと思います。それからルノアールが初めて描いた裸婦像は、モノクロに近いものであったという興味深い作品もあります。後期印象派では、ゼザンヌやゴッホ、ゴーギャンなどが顔を揃え、マティスやピカソもありました。またロートレックの古典的手法の肖像画やローランサンの絵は、美しさが際立っていてみどころだと思います。それから思ってもみなかった収穫はユトリロの風景画でした。不思議な雰囲気の路地をよく描いた彼の絵は、独特のマチエールと色彩が魅力的でした。この他にも「考える人」のロダンが描いた見事な素描や、モネの代表作「ルーアン大聖堂」なども展示してあり、絵画好きな人にはなかなか充実した内容だと思います。興味がある方は是非、足を運んでみてくださいね。
Jan 27, 2006
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